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91.竜を従えし者 人ならざりし者--06 神聖竜ギエンティナル降臨

 学園の竜舎は、いわゆる馬小屋のようなものではない。

 それは、至高の存在への敬意をもち、賓客をもてなすかのように建てられた白きそれは白亜の宮殿と言っても過言ではない。

 常に浄化の魔法がかけられたその場所は、空気は澄み渡り床の大理石は光り輝いている。


 そして、そこには、元々学園に根を下ろしていた竜以外も集っていた。

 その白亜の宮殿(竜舎)を仕切る白竜ホワイティが皆を呼び寄せたのである。


 そして、その竜達にティムンは取り囲まれ詰め寄られていた。


『人間の若者よ。早く知っている事を申せ』


『はい、竜神ポッティ様の気が感じられなくなりさらに強大な気が感じられるとホワイティ様は申されましたね?』


『いかにも』


『ポッティ様は亡くなられたのではありません』


『なんと!』


『生まれ変わられたのです』


『『『なんと、それは真か』』』


『はい』


『いや、人間の若者よ!なぜ、それを竜族でもない其方が知っておるのじゃ?』


『『『そうだ、そうだ』』』


          『『『信じられん』』』


     『『『『『そもそも人間の言う事など信じられるのか?』』』


『『『信じられぬ』』』


         『『『騙されるな』』』


『『『では、長は、どこに』』』


               『『『どこにっっ!』』』

 

『人間に、分かるはずもない!』


『『『『そうだ!そうだ!』』』


 竜達の苛立ちがピークになりかけていた。


 白竜のホワイティが、前に立ち、庇ってくれてはいるものの今にもティムンに、かぶりつき四肢を引きちぎりそうな勢いである。


 そんなギリギリの瞬間(とき)である。

 圧倒的に絶対的な存在が、そこに現れ出でた。

 そしてすべての竜が振り返り目を見開いた。


「ジル!いや、ギエンティナル!間に合ったか」と、ティムンはほっと胸をなで下ろした。


 そして、ギエンティナルは、降り立った。


 つんざくような咆哮と、ともに!


『『『『『おお』』』』』

 竜達は一斉に、ティムンから距離をおき、ギエンティナルに敬意を示すかのように整列しその姿に見惚れた。


 そこには、みた事もないような神々しく美しいに虹色の鱗を持つ大きな大きな竜が降りたっていた。


「ジル!…ジルだよな?竜の姿は初めてみるが…」


『兄様…遅くなって申訳ありません。竜達が、何かご迷惑を?』


『良かった。迷惑ということは、ない。竜達は突然、長の気配を失って困惑していたんだ!言葉をかけてやってくれないか」

 迷惑でないなどと言う事はないだろうが、ティムンは優しくそう言い、ジルは、その優しさに胸が熱くなった。


 そして竜達に一喝する。


『控えよっ!』


 その咆哮に、竜達はびくっと肩をふるわせ一斉に頭を垂れた。


『その人間は、我が叔父である!我は、この世界を創りし始祖の魔法使いが一人の生まれ変わりである主と悠久の時を経てめぐり逢い同化した!』


『『『な!なんと!始祖の魔法使い…創世者様と!』』』


 創世者…そう、それは、この世界の神と言っても過言ではない。

 言葉の通り、この世界を創った者達である。

 伝説には七人の魔法使いがこの世界を創ったとされていて、ジルとリミィはその七人のうちの二人である。

(リミィに前世の記憶はないが)


『『『なんと素晴らしい!』』』


 竜達は新たなる長の誕生に心から喜んだ。

 そして敬意を持って従った。


『『『この漏れ出でる澄んだ魔力のなんと心地よいことか…』』』


 そして竜達は一斉にティムンに向き帰り、土下座せんが勢いで詫びをいれた。


『『『長のお身内とは、平に、平にご容赦を』』』


 ティムンが、「ひっ」っと一瞬さけび声をあげそうになったのは致し方ないと言えよう。

 百は越えようかと言う竜達が一斉に自分に頭を下げてきたのである。

 いくら月の石の主(精霊を従え現存する女神と言われるジル達の母であり義姉)の加護持ちだとしても元は普通に人の子なのだから。


そして、威厳を示すかのようにギエンテイナルは大きく咆哮するとそこに集う竜達に、重々しく言葉をかけた。


『我が名はギエンティナル!全ての竜を統べる者!竜達よ我に従い我と我の身内に忠誠を誓え!』


 竜達は大いなる力を持って生まれ変わりし長を迎え、感動に打ち震えながら心からの忠誠を心に誓った!

 そして一丸となり頷き返答の言葉を一斉に口にしティムンに(こうべ)を垂れた。


『『『『『『『御意っ!』』』』』』


「う、うわぁ~」

 そもそもティムンは、教師として来たものの竜について学びに来たのだ。

 その憧れの竜達に平伏されてしまっているのだ。

 あまりの事態に喜んでいいのかどうなのか混乱するばかりであった。


 しかし、この事でティムンの竜の研究家としての将来は約束されたようなものだった。

 竜達は長や長の身内であるティムンには、その命を捧げてもいいほどに尽くすに違いないのである。

 それこそ、鱗だろうが、爪だろうが、牙だろうが、それこそ血液位なら喜んで差し出すだろう。


 その事を後ほど、落ち着いてからジルに言われて狂喜乱舞するティムンなのだった。

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