97.ジル旅立つ②
姉のリミィが放った一言が…。
「クルンデュラの人が、とっても心配…」である!
小首をかしげ人差し指を頬にあてながらそういうリミィ。
「そっち?」と僕が叫ぶと皆が首を縦に振った!
「なんでっっ!」と僕が叫ぶと皆が一斉に反論してきた!
「この後に及んで自覚がないな?リミィの言う通り。リミィ、他国の民まで心配するとは優しいね。さすがは、僕の許嫁」
「やだ、ティムン兄様ったら♪優しいだなんて、そんな~。うふっ」
「ほんと、ジル!気を付けてよ!とにかく魔力は、小出しにして、ちょっとやそっとじゃ怒っちゃだめよ?私みたいに感情の起伏で月の石がバンバン生まれちゃう位なら問題ないけど、ジルの場合は破壊とかしちゃうかもしれないみたいだし」
「か、母様…」
「そうだぞ!ジーン(父はジルと呼びなれていないのでジーンと時々、本名で呼んでしまう)いくら人外の国でも今は国として成り立っているのだから滅ぼしたりしないでくれよ?国際問題になる」
「と、父様まで…」
僕はがっくりと項垂れた。
何この展開…。
ほんとに予想外…。
ああ、僕の憧れの『普通の学園生活』が消えていく。
僕が、半泣きになっているとリミィが、僕の頭を撫でてきた。
「ジル!大丈夫よ!要は魔力が、どの程度か理解して制御が完璧に出来るようになれば、すぐ帰ってくればいいんでしょ?ジルならすぐに習得しちゃうって!」
「そうそう!竜神と融合しちゃって月の石の精霊でも制御きかないんだから仕方ないわよ。制御には使えなくても通信用に月の石は持っていきなさいね?大丈夫よ。月の石さえ持っていれば私達家族はいつでも繋がれるんだから、そんなに深く考えなさんな!」と、母のルミアーナが言う。何を根拠に大丈夫だなどと言えるのか…。
「相変わらず主は大雑把だな。しかし、今はそれが、一番マシな方法だろう。仮にクルンデュラ国でも、厳しそうならもう、精霊賢者様にお願いして魔界に飛ばすしか…しかし、そうなると月の石の通信も及ばぬ領域に…」とリュートが思案顔で言う。
「わぁああ!喜んでクルンデュラ国に行きます!できるだけ徐々に試すからっ!」
僕は、本当に本当にうっかり竜と融合なんてしてしまった自分を呪うのだった。
僕は家族が大好きなのだ。
二度と会えないかもしれないなんて絶対に嫌だ!
「そうか、男が決めたからには成果があるまで頑張るんだぞ!」と父様は何やら感極まっているが…。
できれば、もうちょっと心配してほしい。(あ、心配はしてくれてるのか?主にクルンデュラ国のね)
そして、僕の旅立ちは、その日のうちにと決まった。
物凄く嫌な予感しかしないけど仕方がない?
何が、起爆剤となって暴発するかもしれぬからという、物凄い危険物な扱いである。
そして、いくら頑丈なクルンデュラの人々でも、どうなるかわからないという事でいきなりクルンデュラ国の渓谷にある凶暴な魔物しかいない洞窟に嫌が応なしにリュートによって転移させれたのだった。
…まじ、鬼かと思ったよ。




