44.新入生歓迎パーティの茶番劇06魔物の傷
「なっ!あっ!お、お前、あの傷はっ!?」ダンが倒れた体を起こし尚も、そう言うとフィリアは、何でもない事のように答えた。
「ああ、頬の傷ですか?そんなもの、すっかり治りましたわよ?それが、何か?」
「なんだと!じ!じゃあ、何で僕に言わない!そしたら僕だって…!一緒にいてやっても良かったんだ!」
この恥知らずな言葉にフィリアもだが、周りもドン引きである。
「何でそんな事、貴方に言わないといけないのですか?」
そんな問答をしていると学園長が声を発した。
名実ともに、この場で一番の発言力を持つお方である。
しばらく様子を見ていたものの、いっこうに収集が着きそうにない事に、見かねて口を挟んだのである。
パンパンっと手を叩き皆がその音に振り返る。
「皆、静粛ににっ!」
「これは、どういう事ですか?リハルト・ホーミット!」
「はい、学園長、私事でお騒がせし申し訳ございませんでした」
「私事?とは?」学園長は鋭い眼差しをリハルトやジルに向けた。
そして、リハルト、フィリア、ダン、ジルの四人が別室に呼ばれ、かくかくしかじかと説明をさせられた。
一人パーティ会場に取り残されたリミィは腹立たしい気もしたが、会場に広がる憶測をつぶしまくっていた。
フィリアを貶めるような戯れ言を放置する訳にはいかない!
「まぁ、それでは、あの騒いでいた男子が、あの綺麗な女の子を振ったのじゃなくて、振られた腹いせに酷い事をしていたという事?」レーティアが尋ねるとリミィは元気よく答えた。
「そうですわ!フィリアはあんなに美しくて優しいのに、ブスって言ったり、嘘を教えてリハルト様とフィリアの婚約を邪魔したりそれは酷くて!」とハンカチで目元を押さえつつ涙目で訴える!
「「「「まぁっ」」」」
「「それは、ひどいな」」
「うん、女の子に何て事を言うんだ」
「「そうだよな」」
「「「ほんとよね」」」
周りの反応も殆どがリミィの言葉に共感するものだった。
後に、ジルが皮肉っぽく言ったものである。
『あいつは馬鹿だが馬鹿なりの良い働きをしたよね~』と。
リミィは、ひたすらフィリアがダンに辛くあたられた事を周りに訴えた!
「私の弟のジルは、あんなのとの意に染まぬ婚約を解消させてあげたくて婚約を申し入れしたのですわ!」
「あら、それではまだ婚約を申し入れただけで正式に婚約した訳では?」
「あら?あれれ?え~と、そう言えば、そうですわね!」
リミィもうっかりしていたが、そう突っ込んで言われてみれば、両家に話がいっていると言うだけで婚約式をすませた訳ではない。
まぁ、ジルは分かっていてリハルトを煽っていた訳だが…。
「まぁ、あのダンという子は人騒がせねぇ」レーティア皇女がそう言うと周りも呆れた様に頷いた。
「「「本当にね~」」」
概ね周りの者達はリミィの言葉を信じ、耳を傾けた。
一部、リハルトファンの女子達を除いては…。
しかし、ダンの言う魔物の傷など見当たらなかった!
あるのは、陶器のようにすべらかな美しい肌だけである!
何より、当のリハルトがフィリアを全身全霊で庇っていいるのだから、ぐうの音も出なかった。
最初に騒ぎ出したドリッサなどは、周りに冷ややかな目で見られている。
「わっ!私は…リハルト様の弟君が、そう言ったから…そ、それに魔物に傷を負わされたのが本当ならゆゆしき事ではないの…」と言いながらも、その声は次第に小さくなり、周りの呆れた眼差しに下を向いて端っこの方に身を寄せるのだった。
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