59.リミィのため息
リーチェ先生について調べてみた。
…と言っても、殆どがフィリアからの情報とあとは、双子の弟が掻き集めてきた情報だ。
本当に優秀な弟と友達がいてくれて良かった。
ジルに至っては本当に、いつの間にかと思うのだが、シャイで人見知りなところも克服したようで以前よりすごく頼もしい!
双子とはいえ私の方が姉な訳でラフィリルでいた頃は私の方がしっかりしていると思っていたのだけれど今や何か頭が上がらない感じだ。
まるでジルの方がお兄ちゃんのようである!
まぁ、それはともかく!
まず、リーチェ先生は、このタイターナ公国の伯爵令嬢で二十歳。
教育熱心だけど優しくて皆のお姉様的な先生だ。
見目も麗しく生徒達の評判も悪くない。
タイターナ人特有の緑の髪も緑の瞳も優し気で森の妖精を思わせるような印象だ。
ただし、特別クラスの生徒達からは、あまり印象がよくない。
これは、ティムン先生としゃべりたい生徒たちから、休み時間ごとに訪れるリーチェ先生が、邪魔だと感じられているかららしい。
相変わらず、ティムン兄様は、人たらしだ!
男も女も関係なく、皆がティムン兄様に惹かれていく!
優しくて、誠実で美しくて、しかも強い兄様!
そんな兄様だからこれは仕方のない事だけれど、よりによって担任の先生が恋敵だなんて!
しかも、取り立てて嫌なところも見つからない!
普通に良い人なのである。
もちろん、休み時間のたびに兄様の所へ行くのは宜しくないとは思うが、舞踏会へのパートナーのお誘いなのだ。
引き受けてくれるまで何度も足を運ぶのもわからなくもない…。
だってパートナーは必要なのだし、兄様にしても誰かとは行かなくてはならない。
例えリーチェ先生を断っても学園長の顔を立てる為にも他の誰かを誘って舞踏会には出席せざるをえないだろう。
あのティムン兄様が、自分以外の誰を誘うのか。
考えたくもないが自分はまだ七歳…。
社交界デビューの年は十四歳…。
舞踏会に行くにはまだ九年は待ってもらわないとダメなのだ。
兄様の方から誰かを誘うなんて…それくらいなら、まだ、一度はやんわりでも断ったリーチェ先生の申し出を渋々受けてくれる方がましな気すらする。
ティムン兄様が、これから先、自分が大人になる前に誰かに恋してしまったら、その時自分はどうなるのだろう?
婚約破棄?
嫌だ!そんなの絶対に嫌!
でも…でも自分のせいで兄様が不幸になるのはもっと嫌!
ティムン兄様に私以外に愛する人が出来た時…私はどうするの?
私が社交界デビュー出来るまでですら、あと九年もあるというのに…。
私以外の誰かとティムン兄様が出会い、恋に落ちないと一体、誰が言えるだろう…?
そんな事、ティムン兄様本人にすらわからない事だろう。
そして考えれば考えるほどに、自分から離れて行く未来しか思い浮かばなくなっていく。
私はティムン兄様の為に…兄様の幸せの為に…兄様から離れる事が…そんな事が出来るのだろうか?
当たり前のように受け入れてきた私の幸せを手放す事が…許嫁の解消をする事ができるのだろうか…。
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▼作者からの一言▼
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