SS10-9、ジョルの仕事〜帝国の三勇者&《紅》vs《運命の輪》その3〜
ルージュを吹き飛ばした衝撃で、砂ホコリは舞うが衝突した建物は無傷だ。良く見ると、半透明な何かに覆われている。
「建物1つ1つにも障壁を張るとは凄まじいですね。そんな真似したら、普通は魔力枯渇して死にます」
これが《戦う歌姫》歌の勇者:ココアの実力。歌を媒介にして攻撃・防蟻・治癒に至るまで万能な能力を発揮する。
「ルージュさん、大丈夫ですか?」
「ゲホッ、ボクは死ぬのか?」
ココアが吹き飛ばされたルージュの元へ駆けていく。ルージュは、本来なら助からない重症のはず。
「無駄ですよ。肋骨は折れ内蔵はズタズタのはず。いくら【回復魔法】でも治せない」
「いいえ、死なせません。【癒しの歌ヒーリング】」
「無駄だと分からないのですか?」
「黙ってろ」
歌の勇者リンカではなく、槍の勇者メグミから殺気が飛んで来た。この殺気だけで、大抵の魔物は本能で逃げ出すに違いない。
「ココアがやるなら治る。黙って見てろ。邪魔するならオレが相手してやるが」
殺気だけで、ワタクシらを萎縮させてしまうとは!だが、これでもアゲハ隊の隊長…………魔神教会の幹部を任せられてるのだ。
この殺気程度で引く訳にはいかない。それにワタクシには、この技術があるではないか。
何を恐れる事がある。ワタクシは無敵なのだ。
「ふん、やってみるが良い。殺れるならな」
「なに?!」
自分の殺気に止まらない事に驚くメグミ。
「メグミ、リンカが殺る」
「リンカ、これはオレの戦いだ」
「脳筋がやったらルージュの二の舞いになるのがオチ」
「なんだと?!」
「どちらでも良いから掛かって来い」
1人ずつ戦えるなら、それに越した事はない。3人一緒に来られるよりは、1人ずつのが確実に倒す。いや、逃げる隙を伺う。
「…………なら、こっちから行くぞ」
「「ちょっと待って」」
「はひっ!」
二人の殺気に当てられ変な声を出してしまった。何を恐れる事がある。だが、頭の中でそう叫んでるが、本能的に恐怖を感じてると訴えてる自分がいる。
「ジャンケンで良いか?」
「それで良い。リンカ負けないから」
「「最初はグゥ、ジャンケンぽい」」
「リンカの勝ち」
「チクショー」
何をしていたのか分からないが、どうやら決まったようだ。
「リンカが殺るよ」
「お嬢さんが、あの《武神》なのか?」
噂では何度も聞きはしたが、こんな幼子とは目にするまで信じられなかった。
「今、こんな子供だと思いましたね」
「いや、そんな事は!」
「リンカは、これでも立派なレディーなの…………です」
「早っ」
十数m離れていた距離を一瞬で詰めた。だが、こちらには先に発動していた【確率変動】による絶対回避が作用している。
いくら早くてもワタクシには当たらない。一瞬ビビったが、結果が先にある時点で一生変わらない。
「…………当たらない。デバフ掛かってる様子はない」
「当たらなければ、いくら強力な攻撃でも無意味だ」
「そっくり、その言葉を返す」
リンカの攻撃は当たらないが、こちらの攻撃も当たらない。一発でも当たりさえすれば、ルージュのように倒せるものの、何故か当たらない。
それにリンカは技術や魔法を使ってる素振りをみせてない。そもそも封じてるのだから出せる訳はない。
「くっ、どうして当たらない」
その理由は分かってる。【確率変動】にて絶対命中するように発動しようとしたが、不発に終わった。
つまりは、こちらの元々の命中率がゼロ以下だという事。相当な実力差がない限りあり得ない現象だ。そうすると、勝負が一生着かない事になる。
バシュバシュ
「うん、やっぱり」
突然、猛攻なラッシュを止めたリンカ。その隙に距離を取る。何かを確かめるために、その場でジャブを繰り出すリンカ。
「うん、珍しい技術を持ってるね。ジョルのオジサン」
「なっ!」
バレたのか?!そんな訳はない。ワタクシの技術は、バレ難いのも特徴的なんですから。
「まさか、因果律を操る技術だと、リンカもビックリ」
「因果律だと?!オレは気づかなかった」
「そうじゃないと、ルージュが殺られはしない」
「まだ死んでませんよ」
バレてらっしゃる。だが、バレたところで破る事は不可能だ。相手が神でもない限りは。
「クックククク、バレたところで破れはしない」
「まぁ普通なら難しい。だけど、弱点見つけちゃった」




