SS12-10、盾の勇者=教祖~世界の帰還、そして拷問~
「我が主、ただいま戻りました」
「あらっ、おかえり。それで、どうだった?」
重体に近い《世界》を担ぎ、魔神教会総本山へ帰還した《愚者》は、教祖であるカノンの前に片膝をついた。
「無事に魔神様の左手を入手してございます」
ゴトンと目の前にガラスケースに入った【魔神の左手】が置かれた。
見てるだけで萎縮してしまう様な雰囲気を醸し出している。
「ふむ、ご苦労であったわ。宝物庫の奥へ保管してちょうだい」
「はっ!おい、これを運んでおけ」
「了解致しました」
《愚者》の命令で《運命の輪》は、【魔神の左手】を運ぶ。
「それで、《世界》はどうした?」
「こちらに」
ドサッと無造作に床へ転がした。
「ぐへっ…………ここは?」
キョロキョロと気が付いたのか?まだダメージが残ってる身体を起こし、ここが魔神教会総本山と気付くのは時間掛からなかった。そして、カノンの御前だと言う事にいち早く察知し、頭を垂れた。
「わ、我が主!」
「楽にしてちょうだい。本当なら動けない状態でしょう?」
「いえ、我が主のためなら、この身体が砕けようとも動く所存です」
「私のために働きたいのなら砕けたら困るわ」
カノンが玉座から降り、カツンカツンと《世界》の目の前まで来ると同じ目線までしゃがみ込み、頭を撫でた。
「あっ…………嬉しくござます」
カノンは鞭と飴を使い分ける。今が飴の1つ、この後に鞭が待ち受けているとは本人しか知らない。
「さぁ痛いだろうけど、我慢して立ってちょうだい。回復させるわ」
ヨロヨロと立つだけでも痛いのだろう。《愚者》に肩を借りながら、ようやく自立してる状態だ。
「いくわよ。【反射鏡Ⅰ】」
右掌を《世界》の腹へ押し付けた。そうすると、背中側からプクーッと黒めいた赤いシャボン玉らしき物体が排出された。
およそ、長径5mあると思われ、ふよふよと浮かんで不気味だ。
「これはカズちゃんに受けた全てのダメージよ。どう?身体、楽になったでしょ?」
「はい、あんなに辛かったのがウソのように」
初めて見た。神官も顔真っ青な回復技術だ。感覚的に部位欠損しててもいけそうな感じがする。
「これは回収するわね。【鏡世界】に一時的保存しとくわ」
カノンの盾に黒めいた赤いシャボン玉は吸い込まれていった。カノン曰く、この排出されたダメージのシャボン玉は誰かが代わりに受けない限り消えないらしい。
「ふぅ、これで十二分にあなたを拷問出来るわね」
ニコニコと笑顔とは逆の事を言う。
「えっ?わ、我が主?」
突然の拷問という宣告に困惑する《世界》
「私の弟と戦ったわよね?まだ、それなら良かった。だけど、殺す気だったでしょ?」
「め、滅相もありません」
「ウソはいけないわ。私が渡したアルカナには感情の起伏も見て取れるの。【無敵世界】を出したのが、その証拠」
ギクッ
【無敵世界】は絶対に相手を殺す時にのみ使うとカノンと約束していた。
まぁカズトには看破されてしまったが、それだけ強力な奥の手であった訳だ。
「クスッ、その奥の手を出して負けた訳でありますな」
「あ、あれは負けてない」
「いえ、負けでございます。弟君は、きちんと分析をし、後の1歩で死んでいたのは、どちらですかな?」
分析もそうだが、勇者であるカズトが合成魔法を放ったのは、カノンと《愚者》も想定外であった。
だが、聖剣の能力の1つを暴けたのは大きい。それだけは功績と称えても良いだろう。
「カズちゃんの方が1枚上手だったから良かったものの、もしかしたら殺していたところじゃない」
ドカン
「グハッ」
「だからね、私は怒ってるのよ。カズちゃんを絶望させるのは私だけ。痛め付けのは良いけど殺したらダーメ」
カノンの腹パンに《世界》は、お腹を押さえながら跪く。
「こいつを牢屋に入れて置きなさい。大丈夫よ、アルカナはOFFにして置いたから技術は使えないわ」
「わ、我が主ぃぃぃぃお許しをぉぉぉぉ」
魔神教会総本山を管理・幹部の世話をするために連れて来てる数名の選ばれた信仰者に《世界》連れて行かれる中で、ずっと叫び続けていた。




