42.新入生歓迎パーティの茶番劇04フィリアとサクア公子
この国の公子サクアは、リミィの手を引き、こんな可愛らしい女の子をエスコート出来た事を内心喜んでいた。
サクア公子は、暗緑色の髪に黒に近い深緑色の瞳をしたどちらかというと逞しい感じの美丈夫だった。
この国、タイターナの人々は緑系の髪色や瞳の色が多い。
肌はジャニカやラフィリルの人々と比べると浅黒く、小麦色と言う感じである。
とは、言っても女性はそれなりに日焼けに気を付けているのか、健康的な肌くらいの色合いが多かった。
そんな中、ジャニカやラフィリル出身の者から見るとリミィのその肌は、まるで雪のように白く清らかに見えたのである。
リミィの場合、これで本来の蜂蜜色の髪色と琥珀の瞳、透けるような素肌を晒していたならば、それこそ周りの目を集めすぎて”月の石の主”の娘とは、ばれなくても大騒ぎになるのは明らかだった。
本来の色が黒髪で深い紺色の瞳のジルも、そんなリミィと立ち並ぶとまるで闇夜と月のような対比で幻想的な二人だった。
だからこそ、この世界で一般的に一番多い茶色の色合いを選んだのだが、魔法で変えたのは、その色合いのみで姿形はもとのままなので、いくばくかは目立たなくなったものの、やっぱり綺麗すぎるのだった。
とは言え、サクア公子は現在十四歳でリミィより七つも歳上である。
純粋に可愛い子だな、こんな妹が欲しかったなぁと思っていた。
「まだ七歳なんだって?君達双子の事はすでに噂になっていたよ」踊りながらサクア公子がそう言うとリミィはぎょっとした。
「噂?」
「ああ、悪い噂じゃないよ?今年七歳で早期入学してくる双子がいるって評判になっていたんだよ」
「あ、ああ、そういう噂ですの…」
よ、よかった私達の素性がバレた訳じゃなかった…と胸をなでおろすリミィにサクア公子が微笑ましそうな笑顔をむける。
「どうしたの?」
「いいえ、悪い噂じゃなくて良かったですわ」
「まさか、君たちみたいに綺麗で可愛い子達に悪い噂なんて!とにかく優秀なんだろうって噂だったよ。まさかこんなに綺麗な子達だとは思わなかったけど」
「褒めて頂いて、ありがとうございます。でも、それで言うなら一緒にいたフィリアの方が綺麗ですわ」
「うん?ああ、確かにあの子も綺麗な子だね。でも君の方が可愛いよ」
そんな風に素直に言葉をつづるサクア公子は、本気でそう思っているようだった。
歯の浮きそうな事を言っていると思われるだろうが、どちらかと言うと武骨な感じのするサクア公子は思う事を真っ正直に言っているという様子だった。
不覚にも少しだけドキッとしてしまうリミィである。
流石に、こんなに真正面から可愛いと言われて悪い気はしない。
(はっ!いけませんわ!私にはティムン兄様という許嫁がっっ!)と気を引きしめ直すリミィだった。
そして、そんな様子のリミィに、サクア公子は目を瞬かせた。
少しだけ顔を赤らめて首をふる仕草も可愛らしくサクア公子の胸をズキュンと貫いた。
(ぐはぁっ!何だなんだ!この可愛らしさはっっ!)
(普通に可愛いなんてモノではないぞっっ!一緒にいた友人の方が綺麗だなどと!そういえば今まで自分の周りには、それほどでも無いくせに自分の方が綺麗だと競い合うような勘違いな女子ばかりだった)と思い返した。
姿形だけでなく中身まで可愛らしいのだとリミィという存在に感動した。
そして、そんなリミィの友人ならば、あのフィリアという美しい少女もきっと心根の優しい娘なのだろうと思った。
この国でも”類は友を呼ぶ”という言葉があったのである。
そんな事を考えながら踊っていたら楽しいダンスの時間はあっという間に終わってしまった。
そして足を止めたサクア公子とリミィは、周りのただならぬ様子に気づいた。
まるで、断罪でも行われそうなそんな周りの雰囲気に…。
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