表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラブコールは銀河から――僕が地球代表だそうです  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/36

全員の覚醒

 次の日の午後、立花が回復したのを確認してから聞き取りを行なった。

 山田との同時聞き取りだ。


「離脱した瞬間は覚えていますか」


「はい。今までと同じように、抜けた瞬間を感じました。その後は無です」 


「意識がはっきりしたきっかけは?」


「山田さんと繋がったような感覚、手をつないだ感じが近いでしょうか。それで目が覚めました。私は山田さんと一緒にあの場にいました。皆さんや自分の姿が見えました」


「それで?」


「私が宇宙に行ってみたいと山田さんに頼んだんです」


「山田さんは、そこまでどんな状態だったのでしょう」

 

 佐伯が山田に振った。


「立花さんの唱える声と火がトリガーで、僕も離脱しました。気がついたら火の中から立花さんを見ていて、彼に手を伸ばしました。その瞬間彼と僕がつながったんです」


 繋がる、と呟きながらノートに何か書き込んでいる。


「そうしたら立花さんの意識がはっきりしました。それで宇宙に行くことになったんですが、月も見えないし、一番はじめに行った場所に行こうと念じました」


 そこで立花が変わると言い出した。


「宇宙へ向かうとき、グンとすごい勢いで引っ張られました。逆バンジーみたいな感じです。そして銀河を観ることができた。山田さんがどうやって位置や方向を探るのか分かりませんが、私を宇宙で見つけたことからして、何か追跡出来る能力があるのでしょうね」


 立花は相変わらず、山田のマネージャーとしてものを考えているのか、山田を軸に置いて話をする。

  

 佐伯が「方向と位置の感覚ね」と言いながら、チラっと山田を伺う。


「山田さんは、どうやって立花さんを見つけたんですか?」


「立花さんの所に行きたいと、強く念じたんです。そこに向かって一気に飛んだようでした。目印があれば行けるのかも」


「山田さんは突然目の前に現れました。近付いてくる様子は全く見えませんでした」


 二人で行動するパターンは初めてなので、佐伯たちは研究が進むかもと言って興奮している。

 調査は何時間にも及んだ。


 その先は個別で細かい聞き取りに移った。その問いのうち、なぜ、お互いを認識できたのか、には二人とも答えられなかった。


 ただ、小森や水野と同じで、立花も山田を知覚できていた。

 非常に大きなエネルギーを感じたと話した。

 精神だけでいる時に、どうやって相手を認識するのかは、本人たちも分かっていない。

 だけど分かる。顔を見て確かめるより、はっきり分かる。

 それと同時に大きさも感じ取れる。


 カルテットのメンバーで言うと、一番が山田で、二番が立花、その半分くらいが水野、更に半分が小森だ。

 山田と立花の差は桁が違う。

 立花は、一人きりになった時のことを聞かれると、こう語った。


「山田さんの力が、私の周囲を取り巻いていたように思います。多分それが私を守ってくれた気がするんです」


 徹頭徹尾、話の軸が山田だった。


 この日、山田は立花に、交代を申し込もうと決めた。

 他の離脱者が現れたら交代の約束だ。


 カルテットの全員が離脱を経験したが、思った通り、立花が一番強い。

 現状、交渉事を中心となって捌いているのは立花だし、彼なら皆が納得すると、山田は一人頷いた。

 彼がそのまま、宇宙局の中心になるべきだ。

 山田は重たい肩の荷を下ろす算段がつき、晴れ晴れした気分だった。


 それから数日間、全員がみっちり訓練を積んだ。

 一度経験すれば、二度目は簡単だった。各々のやり方で、経験を積んでいく。

 その結果、一人ずつ能力の発現の仕方が違うことがはっきりした。


 一番弱い小森の行動範囲は、ほぼ肉体で動くのと同じ数キロ程度。肉体と違うのは飛べて壁を抜けられることくらいだ。


 水野は日本国内なら移動可能。飛んでいる自分を感じることができる。


 立花は、自力で行ける距離は最大で、太陽系内。


 皆、そこを超えようとすると、制約がかかるそうだ。精神に負荷がかかり、苦しくなるらしい。

 今のところ負荷を感じたことのない山田は戸惑った。

 立花を銀河外まで連れて行ったとき、立花がキツイと言っていたのが、それだろう。本来、あそこまで行くには能力が足りなかったのだ。


 実験の一環で、立花が水野を大気圏外へ連れて行ってみたが、精神エネルギーが小さく縮こまってしまった。それですぐに実験を中断した。


「自分より強い人とリンクすると、その能力内に包まれるような感じになるのよね。だからいつもよりずっと遠くまでいけるけど、それでも限界はあるみたい。ギューッと圧迫される感じになるわ」


 水野の言葉に、他の二人も同意した。

 山田と共に宇宙に出る実験をしてみたいが、安全を保証できないため、実験は行われていない。

 山田は、まだコントロールが十分でない。せめて月辺りで止まることができなければ、この実験は危険すぎた。

 立花は強いから持ったが、かなりの負担だったはずだ。


 三人の能力開花で、最も影響を受けたのは山田だった。

 それぞれの離脱に反応し、山田の能力は違う方向に延びて行った。発現の仕方が多彩になり、コントロールも少しうまくなった。能力が四方八方に広がったような具合だ。


「山田君はもっと能力を伸ばせるはずです。いつ必要になるかはわからないんだし、伸ばしておきましょう」


 相変わらず、立花は山田のサポーターでマネージャーだった。


「立花さん、僕の事より立花さんの力を伸ばさないと。僕は十分にサポートしていただいています。ありがたいと思っています。今度は僕に手伝わせてください」


「じゃあ、一緒に修行しましょうか」


 いたずらっぽく言う立花に、山田はつられて頷いた。

 だけど、その修業はひどく過酷なものだった。立花の修行レベルは並大抵のものではない。

 それを山田は思い知らされた。



 ファーストコンタクトの人物公表は、銀河連合交渉団との会議の前日に行われた。

 彼の名は『ジェイ』、仮名だ。

 日本人男性。

 危険回避のため、その他全ての情報は極秘。


 今後、彼が地球の代表になり、宇宙局と共に加盟交渉に当たる。

 その彼をサポートする、『Kカルテット』のメンバーはジェイ以下三名で、立花、小森、水野。


 ジェイの人物特定に関しては、ありのままを公表した。


 ジェイが、宇宙人側の実験に応じて、そこに姿を現したのは、離脱研で実験の最中だったため、宇宙人側と地球側の両方から、同時に人物特定された事。

 エネルギー分析により、まごうかたなく、三年前と同一人物であると認定された。

 そして、ジェイの能力の詳細については、今だ解明に至らず、実験を続けて行くと公表した。


 最後に、ジェイもまたKカルテットの他の三名と同じく仕事を持ち、通常はその仕事に従事していると紹介した。

 この言葉は、好意的に受け取られた。覚醒者は特殊な人物ではなく、一地球人なのだ。


 その発表後に、日本の伝承をいくつか紹介した。

 1100年の昔に、魂だけで別世界と行き来し、そこで働いていたという源高明の話や、もっと古い時代の、浦島太郎の話が紹介された。

 どちらも異世界に行って生活した話で、日本には、そう言った伝承がいくつか残っているが、証明の方法はなく、千年の昔の伝承のため、真偽は分からない。


 今回のジェイに関しては、実際に宇宙空間で彼の存在が確認されたため、精神が体から抜けて活動したと科学的に証明された。

 だがこのような体験が実証されたのは、今のところジェイのみ。

 極めて特赦なのだと発表した。

 こうでもしないと、地球、特に日本人が銀河宇宙から狙われることになりかねない。


 そして立花以下三名が覚醒し、離脱体験をしたことは、この段階では隠すことになっている。

 少し沈静化するまで様子見する作戦だ。


 そして、初お披露目の日がやってきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ