70 面会時間を短くしたかったのに・・・
私が帰れ発言をしたら、珪と椿姫さんが同意してくれた。普通の入院のお見舞いってさ、2~3人で来て、長くて10分もいればいいところよね。まあ、家族は別としてもさ。このまま会話を続ければ長くなること必死だもん。
だから言外(・・・直接いったけどさ)にさっさと帰れと言ったけど、私が言った余分な言葉のせいでもうしばらく彼らとの会話は続いたのだった。
恭「ちょっと待て。池上、今この会話を書くとか言わなかったか」
美「私も聞いたよ~。ねえ、舞ちゃんどういう事」
チッ 余計なことを言っちまったい。
キ「舞子、舌打ちするってことはなにか隠していることがあるんでしょ」
舞「お~い、キャンさんや~。闘病記の打ち込みを頼んでいるのに、そのセリフはないでしょ」
皆「「「闘病記?」」」
高「そんなもの書いているのか」
舞「だって暇なんだもん」
英「暇って・・・治療のために入院したんだろ」
舞「そうだけど、基本点滴か飲み薬と検査だけなんだよ。特にリハビリを頑張れとかないし」
恭「だけど、池上にはそれが必要だったんだろう」
舞「だから、毎日検査があるわけじゃないでしょ。それ以外は基本ベッドの上よ。本を読むのだって飽きるしさ~」
宏「飽きるって・・・だけど安静にするのが仕事みたいなものだろ」
舞「そうよ。分かっているからおとなしく本を読むか、闘病記を書くしかないんだってば!」
憮然と言ったら美那ちゃんが興味津々という顔をした。
美「それで~、闘病記ってどんな感じなの」
舞「そこは投稿されたら読んでよ。キャンが打ち込んでくれたから、水曜には投稿できるはずだから」
高「水曜って8日のことか。退院早くないか? 2週間は入院するって言っていただろう」
舞「入院前の点滴で血栓の心配がなくなったから」
そう言ったら、なぜか疑わしそうに皆に見つめられたのさ。
椿「それって、本当はもっと早く入院しなければならなかったなんて言わないわよね、舞子」
・・・ヤバイ。この冷気を纏って敬称をつけない言い方になるのは、本気で心配した時の・・・。
珪「まあまあ。そこは何事もなくて、早く退院できるんだからいいじゃないか」
珪がそう言ってくれて、キャンも頷いていた。二人は事情を話しているからこの反応だけど、他の皆は納得出来ないのか、噛みつく先を珪へと変えたのでした。
美「前々から言いたかったんだけど、どうして宇津木君は舞ちゃんのことをそんなに知っているのよ」(と言って珪のことを睨みつけた)
珪「お前達より会う機会が多いからだけど」
英「それだよ。なんで池上と会う機会が多いんだ」
珪「それは・・・」(口籠る珪。チラリと私のほうを見てきた)
宏「というかさ、宇津木がこの中にいるのっておかしくない」
キ「ちょっと、宏文。何を言いだすのよ。今更」
宏「ああ、今更だよ。だけどさ、中学の時、俺は宇津木とほとんど話したことなかったの。卒業した後この集まりで多少は話したことあるけど、その程度なんだよ。こいつもさ、集まった時、俺達とあんまり話そうとしないだろ。いつも池上とばかり話してさ。じゃあ、集まりにくる必要無くねえ?」
私は宏文君の言葉に今までの飲み会のことを思い出す。・・・確かに珪は自分からはあまり話してなかった。でも、皆の話を楽しそうに聞いていたのよ。私と話すのだって、大概美那ちゃんやキャンから逃げた私が、その時に読んでいた本やアニメの話をしたくて話しかけていたのだ。
・・・ん? あれ~、じゃあ私じゃん。原因は。
キ「そんなことないでしょう。ちゃんと会話していたわよ」
あー、キャンは仕事でも付き合いがあるから、その関係の話を皆にしながら珪を巻き込んでいたんだよ。
高「キャン、悪いけど俺もそんなに宇津木と話してないぞ」
恭「俺も」
・・・ちょっとやめてよ。なんで今更そんなこと言いだすのよ。それも珪をハブるような言い方・・・。
キ「でも、珪はちょっと無口なだけで・・・」
珪「もういいよ、菊池。こいつらは俺のことが気に入らないみたいだし、今更仲良しごっこって年じゃないだろう。今まで悪かったな。邪魔もんは消えるよ」
そう言って珪が立ち上がろうとしたから、私は先に立ち上がって珪の横に行った。突然の行動に皆が私を見てくる。私は珪の左太ももに自分の右足を膝立ちの状態で乗せて体重をかけた。
キ「何してるのよ、舞子」
キャンが慌てて私の腕を引っ張る。美那ちゃんと椿姫さんにも来て私を珪から離れさした。私はその間も珪の顔を見つめていた。珪もじっと驚いたように私の顔を見ている。
舞「逃げんなよ。ここで逃げたら軽蔑する。というか、そんなに簡単に切り捨てようとすんな」
やりきれない気持ちのまま、思わず珪のことを怒鳴りつけていた。
舞「今まで集まりに来てたのだって私がいたからじゃないでしょう。楽しかったんでしょ。皆といるのが。珪が自分から話題振る奴じゃないのは知ってるもん。嫌ならそもそもここまで付き合ってこないでしょ。いい加減、自分の気持ちに気付けよ。このバカ珪」
珪「ああ・・・はい」
私の剣幕に呆然としたまま、珪は呟くように返事をしたのだった。




