SS11-6、ルーシーのグルメレポート〜始めての接客〜
カウルのオジサンに頭を撫でられ、自然とニコッと笑顔で返した。その瞬間、カウルのオジサンの頬が赤く染まった気がした。
気のせいだよね?
「カウルさん、ウチの娘こに手を出しちゃダメですよ?ロリコンになりますから」
「レイラ姫、な、何の事だか分からんな」
レイラ姉さんの言葉に動揺を隠せないでいるカウルのオジサン。心臓の音がバクバクとルーシーには聞こえている。
それが、どうもおかしくて天使と思わせるような笑みをカウルのオジサンに向けて解き放った。
水をガブ飲みして、どうにか落ち着くカウルのオジサン。
「そういう事にしてあげます」
「レイラ姉さん、ロリコンってなーに?」
「ルーちゃんにはまだ早い事よ」
うふふふっと笑って誤魔化された。兄ちゃんに聞けば、教えてくれるかな?まぁカズトが、どう答えたのかは別の話。
ルーシーが常連客の顔見せをしてから数日、ルーシーには密かに二つ名が付いていた。その名は『"カズト"の看板娘』と常連客の間で呼ばれていた。
「ルーちゃん、注文お願い」
ルーシーが注文を取りにホールへ出ると、二人のオジサンが口喧嘩していた。
「おい、俺が先に頼んだぞ」
「なんだと!やんのか、コラッ」
あっという間に、二つ名と恥じぬ程に人気者となっていた。特にオジサンらに人気が出ている。
それ故にケンカに発展する事も屡々ある。それを止めるのは、専らルーシーの教育係であるレイラとなる。
「ムハンマドさんとジャックさん、ケンカするならお外でお願いします」
レイラの声は聞こえてないらしく、口ケンカを続行
「やんなのか。あぁん」
「受けて立つぞ。オラッ」
「あ、あのっ!ひ、ヒッヒぃ!」
レイラ姉さんは、優しいだけではない。怖い一面がある事を知った。オジサン二人は気付いてないが、後ろに笑顔だが笑ってないレイラ姉さんがだっている。
「れ、レイラ姫さん」
「お、オレらに何かご用ですかな?!」
レイラ姉さんも怒る時は怒る。それも笑顔の奥底に鎮座する般若が見え隠れしてる……………ような気がする。
それを感じ取ってるのは僕だけではなく、オジサン二人も見えてるようで、先程まで口ケンカしてた人とは思えない程にビビリ腰となってる。
「ケンカするから外でやってちょうだい。それと、私のルーちゃんを泣かしたら怒りますよ?」
バキバキ
「「「ひっひぇぇぇぇ!」」」
笑顔のままのレイラは、テーブルを素手だけでヒビを走りさせた。ただし、そのヒビは時間経過と共に新品同様に直った。
『レイラ、また何か壊した?』
「ミミ!いいえ、壊してません」
『そう、それなら良いけど』
何やらレイラ姉さんが一人で呟いてる。おそらく【念話】という魔法で、ミミ姉さんと話してるのだろう。
前に聞いた事がある。この建物全部にミミ姉さんの魔法が掛けられていると。
壊れた物は瞬時に直り、この中にいる限り盗賊や魔物には襲われないという魔法が掛けられているらしい。
それが本当なら物凄い魔導士という事になる。大小問わず建物一軒に常時魔法を掛け続けるなんて、本来なら不可能だと魔法に疎い獣人の犬人族であるルーシーでも分かる事。
多分、一日持たずに魔力が底に尽く事は明白だ。それを、ずっと維持し続け厨房にて調理の一旦を任せられるなんて信じられない。
レストラン”カズト“の魔法を維持するだけで、本来は動けないはずだ。それなのにミミ姉さんは平然と動けてる。
「ルーちゃん、怖くなかったですか?」
「う、うん。怖くなかったよ」
むしろ、レイラ姉さんの方が怖かったとは言えない。内心涙目でガクブル状態。獣人の忍耐強さで床に地図を描がずに済んだ。
「レイラ姉さん、僕は大丈夫だから。オジサン達を許してあげて?」
「ルーちゃんの顔に免じて許してあげますが、今度やったら出禁ですからね」
「な、何を言ってるんだい?!俺ら二人は仲良しだよな」
「おぉよ!ケンカする程なんとかと言うだろ?」
「「ガッハハハ」」とムハンマドとジャックは肩を組み合い、甲高い笑い声で仲良しアピールをレイラとルーシーに見せ合う。
レストラン“カズト”を出禁になるよりドラゴンを討伐する方がマシだと思える程に影響力がある。
「それなら良いですけどね。ニコリ」
「「ガッハッハ」」
レイラの笑顏に冷や汗が止まらないムハンマドとジャック。ルーシーは苦笑するしかなかった。
という、少し昔の夢を見たルーシーであった。




