48.クラス編成
すっかり新入生歓迎パーティで目立ちまくってしまったジルやリミィ、フィリアは新入生でありながら、この三人の事を知らない者はもはや学園内では殆どいないという大変、不本意な状況になっていた。
「う~ん…馬鹿ぼっちゃまのせいで、とんだ悪目立ちをしちゃったなぁ…」
ジルはため息をつきながらぼやいた。
「ほんとよね~、いい迷惑だわ!これ以上目立たないようにしましょうね!」とリミィも相槌をうつ。
「何か、もう、ほんとにごめんなさい…」
フィリアが申し訳なさそうに謝る。
「「いや、フィリアのせいじゃないし!」」
こういう時の双子はセリフが被りまくりである。
くすくすと笑い合いながら三人は入学式に向かった。
新入生達は講堂入り口に集まり二列に並ぶと、順番に中へと入って行った。
昨日、学園長からのお話がすでに長々とあったということもあり、今日の挨拶は早々に済まされ入学式は入学証書を受け取り早々に終えた。
そしてその後は、毎年恒例の体力測定と知力テストと魔力検査である。
まずは、基礎魔力検査!
これは平たい魔石に手をかざし魔法を行うために仕える基礎的な魔力を測る検査である。
これによってクラスをより分けられる。
行える魔法レベルが変わってくるのである。
平均値が七十に対してフィリアは百二十という数値が出た。
平均よりずば抜けて高い基礎魔力に教師も目をみはり、早々にフィリアは特別クラスに決まった。
特別クラスとは、もともと優秀な人材を集められたこの学園にあって更に優秀な人材の集まりである。
魔力、知力、体力の特にずば抜けた人材を子のクラスに集め、国の中枢を担うエリートを育成する事を目的とした言わばエリートクラスである。
ちなみにジルとリミィの魔力測定は二人とも五十そこそこで平均より低いものだった。
体力測定も、平均、知力テストも平均といった感じである。
ただし、ジルもリミィも七歳での早期入学であり皆より三歳も年下なので、それでもすごい事だと周りは感嘆し褒めそやした。
フィリア以外は!
「ズルしたわねっ!」
「「は?」」
「皆は騙せても私はダメよ!魔力測定はともかく知力テストでジルが、平均点程度なんてあり得ないっっ!」
船の上で、海鳥の生態から、この国タイターナの歴史や名所、そんな雑学まで学者かと思うくらいの知識をみせつけておいて、この学園のたかが初等部の知力テストなどジルなら片手間でも満点以外考えられないとフィリアは確信していた。
「「ああ、それね」」
ジルもリミィも当たり前のように答える。
「ごめん、あんまり目立ちたくなくて~、それでなくともダンのせいで目立っちゃったし」
「そうそう!私達、別に勉強しにこの学園に来た訳じゃないし」
ちなみに基礎魔力が平均点以下なのはリンやジンに封印されているせいである。
それでも五十も測定できるのは封印しても少しばかりは漏れ出てしまうせいらしいから、実際に測れば計り知れない。
(何といってもこの世界を創った魔法使い達の生まれ変わりなのだから)
「学園に何しに来たのよ!ずるいわ!私、特別クラスになっちゃったのに!」
「「フィリアは、勉強に来た訳だし、頑張って!応援するし!」」
正直、勉強だけならジルもリミィも学園になど通う必要はない。
学園生活がおくりたかったのだ!
「同じクラスになりたかったのに!」フィリアは、口をとがらせた。
「いや、僕らもフィリアの魔力がそんなに高いとは予想外だったし」
「そうよね」とリミィも頷く。
「むしろ、フィリアと、一緒のクラスになりたくてわざと平均点に合わせようと…あっ…ごめん!あははっ…フィリアってものすごく優秀だったのね…」
「んまぁっ!…って!じゃあ、ジルだけじゃなくてリミィまでテストの手を抜いたのね?」
「あ、あ~、うん、ごめんなさい」
「フィリア、ごめん。でも僕たち真面目にテスト受けたら、学校辞めなくちゃいけなくなるかも」
「えっ!」
「いや、学園に来る必要ないとか言われそうっていうか…。さすがにダンみたいに退学って言う訳にはならないだろうけど、入学前にこの学院の全学年のテスト問題を腕試しにって母様にやらされたんだけどね…」
「ええっ?まさか」
「僕もリミィも満点だったんだよね~」ジルは眉尻を下げて申し訳なさそうにそう言うと
「あはっ」と、リミィも誤魔化すように笑う。
「えっっ?何言ってるの?そんな事ある筈っ…」と言いながらも、フィリアは、船の上でのジルの博識ぶりを思えばそれもあり得るかと思い言葉をつまらせた。
「しかも、リミィもだなんて…」
賢いとは思っていたけどそこまでだなんて、特別クラスになった自分の方が置いてけぼりにされた気分で寂しく思うフィリアだった。
「そりゃあ、私達のお勉強は主にお母様が二人同時にみてましたから…」とリミィが苦笑いしながら言った。
「私は、さすがに、この国の歴史とか海鳥の生態とかまでは知らなかったけど」とリミィが謙遜?するが、そんなもの知らなくても当たり前である!
「それにしたって!あなた達のお母様って何?カリスマ家庭教師ですかっ!」
((イイエ~、ツキノイシノアルジデス~メガミトカイワレテマス~!スゴイヒトナンデス~))とは、思っても言えなくて目が泳ぎつつも黙秘するジルとリミィである。
不納得なフィリアではあったが幸い、ジルとリミィは、たまたまだが、特別クラスの隣のクラスになることが出来た。
昼休みには、毎日、一緒にランチする約束で渋々納得するフィリアだった。
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