49.特別クラスの教師
ジルとリミィは、その時まだ気づいていなかった。
目立つまいとクラス編成の為のテストで手抜きし普通クラスに入った事で後々、後悔することになろうとは…。
その日、学園長室には、今年新卒で入った新米教師が挨拶に来ていた。
本当は入学式の一週間前には、着くはずだった船が嵐の為、遅れに遅れた為に入学式翌日の今日になってしまったのだ。
港から休みなく着いたばかりの新任教師に学園長は気遣い、勤務は明日からで良いと伝えていた。
「じゃ、明日から特別クラスの副担任という事でお願いしますね?」
学園長が微笑みかけるその先にはオレンジ色の髪色と蜂蜜色の瞳の美しい若者ティムン・アークフィルがいた。
「お気遣い、ありがとうございます」
このティムン・アークフィルという若者は、今年ラフィリルの高等部を首席で卒業した有望株である。
彼はラフィリル王国騎士団や王室からもお誘いがあったほど優秀な人材で、そんな彼がタイターナのライリー学園の教師として来てくれる事になるなど学園長にとっては今年一番の吉事だった。
ラフィリルの公爵家跡取りの彼は、いずれは国元に帰ると言う期限付きではあるものの現公爵もまだ若く最低でも五年は努めてくれる契約になっている。
そしてティムンは、学園長から受け取ったクラス名簿をみて、『あれっ?』という顔をした。
「どうかしましたか?」学園長はティムン教諭が怪訝な顔をしたことに何か問題でもあったかと不思議に思った。
「いえ…別に。では、今日は、お言葉に甘えて、僕が副担任させてもらうクラスの担任の先生や生徒たちに軽く挨拶だけして職員寮の方に下がらせてもらいます」
「ええ、今日はまだ、授業も午前中だけですし、それで問題ありませんよ。疲れたでしょう?ゆっくり休んでくださいね」
ティムンは副担任とはいえ自分の受け持つクラスが特別クラスだと言われて、可愛い甥っ子と許嫁がいる筈と密かに喜んでいたのにクラス名簿には、ジル(ジーン)とリミィ(リミア)の名前がない事にがっかりしていた。
そう、ティムン・アークフィルは、可愛い甥っ子姪っ子には内緒で彼らのいる学園へ教師として就職を希望し、やってきたのである。
(あいつらめ、クラス編成の試験、わざと手を抜いたな?)
顔を合わせたらまずは、お説教だなと溜息をつきながら、特別クラスに足を運んだ。
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