57.リーチェ先生の思惑
リーチェ・レボルグアは、まだ二十歳と言う若さながらも初等部、一年二組を担任として受け持つことになり、そんな重責を…と、入学式を憂鬱な気持ちで迎えたが、そんな気持ちは、入学式翌日の新任教師の挨拶の時に掻き消えた。
それは、夢のような出会いからである。
新しく新任教師として入ってきたティムン・アークフィル教諭が素敵すぎるのである!
オレンジの髪は珍しく美しく、金の瞳は神秘的でうっとりとする!
整った顔立ちにすらりと伸びた手足も申し分なく無敵なほどにカッコいい!
しかも人を見る目の厳しい学園長が、副担任とはいえ、いきなり特別クラスの担当にまわすほどの有望株だ!
学園を卒業したてとは聞くが相当、優秀な筈である!
何より見目麗しく物腰柔らかで、口調も優しく申し分ない紳士だった!
聞けば、あの始まりの国ラフィリルの公爵家嫡男だとか!
身分的にも申し分ない!
現在、恋人募集中の彼女としては見すごせない優良物件なのであ~る!
リーチェ・レボルグアはタイターナ公国の伯爵令嬢だ。
タイターナでは女性でも望めば役職につく事もできる。
数は少ないが、ラフィリルと同じように女性が騎士になったり教師や官僚になったりすることも可能なのである。
そんな中、リーチェも子供好きで本が好きだった事から教師になったのだが、実際に去年一昨年と副担任としてクラスを受け持った時に子供たちには少し幻滅していた。
子供と言うのは可愛いばかりではないのである!
生意気なのもいれば意地の悪い者もいる!
この学園は、魔獣や飛龍という大型で危険な生物を飼っていたり、周りの山には、野生の魔獣がうようよいたりと特殊な環境であるが故に、子供の我儘をそのまま許しはしない。
直ちに矯正できないような者はどんどん切って捨てる!
それは、この学園での安全を守る為である。
少数の愚か者のせいで学園が危険に晒される結果にもなりうるからだ。
そんな厳しい環境だからこそより優秀な生徒たちが育つとも言えるが正直、リーチェには荷が重かった。
新入生達は一年も経つと半分の数になり卒業するころには三分の一ぐらいの数になっていることもあるくらいなのだ。
広い教室に少ない生徒…どうしても殺伐とした雰囲気になってしまうのである。
もっと穏やかで普通の学園に就職したかったと後悔していた。
こんな人外魔境のような学園に配属されるとは晴天の霹靂だった。
あたら身分の高い子供達ばかりが残っていくのも、相手にするのがリーチェには荷が重くてしんどかった。
…癒しがない…。
泣きたい…。
そんな風に感じていた最中だったのだ。
まるで物語の王子様も敵わないのではないだろうかというほどに素敵な新任教師の登場!(年下だけど!)
そして、受け持ったクラスのあの可愛らしい双子ちゃん!
見ているだけでも癒しになるような可愛らしさ!
そしてそして、運よく最初の剣術の授業で担当の先生が研修に出てたおかげで、ティムン先生の授業をうちのクラスが受けられる事になった!
そこで奇跡を見たのである!
彼の授業は、みるみる生徒たちの心を引きつけ心から楽しそうに頑張らせてくれた!
そして、まだどこかよそよそしかった双子ちゃん達と他の生徒たちの距離が一気に縮まり、今は双子ちゃん達を中心に実に仲の良い雰囲気の良いクラスになった!
正直、あのちょっと乱暴で我儘なコルトムや一匹狼っぽいカラムには要注意と思っていたのだけれど双子ちゃん達と仲良くなった影響なのか、浮く事もなく実にクラスになじんでいる。
この学園に来て二年半、こんなに穏やかなクラスは初めてである。
もしかしたら、このクラスならば全員辞めずに卒業させてあげる事ができるかも!等と淡い希望を抱く事ができた。
あの天使のような双子ちゃんと神のごときティムン先生の御利益だ!
そんな事を考えていた。
そして、あわよくば生徒の事で相談など持ちかけてティムン先生とも是非仲良くなりたい!そんな風に思うリーチェだった。
素敵な恋人と可愛い生徒たち!
もう、夢のようである。
そんな夢見るリーチェは知らない。
自分の可愛い生徒がそのティムン先生の許嫁だなどと言う事は…。
リーチェは実家のレボルグア伯爵家のつてを使いティムン・アークフィルの事を調べるのだった。
それは、もちろん自分の恋人候補としてである!
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