219食目、杖が捕まった
「今止めないと、取り返しがつかないような気がする」
「パイセンやるっすか」
「俺なら何時でも良いぜ」
「魔神が何かは分かんねぇが、カズトの慌てようはやばそうだ」
みんなが協力してくれるなら必ず100%で止めて見せる。今直ぐに魔神教会の下へ駆けて行こうかとした瞬間、くノ一女から待ったの声が掛かった。
『おっとぉ、来ない方が良いですよ。ワタシの後ろがみえないんですか?』
「うん?」
くノ一女の背後に何か…………いや、誰かがいる。
「ルリ姉っ?!」
手首足首に鎖が繋がれ拘束されてるルリ姉がいた。杖の勇者であるルリ姉が難なく捕まってしまうとは考え辛い。
「おいお前、くノ一女。どんな卑怯な手を使った」
『くノ一女ってワタシの事ですか?ワタシの事は《隠者》とお呼びを。杖の勇者は弱かった。あそこに並ぶ王族どもに危害を与えられないよう、自分を犠牲にしたのよ?自分が人質になるってね』
なんともルリ姉らしい動きだ。そんなルリ姉を誇りに思うし尊敬する。
「何処が弱いんだ?強いじゃないか」
『自分が捕まったて死んだら意味ないでしょ?』
いくら国王が人質になっても普通なら自分の命の方が大切だ。いざ他人の事で、咄嗟に動ける者は、どのくらいいるだろうか。
杖の勇者であるルリ姉こと皇瑠璃は、自分の事よりも相手に対して考えるよりも体が動いてしまう性質なのだ。
だから、強いと俺は言っている。そんなルリ姉に何度も数え切れない位助けて貰っている。俺だけじゃない、面識がない鎖の勇者であるサンドラ意外はルリ姉に助けて貰った経験がある。
『カズちゃん…………逃げて』
ルリ姉が気が付いたらしく、俺を見詰めながら弱々しく自分を助けてではなく、俺に逃げろという。そんなルリ姉を弱いというヤツは俺が許さない。
「ルリさんをあんな目に」
「許せねぇよな。許せねぇよ」
「ルリちゃん、今助けるから」
「瑠璃パイセンをイジるのはアタシだけですよ」
「お前が言うと洒落にならないからな」
「何だか分かりませんが、手助け致します」
今日という日に感謝するしかない。こう勇者が協力し1つの敵を滅する事は滅多な事では起こり得ない。宝くじで一等を当てる程にあり得ない。
「ケルちゃんに乗って。一気にあそこまで飛ぶ」
『ギャル』
ケルちゃんもヤル気だ。俺達は、ケルちゃんの背に乗り駆け抜ける。
『おい、何を焚き付けておるのだ。あんなに勇者が来てしまったではないか』
『あっわわわわ、どうしよう』
『ムッフフフフフ、これはヤバいねぇ。僕は疲れたから戦わないよ』
『俺も魔物尽きたし、あの不死の2人もリタイアしてるしで、散々だ』
ギクッ
《死神》にトドメを差したのは自分だとは言えない《隠者》。《死神》の本体であるお面を回収出来ないよりは良い。
あの時は、あれが最適解だと内心で何度も叫んでいないと、この状況はやってられない。
ワタシだって、もうクタクタで戦いたくない。だが、ここにいる全員を魔神教会本部まで届けるとなると、まだ魔力を貯めないと出来ない。
『ここが踏ん張り所よ。ワタシを守りなさい。そうしないと、あんた達が困るだけよ』
『ムッフフフフフ、仕方ないですねぇ』
『俺に指図するとは、良い度胸だな』
『姉さんはクルミが守る』
《隠者》を守るよう3人が前へ出た。何故なら、《隠者》無しでは帰れないからである。《隠者》が殺られば、結果的に詰む。
その一方、カズト達は空を飛んで、ちょうど魔神教会の頭上へと来ていた。
「ケルちゃん、お前空飛べたんだな」
『ギャル』
「当たり前だろと言ってる」
大気を蹴るように走り空中を移動してる。ケルちゃんにも戦って貰った方が良いと考えたが、王様らが近過ぎる。
「よし、お前ら行くぞ」
「やっぱり飛び降りるのか?」
「男なのに怖いの?震えてるし」
「怖くないわい。これは、ただの武者震いだ」
「では、お先に」
サンドラが先に飛び降りた。空中に鎖を張り巡らせ、まるで中国雑技団みたいに次から次へと掴んでいく身の熟しである。
「それじゃぁ、俺も行くから続けよ」
「ちょっ、カズト?!」
スカイダイビングみたく飛び出し、どんどんと加速していく。これくらい怖いと思っては勇者なんて務まらない。




