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学園に着いて

 馬車を降りた五人はまずライリー学園の事務室に立ち寄った。

 正門から学園の建物までは二キロほどの距離があり、敷地内は高い城壁で囲まれていた。


 がっしりとした大きな石造りの学舎は、優美さや繊細さには欠ける建物だが、夕焼けに染まり、緑に囲まれ美しかった。

 ジャニカや、ラフィリルとも違う、建築様式である。

 その頑丈そうな造りは、まるで要塞を思わせた。


 案内役のリハルトはまず、新入生である四人を事務所に連れて行った。

 馬車の中での事はともかく自分は上級生であり案内役なのである。

 リハルトはその勤めを誠実にこなしていた。

 さんざん、煽ったジルにも親切丁寧に接している。


 そんな様子をジルとリミィは黙ってみていた。

((うん…まぁ…さすがフィリアが慕っているだけはある?かな…))

 そんな事を思っていた。

 まぁ、それでも、それくらいで、じゃあどうぞとフィリアを返す訳にはいかないが。


 ジルとリミィは早期入学者名簿の到着欄にサインをしフィリアとダンも入学者名簿にサインをした。


 事務員の女性が、この子供たちの容姿の美しさに一瞬、驚いたが平静を装い四人それぞれに書類を渡し、簡単な説明をする。


「ようこそライリー学園へ!あなた達が今年の入学者の最後の生徒です。他の入学者はもう既に手続きをすませて寮の方に到着していますよ。今日は寮でゆっくり休んで明日の新入生歓迎会に備えてください」


「ここから寮までは遠いのですか?」ジルがにっこりと微笑みながら尋ねると事務委員のお姉さんは優しい笑顔で答えてくれた。


「いいえ、基本的に寮はこの学校の敷地内にありますから徒歩で十分ほどでつきますよ。今日はこのまま港から乗ってきた送迎馬車で向かって頂ければ三分ほどで着きますよ。リハルトさんは寮長さんなので色々、教えてもらってくださいね」


「「えっ?寮長?」」ジルとリミィはリハルトを振り返った。


「確か、寮長って学年トップの成績優秀者がなるって伺ってますけど…」とリミィが言った。

 この学園は実力主義で有名なのでリハルトが本当に優秀なことがうかがえた。


「ふふん、兄上は優秀なんだぞ、ちょっと人より早く入学しただけのお前らとは訳が違うんだからな」と懲りないダンが、偉ぶった。


「ダン、お前はちょっと黙ってなさい。まぁ、そうだけど僕なんてまだまだだよ…。卒業された先輩方の中には僕などより優秀な先輩方が沢山いたからね」とリハルトはバツが悪そうにそう言った。


「「でも、すごいですわ」」とリミィとフィリアが口をそろえて言った。


(ふぅん、人柄や優秀さは申し分ないのに…フィリアの事といい、この人に足りないのは”自信”てことか…謙虚と言えば美徳ともとれるけど…微妙なとこだなぁ)とジルは思った。



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