81.その後、母は…。
『と、いう訳なのよ~』と、母ルミアーナは、”月の石”を使い夫であるダルタス公爵(将軍)に事の成り行きを告げた。
『そうか!でかした!ジーンめ、やるな!最初っからそれを狙っての事か?』
『まさか!たまたまよ!』
『どっちでもいい!外に嫁に出すより(義弟である)ティムンなら余程、安心できる。あいつならリミアを安心して任せられる。と、言うかあいつ以外を認める気なんぞ元よりないわ!』
『ま…まぁ、貴方もそう思っているのなら問題ない…わね!』ルミアーナは確認するように念をおした。
『おう!めでたいな』ダルタスは本当に嬉しそうに、そう言った。
『え?え?え?そ、そんなもん?何かこう父親って娘が他所の男に持ってかれるのを悔しがったり寂しがったりするもんじゃないの?』ルミアーナはこの夫の言葉に驚きを隠せなかった。
普通は、父親って相手がどこの誰だろうと娘はやらん!とか、そこまでいかなくっても娘を奪われたような気になってしょんぼりしたりとかするもんじゃないのか?
そうルミアーナは思っていたのだ。
『は?何言ってんだ。ティムンは他所の男じゃない。俺達の義弟だろうが!』
『や…うん。まぁ、おっしゃる通り』
『どっちも家族なんて最高だなっ!めでたいっ!』
そんな、あっけらかんとした夫ダルタスの言葉にルミアーナは呆気に取られながらも…まぁ良かったわ…と思った。
そう言えば自分とダルタスの結婚も、元々ダルタスを崇拝していた自分の父が見合いを画策してくっつけた位だし。
勝手な言い分で国王陛下に結婚を反対された時も私達の駆け落ちを大いに喜んでいたようだった。
ふむ…心から認めた相手には、そういう事もあるのか?寧ろ、そういうものなのか?いや、この二人だけなのか?まぁ、どっちでもいい。
どうやら父と夫は、似たタイプだったようである。
そんな事をぼんやりと思うルミアーナだった。
もう、とにかくリミアの事はティムンを信じて全面的に任せよう。うん。そうしよう!
そう割りきったのだった。
(いわゆる丸投げ状態なのだが、これはティムンがそれほどに信頼されているという事であり、決してリミアの事を適当に思っている訳ではない!ないったらないのデアル!)
そして、むしろこれから心配なのは双子の片割れ、ジーンの方か?とルミアーナは思っていた。
はじまりの国ラフィリルを創りだした始祖である魔法使い七人のうちの一人、一番魔力の強かったデュローイの生まれ変わりであるジーンの行く末がどうなるのか、ルミアーナには見当もつかなかった。
ま、成るように成る!
しかし…どこまで行ったんだか、ジーンはまだ竜とどこかに行ったきり帰ってこない。
まぁ、自分が、どっかに行っててくれとこの会場から追いだした訳なのだが…。
そして何の心配もいらなそうな夫との通信を早々に終えると、ルミアーナはひとつため息をつくとおもむろに自分の月の石を手にした。
「はぁ~…まぁ、とにかく連絡とってみるか」ルミアーナは、月の石に念を込めてジーンに、呼びかけた。
『もしもし~!』
緊張感のかけらもない、母ルミアーナであった。




