269食目、愚者が助けに来た
「これで残り10機か」
《世界》を見ると、もう腹に空いた穴は世界の効力により塞がれ、何も無かった風に再び動き出した。
「良くもやってくれたわね」
ギロリと、鋭い視線でこちらを睨む。だけど、そこにいると危ないよ?
「えっ?ぎにゃぁぁぁぁ」
まだカズトの魔法は発動したままで雷と竜巻が渦巻いており、雷の刃でまた貫かれ、風の刃で切り裂かれた。
「これで残り9機、案外呆気ないものだ」
正に天変地異、人1人が扱える力を軽く凌駕している。カズトが発動しただけに本人には来ないが、これを外で使っていたらどうなっていただろう?
もう既に制御は外れており、1回制御しようとしたがうんともすんとも言わない。
そもそも魔力制御をした事のない。【嵐斬弾】は、【風龍王の加護】があったから出来た荒業だ。
今までは、聖剣エックスキャリバーを扱えば、それに合わせて何故か扱えてた。そうでなければ、剣を振るうだけで属性系を使う事は夢のまた夢だっただろう。
「もう残り5機か」
復活しては、また俺の放ったままにしてる嵐魔法に殺られる始末。俺は、ただ見てるだけ。
「残り2機」
もう後は少ない。ここまで来ると、蓋を開ければツマラナイ戦いであったと感じてしまう。
「残り1機」
もう後はない。最後の復活を終えて、何度見たことか?雷と風の刃が、《世界》の身体を切り裂こうとした瞬間、俺も予定外な事が起こった。
《世界》以外の人影が突然と現れ助けたのだ。それに嵐魔法を消し去った。
「誰だ?!」
油断をしてた事は認めよう。だが、この中は《世界》が作った世界の中だ。出入りするなら作った本人の許可がいるはずだ。
「【魔法無効】どうにか間に合ったか。《世界》が、ここまでヤラれるとは想像もしてなかった」
「ぐっ…………何故お前がここにいる?!《愚者》」
「お前って命の恩人に酷い言い草ですね」
《愚者》だと!確か、リンカら3人が相対したという魔神教会幹部の1人。
「そちらは剣の勇者とお見受け致します。儂は、魔神教会No0《愚者》で御座います。お見知り置きを」
「剣の勇者のカズトだ」
「ふむふむ、なるほど。カノン様と何処か雰囲気や面影がありますね。流石は弟君という訳ですな」
あんなクソ姉と似ていると思われハラワタが煮え繰り返る思いだ。
「ふむ、何やら殺気が飛んで来る様子。何か不快感を与えてしまったようで」
「あぁ、あのクズ姉と似ていると言われて上機嫌になるヤツがいるか」
「妹君もそうでしたが、相当カノン様を嫌っているようで残念です」
リンカの事か。リンカもクズ姉に懐いていた分、裏切られた反動は凄かろう。
もし、クズ姉に出会ったなら即殺しに掛かる事が容易に想像出来る。
「それで戦うのか?」
「いいえ、止めて起きましょう。儂は、ただ《世界》を迎えに来ただけなのでな。それに、もう儂らの目的は完了しておる」
「逃がすと思っておるのか?」
ここで逃がしたら、今度いつ魔神教会の手掛かりを掴めるのか分からない。
「こちらからも聞きましょう。その状態で、儂らを捕まえられるとお思いで?」
「ぐっ…………」
カズトから冷や汗がタラりと垂れ、両手のキャンサーを落とし膝から崩れる。
「無理はしない事です。他人のステータスや技術を剥ぎ取り自分へと付与する能力。さぞ強力でしょうが、その負担は想像以上に酷なはず……………違いますかな?」
チッ…………合っている。もうキャンサーを維持出来る程の体力は残ってない。意識を保っているだけで精一杯だ。
「今なら倒せるかもしれないぞ」
「それは止めて置きます。あなたを倒すのは、カノン様と決まっておりますゆえ。なので、他の方には殺られないようお願い致します」
望むところだ。俺だって、クズ姉を殺したい程に憎んでいる。クズ姉を倒すまでは死ぬ訳にはいかない。
「では、失礼致します」
丁寧にお辞儀をすると、《愚者》は消えた。それと同時に世界は消滅し、あの神殿へ戻る事が出来た。
「ハァハァ……………チクショ」
もう少しだったのに、また奪われてしまった。あそこで邪魔が無ければ、《世界》を倒せていた。
カズトが自責の念を抱いていると、入口から大勢の足音が聞こえてきた。




