218食目、魔神教会から世界へ宣戦布告
ケルちゃんで王様らがいるはずのコロシアムへ向かってる最中、突然に何処からか声が響き渡る。
『テステス、えぇ聞こえてるかしら?』
ケルちゃんが足を止め、キョロキョロと周囲を見渡す。声の主らしき姿は見渡らない。
ブォン
『これ映ってるの?』
『映ってるようですよ』
『見えてるかしら?』
スクリーンのように何かの映像が宙に映り出される。そこに映ってるのは悪い意味で見知った顔ばかり。
先程まで戦っていた敵である魔神教会の幹部らの姿が映っている。映像から場所は、マーリン女王陛下が国民に演説するテラスだと推測出来る。
そして、宗教の演説が始まった。魔神の素晴らしさや魔神教会の目的等を永遠繰り返し喋ってる。
「これは映像を映し出す魔道具を使ってるようです」
「あっ!見て!」
サクラが指を差す。映像の傍らに王様ら王族全員が捕まっているように見える。つまり、人質を取られたという事だ。
「ふざけやがって」
「姫さんまでも捕まるなんて」
「ケルちゃん急いで」
『バウ』
城へと急ぐ。眠そうにしてたが、俺が戦った二重人格女も映ってた。その姉と思われるくノ一女もいるという事は、本の勇者である凛はどうなったのか?
安易に想像出来てしまい怒りが底から込み挙がって来るのを感じる。早く辿り着いて確かめないと。
『バウワウ』
「着いた」
俺ら以外にも人が大勢いて避難してるはずの民衆が次から次へと集まって来る。野次馬として出て来たのと国王様らを心配をしてるのが半々。
俺らケルちゃんから降り、大勢の民衆の後ろからテラスを見詰める。
『おや、どうやら役者が揃ったようね。勇者諸君が到着したようだ』
「おい、そこから降りて来い。今すぐ国王陛下達を開放するんだ」
『それは出来ない相談よ。ワタシ達が逃げるためと今から宣戦布告する時間稼ぎの人質なんだから』
「宣戦布告?」
『そう、これが世界全域に対する宣戦布告と受け取って貰っても良いわよ』
「凛?!」
血塗れでグッタリと動かない凛をくノ一女は、軽々しく持ち上げ民衆らにも良く見えるよう見せ付けた。
端から見ても、それはもう息がしてる風には見えず俺達も呆然と立ち尽くすしかなかった。
『マーリンの勇者である本の勇者は、このワタシ《隠者》が討ち取ったのよ。死体は、あなた達に返すわ』
ポイっとゴミを捨てるようにテラスから放り投げた。放物線を描き、俺らがいる地面へと落下してくる。
「ちくしょー、凛!」
カズトは走り出した。凛が死んだとは信じられず、自然と身体が動いていた。
スライディングをしてまで、凛をキャッチしようとするが間に合わない。
「凛、起きろよ。無事なんだろ?」
「パイセン」
「カズト先輩」
「カズト」
「……………チクショー、何でだよ。何で、お前が死ななきゃならないんだよ」
ズキン、何だ?一瞬だが、カズトに頭痛みたいな痛みが走る。今一度、凛の死体を見ると頭痛が起きる前と後では捉え方が違うように思えた。
何処がおかしいとまでは、ハッキリとした事はまだ分からない。分からないが、凛の死体に何か妙な違和感を感じる。
「カズト殿ぉぉ」
凛の死体に違和感を感じた瞬間、青龍隊隊長ビィトが疾風の如く俺の元へ駆けて来た。
「カズト殿、ご無事であったか」
「俺は無事だ。だが…………」
ビィトにも凛の死体が目に入り、俺よりもオーバーリアクションで驚いてる。
「これは!本の勇者殿!何故こんな事に」
「あそこのくノ一女が殺ったんだと」
怒りをこめて指を差す。だが、怒りよりも凛の死体に残る違和感の方が勝ってしまい、変なトーンとなってしまう。
変な感覚だ。普通なら今頃怒りに任せて一目散に駆け抜け斬り掛かっていたかもしれない。
「ルリ姉は無事だろうか?」
ざっと見たところ、王様ら王族達が捕まってる場所にはいない様子だ。ドーム状に障壁が張られており抜け出せないようだ。
『これで宣戦布告はしたわね。それでワタシ達の目標は、これを集める事よ』
くノ一女が何やら円柱状の容器に入った腕らしきものを見せ付けるように空高く掲げた。
『見えるかしら?これは魔神様の左腕よ。魔神様は、各体のパーツに分けられ封印されてる。それを集める事で復活出来るの。魔神教会は、魔神の復活を目標にしてる訳。お分かり?』
魔神、シロから聞いた事がある。もし、復活すれば世界が耐えられるか分からないと。
最悪、世界は崩壊。まだ、シロを含む神様達が異世界を管理してた頃でも封印がやっとだったと聞く。
そんなヤツが復活して、はたして対処出来るかと問われれば無理だと答えるだろう。だが、やるしかない。
魔神が復活する前に魔神教会壊滅と魔神の体の一部でさえ、破壊出来れば復活は阻止出来る。




