270食目、肉祭りIN神樹の森フリーヘイム
「ここは?」
俺が気が付いたのはベッドの上であった。確か、《世界》と《愚者》が撤退した後、援軍が来たのか?大勢の足音を聞いたところで記憶がない。
ガチャ
「あっ、兄さん」
「リンカ!」
扉を開けて入って来たのは妹であるリンカであった。俺の起きてる姿を見るや駆けて来て、ダイビングハグをして来た。
「ぐぇ、リンカ!ちょっと、力が強い」
「兄さん兄さん兄さん兄さん、起きないと思ってリンカは」
今は我慢しよう。まだ再会してから、そんなに経っていない内に倒れ込んだんだ。2人だけの家族、2人だけの兄妹なんだ。
だけど、ギシギシと身体が悲鳴を挙げている。ヤバい、我慢しようとしたけど耐久力が無かったみたいだ。
「バタンキュー」
「に、兄さん」
リンカのハグで気絶してから十数分、他のメンバーも次々へと現れた。
「に、兄さんごめん。リンカ感激で………:そのぉ」
「構わないよ。リンカならいくら甘えてくれても」
俺の言葉に、ニパァと瞬時にシュンとした顔から満面な笑みへと変貌を遂げる。
「カズトさん、リンカを甘やかせないで下さい。急に走り出して、『兄さん兄さん』と泣き散らしていたのですから」
「ココア!それは言わない約束」
赤く頬を染めるリンカも可愛い。
「それで、俺はどの位寝ていたんだ?」
「凡そ3時間ほどです」
「そうか」
魔力の使い過ぎだろうか?気怠い感覚は残っているが、特段ケガをしてる様子はない。
「あのぉ、起き上がりで恐縮ですが、今直ぐに来て頂けせんか?」
「そうそう、大変なの忘れてた」
数分で着替え、2人に着いていく形でとある部屋に通された。そこに入るやいなや、この世とは思えない程に腹の虫が鳴っていた。
「死んでしまうぅ。何か食わせてくれぇ」
「これは、どういう事だ?」
「メグミのシリーズ系である七つの大罪の代償ですわ」
「確か、暴食だっけ?使う程に腹が減って飢餓に陥るんだよね」
シリーズ系は少なくとも必ず代償は存在する。その中でも七つの大罪は、その代償が顕著に表れる。
強欲なら使用した時間に比例してステータスの弱体化、怠惰なら眠り続け、嫉妬なら魔物や種族(勇者以外)の敵意を強制的に受け続け、色欲なら異性の身体に成り続け、暴食なら腹が減り続け、傲慢なら不運に成り続け、憤怒なら鬱状態に成り続ける。
それは大変だ。何か作ってやろう。
「何が良い?」
「にくぅぅぅぅ………肉が食いてぇぇぇぇぇ」
「了解」
アイテムボックスに何かあったかな?この中では、時間経過がないから数年前に放り込んだ食べ物でも余裕で食えたりする。
厨房を借りて、先ずはロックバードの唐揚げにしよう。ロックバードは羽や外皮が岩のように硬いが、肝心の肉質は柔らかく高級食品の1つとして数えられる。
そんな肉を大胆に一口大にカットし特別にブレンドひた調味料に漬け込み衣を付けて油で揚げていく。油も良質なラードを使っていく。
肉を揚げるには、やはり同じ動物由来のものを使った方が良く合う。
「揚がったよ」
山盛りに盛られた唐揚げの匂いに釣られ、メグミは飛び起き電光石火の勢いで平らげていく。それでもメグミの腹の虫は止む事を知らない。
「ロックバードが終わってしまった」
1羽丸ごと入っていたと思うが、あれを1人で平らげるとは信じられない。それでも腹の大合唱は止んでない。
「次はこれか」
ブラックモーモー、日本原産の黒毛和牛に近い。これを料理の聖剣エックスで一気に解体。分厚くカットし、サーロインステーキとして焼いて行く。
1枚ずつじゃ間に合うはずもなく、コンロをフル活動させ数十枚を一気に焼いていく。
タレは、【異世界通販】で市販のものを買う。ニンニクが効いたガーリック風味に、大根おろしを加えてある和風醤油味、醤油なら次は味噌ダレもアリだろう。
タレじゃなく、シンプルイズベストとして塩だけというのもオツだ。それも岩塩を砕いて振り掛ける。俺自身も食べたいが、全てはメグミの腹の中に納まる運命だ。
「2頭丸ごと使った訳だが、それを全部か」
ロックバードを加えて3匹、それを見事に平らげた。何処にこんな量が入ったのか不思議だ。
「ふぅ、食った食った」
自分のお腹を中年オヤジみたく叩く。近くにいるリンカとココアは呆れ顔で、メグミを見ていた。




