224食目、双子を解除
「ハァハァ、たく手間を取らせやがって」
「グギギギッ…………動けない」
強力な磁気で地面と貼り付いているのだ。そう簡単には引き剥がせない。引き剥がせて自由に動けたら、それはそれで化け物だ。
「さて、ルリ姉と魔神の左手を渡して貰おうか?」
「キャハハハ、そっちこそ…………これで終わりと思ったら大間違い」
「なに?」
くノ一女が貼り付いて地面から真っ黒い靄みたいな…………はっ!影か。影の中に逃げ込む気か!
「させるか」
「遅いわよ。【影の隠れ家】」
空振った。
ボロボロでなければ、追い付いていたかもしれない。いや、それは結果論だ。影の中に逃げ込まれれば、こちらに追い掛ける手段はない。
だが、まだ磁気が消えた訳ではない。次に出て来た時は完璧に捕まえる。
「ここよ」
「なっ!しまった」
俺の影から腕と顔だけ出し、足首を捕まれ一気に影の中へと引き摺り込まれた。警戒してたはずなのにやられた。
「ここは?」
気が付いた時には既に周囲は真っ暗で、およそ1m先くらいしか見えない。それに、フワフワと浮いており方向感覚が狂うというか分からない。
「確か、影の中に引き摺り込まれたような」
「その通り、ここはアタシの影の中。アタシが許可しない限り出る事は出来ない」
「何処だ!」
クソッ、四方八方から声が聞こえてきて居場所がハッキリと分かりしない。
「ここで暫く大人しくして貰う」
これは世界みたいだ。俺も世界を所持してるから分かる。世界からの脱出方法の1つである相手の許可が取れないとなると、本来なら残りの方法は破壊するしかない。
だが、それは現実的ではない。勇者でもおいそれと世界を破壊出来るものではない。
「と、なると…………もう1つの方法か」
同じ世界持ちなら出来る裏技的な方法がある。それは、相手の世界を自分の世界で描き替えれば良い。
「だけどなぁ。それをやるとなると…………」
それぞれの勇者が持つとされるシリーズ系の技術。カズトが世界を発現させるには、シリーズ系しかない。
だが、それをやると店に残してるもう一人の自分が消える。でも、今は迷ってる暇はない。
「ふぅーっ、あれをやるか」
(何をやる気?)
もう覚悟を決めたカズトは、双児宮の聖剣ジェミニの技術を解除する。
解除した同時刻。レストラン”カズト“では、カズトが消えた事に一時的に大騒ぎになっていた。
「カズトが消えたのでだ。何で冷静にいられる?」
「シシノスケ落ち着いて。あっちで何かあったから、技術を解除しただけ」
むしろ、休憩中でスタッフルーム内で消えたから、まだお客様はカズトが消えた事には気付いてない。
料理の最中に消えたなら、もっと大惨事になっていたに違いない。スタッフルーム内で幸いした。
ただ、向こうにいるカズト達に何かがあったのは間違いない。だけど、本気を出したカズトが解決出来ない事は何もないと信頼してる。
だから、心配するだけ無駄というもの。むしろ、カズトが帰って来るまで店を切り盛りする方を優先すべきだ。
「シシノスケ、ドロシーとユニを呼んで来る。ただ、ルーシーとリリーシアには内緒」
「わ、分かった」
急にカズトが消えたと、まだ子供の2人に知れれば動揺が隠せずお客様にも伝染する。だから、ルーシーとリリーシアには内緒にしとく。
それだけは防ぐべき案件。そして、まだ問題は残っている。カズトが帰ってくる間、どうやってカズトをいるように見せるという事。
「呼んで来た」
「ミミ、何の用なの?」
「ミミが私を呼ぶなんて珍しいな」
「緊急事態。あっちのカズトに何かあったみたい。店にいたカズトの分身が消えた」
「「えっ?!」」
予想以上に2人の顔面が蒼白となり、武器や防具を手に取り今直ぐに、ここから飛び出そうとした。だが、ミミはそれを許すはすがない。
「ちょっと!ミミ、この部屋から出しなさいよ」
「そうだぞ!カズト殿の危機かもしれないのだぞ」
「カズトなら大丈夫。本来の力を開放したカズトが負ける様子、想像出来る?」
カズトが、シリーズ系の技術を使い出したら無双する未来しか、ミミは想像出来ない。
「カズト殿は、そんなに凄いのか?」
「凄いよ?」
獅子之助は、1回しか手合わせをした事がない。あの時よりも凄いのか?
「カズトは、属性系なら兎も角、シリーズ系では今まで本気を出した事がない」
ミミは、そう宣言した。




