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勇者レストラン~魔王討伐して、やることないのでレストランを開きました~  作者: 鏡石錬
3章魔法大国マーリン

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110食目、お稲荷さん

 食べるのを抑え、次々と出来上がる油揚げをお湯で油抜きをする。これをするのとしないとでは味や食感に大きな違いが出てくる。

 油抜きした油揚げを鍋に引き入れ、カズトが絶妙な割合で調合した合わせ調味料を浸すまで入れ、落し蓋をしたら煮詰めていく。

 煮詰めてる最中にお稲荷さんの中身を作っていく。今回は三種類作る訳だが、肝心のご飯は予め炊飯器にて炊いてある。

 このご飯を桶に広げ、団扇で仰ぎながらお酢を回し掛けていく。出来上がった酢飯を見ると日本人の血が疼きやがる。

 一つ目は何も混ぜないノーマルな酢飯、二つ目は海藻であるヒジキの煮物を混ぜた酢飯、三つ目はヒヨコ豆という豆を混ぜた酢飯だ。

 この三種類の酢飯を甘辛く似た油揚げに摘めていく。ただ、一つだけ注意する点は……………油揚げを破かない事だ。

 入れ過ぎると破けるし、少な過ぎだと形が悪く見た目がみすぼらしい事になる。酢飯の分量を見極める事が大切だ。プロになると手の感触だけで、どれもピッタリの重さになる。

 それと今回は具材が三種類あるという事で、どれも同じく包むには地味に難しい。だけど、どれも同じく包むのがプロの仕事だ。

 毎回違う形にするのは三流以下のヤツがする事だ。料理人だってしかり、毎回同じ味として提供するのが料理人ってもんだ。違う味を提供してたら常連客がつかなくなる。


 キレイに三種類の稲荷寿司を包む事が出来たら、最後に締めを飾るのがデザートである〝杏仁豆腐〟だ。

 杏仁豆腐は、豆腐って名前ついてるが全く違うものだ。そもそも材料が根本的に違う。けど、甘味が少ないこの世界では度肝を抜かれる事だろう。

 杏子系の植物の種子から採取出来る物が杏仁だ。それを乾燥させアーモンドで香りつけし、寒天で固め菱形に切り抜いたのが〝杏仁豆腐〟だ。

 盛り付けの際に甘々のシロップを浸すまで入れ、ミカンやサクランボの果物を入れれば完成だ。

 後は作った料理を順番にサーブするだけだ。サーブするのは、ボーロの部下達に頼んである。もうそろそろで晩餐会の時間になる。楽しい会議前夜の晩餐会の始まりだ。


 ☆★☆★☆★


 魔法大国マーリンにて晩餐会という名の宴の開催時間になる頃、とある一団が魔法大国マーリンの国境付近にある森の中に集まりつつあった。

 その一団とは、カズト達が護衛を行っていた馬車を追跡していた魔神教会の幹部六人である。No5《教皇ハイエロファント》、No7《戦車チャリオット》、No9《隠者ハーミット》、No12《吊るされた男(ハングドマン)》リザ・テミス、No13《死神デス》、No17《ザ・スター》の六人だ。


 森の中に潜み魔法大国マーリンを監視し、突入の時間になるまで待機してる状態だ。下っぱには、直接魔法大国マーリンに潜入させ内部調査をさせている。

 可能なら幹部の誰かが潜入しても良いのだが、魔法大国マーリン全体に張られてる障壁により、ある程度実力がある者が入ると感知されてしまう。

 幹部六人の誰か一人でも潜入した時点で即座に感知されてしまう程の感知能力を有してしまっている。だから、襲撃する時間帯まで待機する他ないのだ。

 暇を持て余してる幹部六人は、《戦車チャリオット》は相変わらず寝ており、それ以外の者はトランプの遊び方の一つであるババ抜きで遊んでいた。


「たくよー、何時までここに居れば良いんだよ?もう退屈で死にそうだぜ」

「それは、各国の王達全員が集まったの確認出来てからじゃろうて。ほれ、次を引くがいい」

「予定では、今日か明日までには着くはずだ。それまでの辛抱だ」

「ムフフフフ、《吊るされた男(ハングドマン)》が死ぬとは、おかしいな話ですな。死なない体なのに、羨ましい限り」

「おい、《ザ・スター》よ。ケンカを売るなら買うぜ。表に出な」

「ムフフフフ、止めときます。どうせ、決着は着きませんから。労力の無駄というものですよ」


 《ザ・スター》は《吊るされた男(ハングドマン)》リザ・テミスとの喧嘩腰を軽くスルー。《吊るされた男(ハングドマン)》リザ・テミスが、勢いの余り手札を地面に叩き着けた事で、ババがある事が発覚。

 最初からやり直しとなった。


「《吊るされた男(ハングドマン)》いい加減にしなさいよね!私が勝ってたのに、無効になっちゃったじゃない」

「うるせぃな。ケンカなら買うぞ」

「ふん、コテンパンにしてやがるんだから」


 お互いに立ち上がり、森から少し歩いた所に拓けた草原がある。そこで《吊るされた男(ハングドマン)》リザ・テミスと《隠者ハーミット》は決闘をする事になった。


「ムフフフフ、どちらに賭けますかな?」

「俺は《隠者ハーミット》だ。《隠者ハーミット》に賭ける」

「そうですな……………折角ですから相棒に賭ける事にしましょう」

「《死神デス》は、あの二人を止めなくて良いのか?この前はケンカを止めたのに」

「前は時間が無かったからですな。今は退屈で、ストレス発散のため宜しいと思った次第です」


 《死神デス》は、少しでも任務の効率を上がるならばと、二人の決闘を了承する。明日か明後日に控える任務と比べると、この決闘は些細な事に思えてならないのである。



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