SS13-4、魔術師と杖〜樹界マトリョーシカがある場所〜
「捕まっていたが、まさか」
「あぁそうだ。彼女もまた我々と同じ幹部だ。見せてみろ」
「はい、《魔術師》様」
瑠璃が右手の甲を見せ、そこには《女帝》の紋様が浮かび上がっていた。ケンゴの右手には《塔》、僕の右手には《魔術師》の紋様が浮かび上がってる。
「何か性格というより人格が変わってないか?」
「ふぅっ、僕が変えた。いくら適正があっても抵抗するの目に見えてるからな。それに今では、僕の恋人だ」
だから、見せつけた。腰に手を回して密着してみせた。瑠璃は抵抗せず僕に身を任せている。
「お前ら、ここが何処だか理解してるのか?」
あっ、忘れてた。ここは玉座の間であり、教祖カノンとその右手である《世界》と《愚者》が睨みつけている。
「イチャイチャするなら外でするが良い。ここでするなら殺すけど?」
「いえ、申し訳ありません」
「お前もだ。いくら知った顔でも私を差し置いて話し続けるなんて良い度胸よね?」
「そ、そんなに怒らなくても」
「……………」
「すみませんでした」
見事なスライディング土下座。僕でもここまでの土下座は出来ない。
「ふぅー、次の任務をあげるから。それで許してあげる」
ニコと笑ってるが笑ってない。
「《塔》には、獣人国家アルカイナに行ってもらう。《魔術師》と《女帝》の2人にはここだ」
教祖カノンから受け取った任務書によると、場所は樹界マトリョーシカ…………樹精族が支配する国だ。
確か国の入り口が毎回変わるとかで一番出入りの難易度が高い。ここには魔神の左足が封印されているとう。それを盗み出すか、諜報活動で情報を集める事。
「マトリョーシカって、どうやって入るかが問題か」
「私も行った事ないわ。突然と現れ、突然と消える不思議な国だそうよ」
そんな国に、どうやって行けと文句が漏れそうな任務だが、僕は《魔術師》の前に本の勇者。場所の探知なんてお手の物。
「早速やってみるか。【世界地図】むむっ」
「へぇー、便利なものだな」
「でも、これは表示されてないなくない?」
検索にはヒットしたが、地上の何処にも記されていない。まさか、誤作動なのか?
「いや、これは違う。僕の【世界地図】は地上にある物を探知する技術。だが、探してる物が遥か頭上にあるなら話は別だ。樹界マトリョーシカは、月にある」
僕の発言に、ここにいる全員が驚愕の表情をする。まさか誰も到達した事のないとされる月に国があるとは誰も思わないだろう。
「だが、しかしどうやって行くのだ?」
「飛行魔法でもそんなに高く飛べまい」
他には【転移】という考えもあるが、1度行った事のある場所でないと発動しないという欠点がある。
「僕も分からないが調べる方法はある。【検索機能】で調べれば出るはずだ」
「まるで、そこだけ地球に戻った気分だわ」
それ分かる。僕もこの技術を使うと、地球にいた頃を思い出す。
「えーっと、樹界マトリョーシカに行くには…………っと…………よし、検索結果がでたぞ」
【検索機能】によれば、転移妖精という種族がいて、【転移】により樹界マトリョーシカに連れて行ってくれるという。
「転移妖精か。なんとも厄介な」
「《愚者》知ってるの?」
「妖精族の一種だな。神出鬼没で、戦闘能力は高くないのだが、【転移】に特化しておってな。襲い掛かって来た奴らを何処かに飛ばしてしまうなだそうな」
それは厄介だ。生きてる転移罠みたいな種族だ。
「たまに発生する神隠しは、そやつらが原因とされておる」
「それじゃぁ、運任せになっちゃうじゃない」
「いや、ちょっと待って。【検索機能】に続きが載ってる。どうやら、樹界マトリョーシカ専用の転移妖精がいるみたいだ」
その転移妖精がいる場所も載ってる。よし、これで行ける。早速、近いところから回ってみるか。




