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101.豹獣人ディオルの困惑② ディオル視点

 

「お前、名前はわかるか?何処から来た?」俺は、穏やかに優しくを意識しながらそう尋ねた。

 少年は怯えた様子はないものの、何やら言いにくそうに答えた。


「えっと…ジル…です。凄く遠くから魔法で飛ばされちゃって…」


「「「「なんだって?魔法で?」」」」俺も他の隊員たちも驚いた。

 こんな年端もいかぬ子供が?これまで転移の魔法で送られて来た者達は、国を脅かすような犯罪者だ。

 しかも今では、その魔道具すら人間の国には残っていないと聞き及んでいるというのに!


「えっと…は…はい」


「一体、誰に?何のために」そう、尋ねるとジルは困惑したような表情になり眉根をゆがませていた。


「え~っと…」


「わからないか?」


「えっと…いえ…その…はい。ごめんなさい」と申し訳なさそうに謝ってきた。


  ジルという人間の少年。

  何か言えない事情があるのかもしれないと思えた。


「とにかく、この森を出よう。こんな所にいては、魔物たちに襲われてしまう」そう言って俺は少年を抱き上げた。

 泣かれたらどうしようかと心配だったがそんな様子はなく、逆に申し訳なさそうな顔をされた。


「あ、あのっ、僕、泥だらけで…ごめんなさい。その…僕、もう少しこの森でいます」


「「「ああっ?何言ってるんだ?死ぬ気か?」」」と隊員たちが一斉に叫ぶ。


「お前ら!子供に大きな声をあげるな!怯えるだろうがっ!」と隊員たちをにらみつける。


「「「ひぇっ!」」」

「たっ、隊長の方が怖いですからっ!」と隊員たちが一斉に引いたが、ジルは俺達のそのやり取りを見てだか、くすりと笑った。


「「「「え?」」」」と自分も含め皆が思わずその笑顔に見とれた。


 何?この生き物…。

 人間だか他の何かか分からないが、俺は…いや、多分俺たちは全員、こんなに可愛らしい生き物をみた事がなかった。


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