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109/112

109.ジル劇場は止まらない①

 そこには、キラキラと輝く世界が広がっていた。


 ジルがほんのちょっぴり手加減して放った炎は一瞬にして岩をも溶かし、その後に放った冷気によって爆発的な蒸気を噴出しながら巨大な筒状の空洞が広がっていた。


 その新たにできた空洞の岩肌は、全てがガラスと化し覆われていた。

 所々、蒸気の噴出した時に出来たであろう穴から地上の日の光が差し込み、まるでプリズムのようにガラスに反射し、虹色の光がキラキラと煌めき幻想的な光が漂っている。


 大地は一瞬地面が盛り上がったかと思えば少し凹み落ち着いた。


「うん、何だか分かってきたぞ」とジルは満足そうにうなずく。


 そして、ぽうっと()()()()()()灯りをその手の平の上に浮かべる。

 姉のリミィの言葉をふと思い出す。


「ジル!大丈夫よ!要は魔力(ちから)が、どの程度か理解して制御が完璧に出来るようになれば、すぐ帰ってくればいいんでしょ?ジルならすぐに習得しちゃうって!」


 確か、そんな事を言っていたなと苦笑いする。


 ジルは思った。

 こんなデタラメな魔力(ちから)、学園内で試さなくて本当に良かったと思う。

 でも、まだだ。

 まだ、自分の感情が大きく乱れた時にどうなるのか分からないし、しばらくこの辺境の地で修業して帰るか…と思った。


 そして精霊のシンが、ジルの指示通り()()使()()()()()()()彼女たちを保護し空中に浮いている。

 女性たちは、自分が神話の一部になったような感動に震えながらも、これが現実なのか夢なのかもわからず只々、目を見開き地上の様子を窺っていた。


 そんな中、震源地を目指してきたディオル達が、そこにたどり着き、空に浮かぶシンと女性たちを見て驚いた。


 シンは、不本意ながらジルの言いつけを守り、天使の振りをして背中に美しい羽根も魔法で演出している。


「あ!あれは?てっ…天使様っ?」魔人のルーブが、その姿に一番に気付き声をあげ、後に続くディオル達も空を見上げる。


「「「なんて、神々しい…」」」


 四人は、足を止め、空を見上げ、ぽかんと口を開けたまま呆けて只々、立ち尽くした。


 そしてシンは、地上の状態が落ち着いたことを確認し、自分を呆けた顔で見つめる騎士たちに気付きジルに念話を飛ばした。


『ジル様、先ほど、ジル様を保護しようとした者達のようですが、どうやらジル様を探してここまで来た様子です。しかし、この状況に驚いて固まっておりますが…』


 シンからの念話にジルが念話で答える。

『う~ん、いい人達みたいだから、彼女たちを託して良いと思う。きっと女性たちの事も保護してくれる』


『わかりました。ではこの者達はあの者達に託すことに致します。彼らにこの女子達を託した後は、石に戻って宜しいですね?』


『うん。腕輪はちゃんと僕の腕に装着しなおしたから、安心して戻っていいよ』


『かしこまりました』


 シンはそう返事をすると、ゆるやかに地上に銀の光を纏いながら三人の女性たちと共に地上に降り立った。


 そのあまりの美しさ神々しさに、ディオル達は息をのみ、片膝をついて頭を垂れた。


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