85.竜を従えし者 母のぶっちゃけ話--02
『そんなのより、あの後、リミアも結局なんだかんだでティムンも大変だったんだから~』と、母は、そのままの勢いで話をつづけた。
「「そ!そんなの??」」思わずギエンテイナルと僕は聞き直してしまったが、そうだった。
そう!そうだ!
リミィ!
僕の姉リミア・ラフィリアードの幸せ!そのために僕の記憶の封印を解かれたようなものなのに、すっかりその事を忘れていたなんて僕ってば何て薄情なんだ!
まぁ、結局うまい具合に落ち着いて、晴れてリミィはティムン兄様と婚約者を続け、尚且つ学園卒業と同時に結婚決定の運びらしい。
よかった!
本当によかった!
一時は僕が変に魔法でリミィの気配を隠したことでこじれてどうなることかと…。
悪気は無いとは言え自分のうかつさに凹む。
しかも、そんな重大事を忘れていたなんて!
ちょっと自分が人間じゃ無くなったかもしれないくらいで!
そんな僕の落ち込んだ気持ちを読み取ったギエンティナルは、慰めの言葉をかけてきた。
「え?…っと。いや…主は、全然、薄情じゃないと思うぞ?むしろ優しすぎだ!今の言いようは母君に怒ってもいいくらいでは?」とギエンティナルは乾いたような表情で言うが母は間違っていない!
「いいや!ギエンティナル!母様は間違っていない!全ておっしゃる通りだ!」
そう!よくよく考えたら(よくよく考えなくても)母の言うとおりである。
強いのは悪いことじゃないし、長生きなのも早死によりはいいし、要は自分の気持ちの持ちようだ。
力は悪いことに使わなきゃいいんだ!
制御できない中途半端な力より、いっそ制御すらできるくらいのほうが何倍も安心なのだ!
『そうそう!竜君も、難しく考えないのよ!人間も竜も生き物全部、素直が一番なんだから。あら、そう言えば竜君の名前、ポチ?やらポッティ?やら?じゃなくてカッコいいのに変わったのね?ギエン?いいじゃない!』
「ギエンテイナルです。主の母上様」
新たな名前をカッコいいと言われギエンから喜びの表情がもれる。
人化の影響か表情が柔らかい。
今は竜の姿のままだが心なしか頬が照れたように紅潮している。
『渋くて素敵な名前じゃない!長いからギエンって普段は呼ばせてもらっても?』
「「もちろんです」」
そしてギエンテイナルは、通称ギエンとなった。
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-母side-
そして母ルミアーナは思っていた。
何がどうしてこうなった!
ただ、子供達を”女神の子供達”等と言われず自由にのびのびと学園生活を送らせてやりたいと言うささやかな願いで送り出した筈だった。
なのに、少し目を放した隙に竜と同化~?ないわぁ~!ないない!普通ないからっっ!
いきなり月の石で連絡繋いだら死にそうな感情伝わる声でそれを告白してきた時は一瞬頭が真っ白になったわ!
思いつめて病んでしまうかと思った。
『あ!これ、やばい!』って!
ジーンが単純な子で良かった!私の思いつきのたたきつけ論法を素直に聞き入れてくれて。
いやいや!あたしだって、さすがに竜神と合体なんて想像してなかったしっっ!
でもまぁ、なっちゃったもんはしょうがないのよ!
私だって元々は、日本の女子高生だったのがこの世界の公爵令嬢ルミアーナとまじりあって今の私になってる訳だし…(※詳しくは『目覚めれば異世界!ところ変われば! 』必読!)。
望んで”月の石の主”とかなった訳でもなく全部がいきあたりばったりである。
しかし、この世界マジで何でもありだナ?
そう思う母ルミアーナであった。




