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フィリアの婚約破棄-12 リハルトの出迎え

 ジルたちがタイターナ公国のライリー学園に着くのは、船から降りてから半日以上も馬車にゆられてからの事となる。


 港から学園までは学園から迎えの馬車が来ていて、ここで従者とは別れるのだ。


 迎えの馬車が目前に止まり、フィリアとダンはハンスと別れを惜しんでいた。


「ハンス、これまで色々ありがとう。元気でね」


「ありがとうございます。フィリアお嬢様もお元気で!婚約破棄の事は既にホーミット家にもポーネット家にも伝書海鳥を使いお知らせし、了解も得ておりますので、お嬢様はご自分のお気持ちに正直になさってくださいませ!」


「何だって?ハンスおまえ勝手なことを!」ダンがハンスに突っ込んだ。


「本当に何から何までありがとうハンス」ダンの事などスルーしてフィリアはハンスにお礼を言う。


「おいこら!無視するな!」しつこいダンにハンスが眉根をよせる。


「何ですか?坊ちゃま、ダン坊ちゃまはフィリアお嬢様などいらないとおっしゃったではありませんか?」


「それはそうだけど!」


「そうよね?それに、私の事を化け物だとか傷物だとか言っていたものね?」とフィリアはにっこりと笑顔で言った。


「そうそう、それに、お兄さんがいらなくなった婚約をおしつけられたみたいに言ってましたわよね?」とリミィが横から口を出した。


「な、本当の事を言って何が悪い!」リミィにそう言うとダンはフィリアに振り返ってまた心無い言葉を発した。


「お前なんか兄様にも見限られたくせに!」とダンがフィリアに向かって言うと迎えの馬車から降りてきた上級生らしき生徒が、怒りの声を上げた。


「なんだとっ!」


 その声に驚き一斉に、ダンもフィリアも双子達もその声のする方に振り向いた。


「に、兄様!?」


「「えっっ!」」まさかの真打登場に双子も目を瞠った。


「に、兄様がどうして?」


「学院から新入生の送迎役でジャニカ皇国からの担当になって迎えにきたんだ!だが、ダン!今の言葉は一体どういう事だっ!」


「なっ!何ですか久しぶりに会ったと思ったらいきなり弟を怒鳴りつけるなんて!言っておきますけど僕とフィリアの婚約破棄はフィリアが言いだしたんですからねっ!」


「婚約破棄だって!?」リハルトは心底驚いた。

 ダンとフィリアの婚約はお互いが望んでいたからなり得た事だった筈なのにと。


「一体、お前は何をして…」

 どうせ愚かな弟が何かしでかしたのだろう!先程の暴言と言い、あり得ない所業だと言わんばかりにリハルトは弟を睨んだ。


「まぁまぁ、リハルト様、落ち着いて下さいませ。フィリアお嬢様もリハルト様の剣幕に驚いてらっしゃいますよ」ハンスの冷静な言葉にリハルトははっとしてフィリアを振り返った。


「あ、ああ、す、すまない…その…フィリア、久しぶりだね。元気だったかい?」


「ええ、リハルト様こそ…」


「うん、僕は元気だよ。ところで君から婚約破棄なんて、一体何があったんだい?君はダンの事が好きだった訳ではなかったのかい?」


「は?私がダンを?ああ、幼馴染でしたもの嫌いではありませんでしたし、以前は仲も悪くは無かったと思いますが…」


「え?…と、言うと今は?」


「今は、解消をおねがいしてますわ。それより、もう出発しないと時間が…確か、寮にはは門限があったのではございませんか?私達以外にも新入生の方々はいますのに私達のせいで遅れてしまっては…」


「あ、ああ。本当はハンスに色々、尋ねたいのだが…」


 船の汽笛が鳴った。

 帰りの船の出向五分前を知らせる汽笛である。


「リハルト様、私もお名残り惜しいですが、船の時間もございます。詳しくはフィリアお嬢様やパリュム家のジル様、リミィ様にお聞きして下さいませ。ちなみに婚約解消はすでに両家で了承済みですので取り消しにはならないでしょう」


「何だって!もう親達は納得しているっていうのか?一体…」


 荷物も船に乗せたままのハンスはそわそわしながら船を振り返る。

 本当はこれまでのダンの馬鹿っぷりをリハルトに自分の口から報告したいところだが、船がもう出てしまうと気もそぞろである。


「いいわ、ハンス、もう船に戻って頂戴。私からお話いたします。ホーミットのおじ様おば様には娘になることが出来なくてごめんなさいと謝っておいてね?」


「畏まりました。では、フィリアお嬢様、お元気で!ダン坊ちゃま、くれぐれも皆さまにこれ以上我儘を言ってはなりませんよ!」

 わかりましたね!

 続けてそう言ってハンスは、慌てて帰りの船に戻って行った。


 そして傍で黙って控えていたリンとシンも船に戻る為にその場を立ち去るフリをしてその場から離れた。(立ち去ったフリをして精霊の二人はジルやリミィの月の石に戻った訳だが…)


「さぁ、とにかくライリー学園に向かいましょう?今日は一旦学園の事務所で手続きだけしたらすぐに寮の方へ向かうのですよね?」


「あ、ああ、そうだよ。じゃあ、まず馬車に乗ってくれるかい?君たちも」とリハルトはジルとリミィにも声をかけた。


 そして七人乗りの送迎用の馬車にリハルトとフィリア、ダンと、ジル、リミィの五人は乗り込みライリー学園へと向かったのだった。

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