38.新入生歓迎パーティの茶番劇01入学式の前に
※続きが気になる方は、アルファポリスさんでも先行投稿しておりますので、どうぞご覧ください。
ライリー学園、新入生歓迎パーティ当日。
ライリー学園では新入生の歓迎パーティを入学式の前に行うのだ。
大人の社交界をまねて着飾り、上級生下級生また身分を問わず交流を深めるのである。
現在の学園は基本的にこの学園にいる間は身分差を問わないと言うのが最低限のルールではあるが、この学園は基本、全寮制であり貴族の生徒しかいない。
これは、別段貴族以外を差別している訳ではない。
貴族しかいない理由はこの学園への入学資格が最低限、読み書き簡単な演算が出来る事だからだ。
庶民も教会で学べるラフィリルならともかく、ラフィリル以外の国々はまだまだ庶民が読み書きできるレベルではなかった。
また最高水準の教育と設備を誇るライリー学園は全寮制で学費が高額なため庶民には到底通えないのが現状だ。
平民も通える学校もあるが、それでは学びの基礎が出来ているジルやリミィが通う学力レベルが低すぎるのである。
ジルとリミィは異世界の知識を持つ母から、読み書き、そろばんに至るまでみっちり三歳の頃からしこまれた。
二人とも今や六桁までの計算なら暗算で出来てしまう。
そろばんを使えば、果てしなく計算し続けるのだ。
数学だけでいえば、この世界では学者レベルと言っても過言ではない。
ジルに至っては、前世の魔法使いだった頃の記憶まである訳なのだから魔法すら学ぶ必要がないくらいである。
そんな中にあって、この国の魔獣の授業だけは唯一、ジルの興味を引くものだった。
ちなみに、この国では、男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵、大公の順に位が高くなる。
子爵家や男爵家の者が公爵家や大公家の者と共に学んだり口を聞く機会があるなど、この学園にいるうちだけである。
それ故、この学園での人脈は何ものにも代え難い。
極端な話、学園にいる間に高位貴族に認められれば、卒業してからも懇意にしてもらえるかもしれないのである。
また高位貴族からみてもこの学園に入り、この学園を無事に卒業できるレベルの人間であれば、仕事または人生のパートナーを選ぶ上でも最低限の問題はクリアしていると言っても過言ではなく、他国の高位貴族や王族などもこの学園をあえて入学先に選ぶことが多い。
そして学園長からのお言葉からパーティは、始まった。
眼鏡をかけた、ちょっとふっくらした学園長は一見、優しい感じの四十代くらいの女性だった。
「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。皆さん既にご存じのように、この学院には、この国の公子や他国の王子王女様方もいらっしゃいます。ですが皆さん、この学園内では基本的に皆が平等です。無論、平等と無作法は別の物です。お互いを敬いお互いに礼節を持ち接すれば、相手が王族や大公家であろうとも等しく机を並べ学び、共により良い将来を築くことが出来ます!出来る筈なのです!さぁ、入学式を前に今日は、楽しい時間をすごしましょう!」
平等と言いつつ、つまり誰に対しても失礼のないようにしなさいねと釘をさしたお言葉が終わると、楽団の音楽が始まり、上級生達が新入生達の手を引きダンスに誘う。
まだ十歳の新入生たちは幼く可愛らしく高等部の生徒たちも微笑ましそうに手を差し出しダンスに誘い、フロアへと誘導する。
そんな中、特に目立つ新入生達がいた。
明らかに一番幼いであろう紅茶色の髪と瞳の双子と黒髪に黒曜石の瞳をもつ美少女である。
その三人のたたずまいは、何か凛として高貴な空気が漂っていた。
上級生の皆が気後れする中、生徒会長でこの国の公子サクアが歩み寄り、名を告げ、リミィの手を取った。
リミィは淑女の礼をとり一緒にフロアへ…。
そしてジルには、ジャニカから留学中の皇女ルーティアが歩み寄り手を引き、フィリアの元には、リハルトが側に来た。
リハルトがフィリアの手を取りフィリアはうっすらと頬を染めリハルトもそのフィリアの愛らしさにうっすらと赤らむ。
さすがにジルも、この場ではリハルトの邪魔は躊躇われた。
恥じらい合う二人の、その様子にジルとリミィは内心(あ~、はいはい)と、思った。
(何コレ、僕ら(私達)双子がお邪魔虫だな…こりゃ)…と。




