吹きだす思いは熱すぎて。
夜のうちに、お弁当の仕込みを済ませといてよかった。起きてちゃんと頭が働く前に、ルーティーンになってることを済ませられたから、少なくともお弁当はいつも通り。でも、そこから先は、けっこう自分でもわかるくらいにおかしくなっちゃってる。シャツのボタンを掛け違ってるの、リボンを付けようとするまで気づかなかったり。教室まで行くときに、鞄が開きっぱなしだったり。授業も、まともに聞けるわけないや。何してたのかも、よくわかんない。喉もからからになって、休み時間にココアじゃなくておっきなお茶のボトルを買って一気に飲み干しちゃった。……夏樹ちゃんは、どうなのかな。
「美咲……」
早足で旧校舎に向かう道で、すぐに呼び止められる。ほっぺが赤くなっちゃってるのも、息が上がってるのも、寒さのせいじゃない、のかな。わたしのうぬぼれじゃないといいんだけど、……おかしくなっちゃってるの、自分でもわかってるし。
「夏樹ちゃんも早いね」
「そだね、……私が言い出したんだし、遅れたくないかなって」
「そっか、……じゃ、行こっか」
その先の言葉、思いつかない。旧校舎の、部室にもされてない空き教室。それまでの時間も心臓がおかしくなりそう。いつもならちょっとしかかからないのに、今日はいつもより長いや。
「ね、……あのさ」
「何?」
鼓動の音、聞こえちゃいそう。いつも通り向き合って食べるお弁当も、全然味がしない。あの時と何も変わってないはずなのに、もう、そのままじゃいられなくなってる。
「なんで呼んだか、わかる?」
「うん、なんとなく……だけど」
わかってるよ、わたしも、多分だけど、同じ事の話をしたかったから。……お互いそんなものを作れないと思ってたわたしたちの、建前だけのつもりだったはずの関係。
「なら、……よかった、……じゃあ、いい、かな」
「ん、……いいよ、何?」
たどたどしい言葉、わたしも夏樹ちゃんも一緒だ。ほっぺの内側が熱いのも、うつむいちゃうのも、一緒だといいな、なんて。上目づかいでこっそり見てみると、……やっぱり、そうなっちゃってる。かわいい。嬉しい。おんなじなんだ、わたしたち。
「あのさ、……巻き込んじゃって、ごめんね?」
「もう……いいって言ってるでしょ?」
「優しいよね、……でも、こんな中途半端なのは嫌だからさ」
わかってる、そのことなのは。……夏樹ちゃんの答え、もうすぐ出てきちゃうんだ。知りたいけど、怖いような。変だよね、わたし。
「……もう、恋人のふりとか、しないでいいから」
「……え?」
頭の奥に、氷でもあてられたみたい。冷たくて、痛い。ぐるぐるしてるまま、何も言いたい事、思いつかない。そういうこと、してほしいわけじゃないのに。
「だから、……私と、本当の恋人同士にならない?」
「……夏樹ちゃん……?」
熱っぽい声、もっと、頭の中がまとまらない。でも、……ドキドキ、しちゃってる。それしか、わかんない。




