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83.竜を従えし者 困惑のジル--02

 そして、僕とギエンティナルは、竜人(たつびと)となった。

 それは、人と竜が命を分かち互いの種族性を受け入れ生まれた新しい種族とも言える。


 竜といってもギエンティナルは神龍。

 この地を守り森を(はぐく)めるほどの竜だ。


 そして、決して己惚れる訳ではないが人間(ひと)とは言えども自分は始祖(しそ)である魔法使い七人のうちの一人、その中でも一番魔力の強かった伝説の魔法使いの転生者。

 その強大な魔力を宿して健康な体で生まれ変わった僕はきっとこの世界で最強となり得る存在。


 人であり竜の力を宿す僕と、竜でありながら魔法使いの力を宿すギエンティナル。


 僕が望めばその姿は竜となり空高く羽ばたくことも、咆哮ひとつで大地を揺るがすことも出来るだろう。

 そしてギエンティナルもその姿を人にやつし、僕の魔力を使い奇跡を起こすことすら出来よう。


 ほんの一瞬、歓喜に似た気持ちが湧いたがそれは直ぐ様、別の感情に囚われた。


 自分の中に沸き立つ竜の力に僕は今さらながらに驚き、後悔にも似た気持ちに襲われた。


 湧き上がり膨れ上がる強大な魔力(ちから)

 何コレ!?

 何か…何か…これって!


()()()()()かもしれない』胸の奥が凍りつきそうな位の恐怖と混乱が自分を襲った。



 そう思ったが後の祭りだった。


 空から雷が降ってきても隕石が頭上に落っこちてきても死なない気がする。

 健康とか頑丈とか…もはや、そんなレベルではない気がする。


 竜神と伝説の魔法使いが交わるとこんなに、なるのかっ!?


 そう思った。

 やばい…もう僕、人間(ひと)じゃないかも…。

 自分は何か禁忌に触れたのではなかろうか?


 そう思って自分が、とてつもなく恐ろしくなった。

 ギエンティナルという半身を得ていたとしても、まるで、この世界から逸脱してしまったような不安定で…押しつぶされそうな狂気じみた感情。


 そう、それは『()()』だった。


 混じりあう感触。

 竜の記憶。

 孤独の時。

 一瞬に襲ってきた全てに僕は過呼吸に陥り、それに呼応するギエンティナルも苦しそうだった。


 そんな瞬間だった。


 母の…自分を生んでくれた母が、()()()()()()()()()()、唐突に月の石を使って僕に呼びかけてきたのは…。


『もしもし~!』

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