92.思いがけないご褒美? Byティムン
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神聖竜ギエンティナルが、竜達の前に現れる事で竜達はその戸惑いを落ち着かせ、皆が生まれ変わりし新たなる主にこれまで以上の忠誠を捧げた。
それは、ギエンテイナルの身内である僕にも向けられた。
何て恐れ多い。
あの崇高なる竜に傅かれるなど…本当にいいのだろうか。
何て大それた…。
学園の休日、職員寮の一室で僕は、そんな事思いながら気が付くと深い溜息をついていた。
「兄様…ごめんなさい」ふと気が付けば、すぐ側に当の本人であるジルが申し訳なさそうに立っていた。
「うわっ!ジル!いつの間に!」全く気配を感じさせなかったジルに驚いた。
これでも僕は騎士学科主席卒業、魔力感知も気配察知は怠りないと自信があったというのに…竜達に示して見せたあの隠しても零れ出てしまうような魔力はどこにしまったのだろう?
さすがは、竜人と感心すらしてしまう。
魔法で転移して来たのだろうが、いつ来たのかさえ全く気付かなかった。
もはや、月の石が封じきれないほどの魔力をその身に宿しているジルなのに。
確かに今回の事は困惑はしたが自分としてはジルを責めるつもりなど微塵も無いのだが、気にしているようだ。
「ジル、せっかくの休校日に、そんな事を言うために来たのかい?別に怒ってなどいないよ?」
「でも、困っているでしょう?」その綺麗な顔をくしゃりとゆがめてジルがいった。
もう、この甥っ子ときたらなんて純粋で可愛いのだ。
「いや、ちょっと戸惑っているだけだ。直になれるさ。そんな事まで気にして…優しいなジルは」
そう言って僕はジルの頭を撫でた。
そう、ジルは優しい良い子だ。
この子がこの魔力の使い方を間違えるとも思えないし思わない。
多少、常識の枠に捕らわれなさすぎなところはあっても、それは、そもそも彼の家族丸ごとな訳だから、彼がそう育ったのは致し方がないだろう。(リミィもな!筆頭は母親のルミアーナ姉様だけど)
そもそも、父はラフィル王国の英雄と呼ばれる大将軍。
母親はラフィリルで崇める”精霊を従える月の石の主”でありしかもその子供である二人は、この世界を創りし大魔法使いの生まれ変わりだと言うのだから。
(ちなみに”月の石”の主であるジル達の母ルミアーナの地位は国王よりも上である)
そう!元々が、家族丸ごと規格外なのだ!
例え、竜人になっても、変わらない。家族想いで賢く優しい自慢の甥っ子である。
「兄様…ありがとう。兄様は僕の身内だと言い聞かせてあるから、兄様の言う事なら何でも聞くし逆らう事はないから…せめて兄様の竜の研究の役に立てばと思うのだけど」
「え?」一瞬、僕は耳を疑った。
なんですと?僕の言う事なんでも?いや、でも確かに、竜達はこの僕にも忠誠を誓うと言っていた。
それって、そういう事になるのか?
竜の言葉は人間のようにその場しのぎの言葉ではない。
その言葉は重く気軽に覆されることは無いとされている。
「そ、そそそ、それって、鱗一枚頂戴とかいったら…?」
「兄様が本気で望めば全身の鱗だって捧げてくれるはずだよっ」
「い!いやそんな、無茶言わないし!」
「無茶じゃないよ。鱗どころか角だろうが、牙だろうが爪だろうが、生き血だろうが目玉だろうが、兄様が望めば竜達は喜んで差し出すよ。だって長の身内なんだから」
「何て事だ!ああ!ジルありがとうっ!」「えっ?わぁ!」
僕は感極まって、思わずジルを抱きしめた。
僕は別に竜達を従えたい訳ではない。
けれど、元々、僕が、この国に来たのは双子たちの為ばかりではなく竜の神秘を調べたいと考えていたからだ。
まぁ、それも含めて義姉のルミアーナが子供たちの留学先をこの国にしたのだ。
僕の研究のついでに双子たちも見守ってくれと言われていたのだが、それは双子たちには内緒である。
勿論、僕は大好きな双子たちと憧れの竜の研究との両立という好都合な申し出に一も二もなく飛びついたのだが。
「ああ!僕は何てラッキーなんだ!最高だよ!ジル!ごめんだなんてとんでもない!むしろありがとう!」
僕は素直にその状況を喜んだ。
我ながら現金なものだと思うが、ここは素直に喜んでしまおう!
そう思ったのだった。




