176食目、銃と弓vs星
不滅の時計塔に陣取ってる《星》は、うつ伏せの姿勢で遠距離射撃銃を設置し、遠距離にてマーリン兵士や民間人を狙いを定めて射殺する。
自分は安全な距離から攻撃するだけ、こんな簡単な仕事は中々ない。《星》は痛い事は嫌いだから、近距離で戦う者の気持ちは理解し難い。
バンっバンっ
「ムフフフフフ、何も知らずに死ぬ虫けらを見るのは溜まりませんね」
こんな能力をくれた教祖カノン様には感謝しかない。痛い目を合わずに相手を殺せる。
ガチャっ
「そこまでだ。その銃から手を離し手を挙げろ」
「この距離なら外しません」
狙撃に夢中で気付かなかった。いつの間にか銃の勇者ケンゴと弓の勇者アシュリーが《星》の背後に立っていた。
銃口と矢先は《星》の頭に向けられ、何時でも殺れる意思を表す。
「ムフフフフフ、予想以上に早いですね」
両手を挙げながら立ち上がり、二人の方へ振り返る《星》。
「お前が魔神教会の一人」
「ムフフフフフ、情報も早いですね。良いでしょう。僕はNo17《星》、魔神の名の元に相手をしても良いよ」
「相手?ふざけるのも大概にしろよ。もう決着は着いてる」
「こうして銃口を向けてるから勝ち?」
「ケンゴ、何か変です」
これで勝ちのはずなのに、アシュリーの掌や頬に冷や汗が滲む。何か嫌な予感がしてならない。
「ムフフフフフ、何事にも対策が必要さ」
《星》が開いてる右手を人差し指以外を握った。今、両手を挙げてる訳で人差し指は上を差している。
「ケンゴ、上です」
「上?グッしまった!」
「【降り注ぐ星】」
意識を上に持っていった瞬間に《星》は、不滅の時計塔から飛び降りた。そして、透明な足場を作り空中で着地する。
「ムフフフフフ、硬いですねぇ。流石は龍人族と言ったところでしょうか」
「ハァハァ、危なかった。部分的に【龍化】をしなければ殺られていた」
ケンゴは右腕を【龍化】し、天井から降り注ぐ無数の光の弾からアシュリーを庇った。
天井を支える柱を失った不滅の時計塔は鐘と共に落ちていった。その瓦礫の下敷きにならないようアシュリーを抱き抱え龍の翼で飛んでいる。
「ケンゴ、大丈夫ですか?」
「あぁ大丈夫だ。それよりも自分を巻き込むような攻撃をするなんて」
「ムフフフフフ、何を言ってるのです?自分の技術で殺られるバカが何処にいると言うのですかぁ」
不滅の時計塔までたどり着いた相手を倒すというより牽制しつつ逃げるための手段でしかなかった。
「さてとこれで戦えるな」
「ムフフフフフ、ムカつきますねぇ。もう勝った気でいらっしゃる。その足手まといがいて、まともに戦えるのですか?」
「ワタシなら大丈夫です。風の精霊よ、我が名アシュリーが命ずる。我に翼を授けよ【風の翼】」
ケンゴから腕を離しプカプカとアシュリーが浮かぶ。普通に風魔法でも体を浮かす事は不可能とされる。
だが、例外がある。属性魔法の上位とされる精霊魔法なら可能とされる。
「ムフフフフフ、勇者二人と戦う事になるとは今日は厄日ですねぇ」
「降伏するか?」
「いえいえ、これでも魔神教会幹部としてプライドがあるのですよ。勝ち気な虫けらを地面に這わせるのも楽しいのですよ」
「クズね」
「捉えて魔神教会の情報を引き出す。相手は飛べない。こちらが有利だ」
「分かったわ」
確かに飛べると飛べないとでは飛べた方が有利だ。だが、そう世の中は甘くない。
「ムフフフフフ、誰が飛べないって?【ホウキ星】」
《星》の背中に何か透明な物体が装着された。その透明な何かからジェットエンジンみたく推進力を発生してるようだ。
「ムフフフフフ、これで条件は五分と五分になった」
「くっ」
「なら、遠距離で迎え撃ちます。あっちには銃がありませんから」
「あれ?学習してないの?」
不滅の時計塔の天井から何が降って来たのか思い出したらしい。
「僕の技術は、自由に弾を作製し、それを好きな場所へ設置出来るのですよ。だから、こういう事も出来ます」
ケンゴの背後からバンっと射撃音がした。自慢の身体能力で回避しようとしたが、右肩に命中する。
「ムフフフフフ、どうですか?死角からの攻撃は」
「だけど、そこまで威力は高くない」
「ムフフフフフ、そう思います?」
「〝自由に弾を作れる〟」
「そう当たりです。ムフフフフフ、例えば貫通力が高い弾を作れば硬い鱗を貫き通せると思うのですよ」
シャルルが答えを導き出す。特に正解と言われても嬉しくもない。




