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79 家に到着! 犬と猫の大歓迎?

おっちゃん先生のおかげで川谷先生と森山先生からも許可がいただけました。お礼を言って診察室を後にし、受付で『吉田』さんにも闘病記のことを話してモデルにする許可をもらえたの。


車に乗ろうとしたら珪が訊いてきた。


「舞、昼飯どうする」

「家に帰ってある物をみてからかな」

「それならコンビニか弁当屋によるか」

「そうだねえ~。・・・あっ、それなら戻ってもらうことになるけど、マスダ焼き豚店に行ってくれない」

「マスダ焼き豚店?」

「そう。そこね、お惣菜も作っていて美味しいのよ」

「よく買うのか」

「いんや。今回で4回目。自分で作っちゃうから、あんまり買いに行かないのよね。でも前に友達に奨められて食べたら美味しかったんだよねぇ」

「へえ~、舞がそういうなら行って見るか。で、店の位置は」

「この道を戻ってxx通りを越して2分ぐらいの左側にあるよ」

「わかった」


お店に着くと当然の様に珪もついてきた。なんやかやでもう11時近くになっていた。


「へえ、お弁当もあるんだ」

「そうなの。いろいろおかずが入ているのよ。選んだらレジに持っていくとご飯を入れてくれるの。ご飯も白米と赤飯と五穀米と炊き込みが2種あって、それを好きな物を入れてもらえるのよ。まあ、白米以外は20円プラスなんだけどね」

「それは凄いな。じゃあ俺はこの中華ランチにするかな」

「私は・・・おっ、レディースランチだ。これって限定20個と聞いたんだよ。前の時は食べられなかったからこれにしようっと」


珪はご飯は白米、私は五穀米を入れてもらった。なぜか会計は珪が払ってしまった。と、いうより、バックの中に財布が入っているので、私はお店に入った時にはお金を持っていなかった。


車に乗ってすぐ私は言った。


「ううっ、ごめん。家に帰ったら払うよ」

「そこは気にすんな。大体これも俺のお金じゃないし」

「珪のお金じゃない?」


珪の言葉を聞き咎めて、少し声の調子を鋭くして訊いてみた。


「あー・・・その伯父がな」

「秀勝おじさん? ・・・ねえ、私の入院費用って旦那から渡されたものから払ったんだよね?」

「・・・・・」

「おじさーん!」

「舞、土曜日にお見舞いを置いていくのを忘れたから、伯父が代わりに払うことにすると言ったんだよ」

「いーや、違う。確信犯だ! 退院の話を聞いて、お見舞い金を素直に受け取らない私だろうと確信して、こんな事したに決まってる~!」

「・・・お前も無駄に知恵がまわるよな」

「その言葉は肯定とみた!」


運転している珪の横顔を睨みつけた。珪は顔をしかめて何も言わなかった。


そうこうしているうちに家についた。車から降りると柴犬のキラが、小屋から出てきてしっぽを振ってくれた。近づいてキラのことを撫ぜようとしたら、キラが後ろ足で立ち上がり前足を私にかけてきた。キラの珍しい行動に、バランスを崩して後ろにひっくリ返りそうになった。


トン という感じに背中を支えられた。


「あっぶないな。入院で体力落ちたか、舞」

「ありがとう、珪。そうかもしれない。基本ベッドの上にばかりいたから。キラ、あとで散歩に行こうね」


キラにそう言って、私は玄関へと向かった。玄関の前で鍵を出そうとして、ハタッと気がついた。私は鍵を持っていないことに。入院の日は旦那が一緒だったから、家の鍵を持って出なかったのだ。動きを止めた私に珪が聞いてきた。


「どうかしたのか、舞」

「家の鍵がない」


情けない声でそう言ったら、珪が吹き出して笑い出した。


「笑うなや、珪」

「悪い・・・あまりに情けない声だったからさ。はい、浩輝さんから預かったから」


そう言って上着のポケットから私の鍵を渡してくれた。


「持っていたのならもっと早くに教えてよ~」

「あ~、その、浩輝さんがな、鍵がない事に気がついて舞が慌てるだろうから、その様子を教えてくれと言われたんだよ」

「旦那~」


私は脱力しながら家の鍵を開けた。玄関を開けると猫のレイが顔を覗かせていた。


「レイ~。ただいま~」


そう言ったのにレイは靴を脱いで上がった私達を見て逃げてしまった。おい!


「荷物はどこに置くんだ」

「あー、こっちに。ところですぐに戻るの」

「悪いけど、昼飯をここで食べていっていいか?」

「もちろんいいよ。それならお茶をいれるから。オワッ!」


台所の入り口で何かを踏んづけた私は、それに滑ってすっ転びそうになった。これも珪が手を伸ばして腕を掴んでくれたから、どこもぶつけることはなかった。


「大丈夫か、舞」

「ありがとう~。退院そうそう、病院に逆戻りにならなくて良かったよ~。ところで何を踏んづけたのかな? ・・・レイ!」


私の足元にあったのは穴あきの犬用のボール。キラ用に買ったのにキラは興味を示してくれなくて、家の中に置いておいたの。それをなぜかレイが気に入って、たまに転がして遊んでいたのさ。


まあ、足元をよく見ていなかった私も悪いので、レイのことは叱れないか。


「トイレ借りるぞ」


そう言って珪は台所から離れた。私はポットを開けてみた。お湯は入っているけど、もう一度やかんに入れて火にかけた。すぐに沸いたのでポットに移した。急須を取ろうと動いたら、足元に来ていたレイが私が行きたい方向に動いてくれて、レイに足を引っかけてつんのめった。ちょうど戻ってきた珪が抱きとめてくれなかったら、顔面を打っていたかもしれない。


「役得だな」


珪が嬉しそうに呟いた。

・・・


「殴っていい?」

「助けたのに?」

「なら、口に出すなバカ!」


ポカッ


うん。私は悪くない。抱きとめてもらった時に手がどこにあったかなんて、言わなきゃわかんないだろ、バカ珪!



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