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66 中二病は黒歴史・・・か?

何となくピンとくるものがあったので、私は睥睨するように旦那のことを見た。


「・・・まさかさ~、旦那。ま~た、へんな誤解してないよね」

「いえ・・・個性が強い方だったなーと・・・」


・・・していたのね、旦那。

上条君は珪と大学で出会っていた。何を気にいったのか、入学当初から付き纏われたと、珪は言っていた。勿論、私とも面識はあったさ。珪と向こうで会った時の、2回に1回は顔を合わせたもの。そうしたら会う度に私を口説くようなことを言ってくるから、いつも珪と口論をしていたのよねぇ。あれは本気で口説いてなかったし、いつも軽く流す私の反応が面白くなくて、半分意地になってただけなのに。私はもう挨拶だと思って、流していただけだったのよ。


「だからさ~、その時に訊いてよ。旦那ってSだと思っていたけど、実はMだったの」

「そんなことはありません!」

「母さん・・・」

「いいじゃん、たまには私が言葉責めしたって」

「いや、そこはいいんだけどさ」


いいんかい!


「たださ、場所を考えてほしいかな~と、思っただけで」

「今更でしょうが。まあ、尚人の言いたいことはわかるから、続きは家に戻ってからにしましょうか」


そう言ったのに夏葉が「待って」と言ってきた。


「ねえ、その上条さんが亡くなったのが6月なの?」

「えーと、そうだったと思うけど」

「あとね、お母さんが考え方はほぼ同じと言っていたけど、本当にそれだけなの」

「何がだよ、夏葉。どこかおかしい所があるのか」

「だって、お兄ちゃん。おかしいと思わないの。今までの話しを聞いていると、珪一おじさんと、小さい頃からずっと仲が良かったわけじゃないのよね。それなのになんで、死の誘惑だの自殺願望だなんて解るわけ? そんな発想ができるのって、考えたことがあるって事なんでしょ」


夏葉がヒタッと見つめてきた。同じように夫と息子も見つめてくる。私はつい溜め息を吐き出した。


「お母さん?」

「ああ、ごめん。違うのよ。今の溜め息はそんな意味じゃないの。確かにね、考えたことがあるのよ」

「母さん」

「だから、意味合いが違うってば。どちらかというと哲学的なものなの。というか、本当の意味での中二病よ」


困惑したような、3人の顔。代表するように尚人が言った。


「なんだよ、厨二病って。母さんもなんか技の名前を叫ぶ人だったのかよ」

「だからその漢字を当てるな! 普通に中学2年生のほう! なんかやたら難しく考えたくなる時期だったの」

「・・・流れでさ、何を考えてたか分かるけど・・・。聞かないのも怖い気がするから聞くけどさ、いったいどんなことをかんがえていたんだよ」

「え~、だから~、自殺願望とかじゃなくて、人は死んだら魂はどこに行くんだろうよ!」


・・・あのさ、これで何度目の鳩豆な顔なのさ。私の言葉を素直にとってよ。本当に哲学的なものだったんだから。


「あー、母さん。なんでそんなことを考えたの」

「私もあの時の自分に問いたい」

「母さん!」


だからね、怒鳴ってもこれが本音だってば。それだから中二病なんでしょう。


「他には何を考えたの」

「う~ん、そうねえ、しいて言うなら眠っている間の意識はどうなっているかとか」

「眠っている間って・・・脳も休んでいるんだろう」

「うーんとね、何かの小説の影響だと思うんだけど、眠っている間にこの世界の身体を離れて、他の世界の身体に入って活躍するという話があったのよ。でも、これだと体は休めても精神は休まらないな~って、思ったんだよね。そこから睡眠のメカニズムを調べたりしたわね」

「えーと、まだ他にも考えたことはあるの」

「そうねえ、アニメに影響されて宇宙のこととか」

「例えば?」

「えーと、宇宙ってビッグバンが起こって出来たって説があるでしょ。それで宇宙って広がり続けているわけで、隣の銀河系とも離れて行っているとか。それなら、宇宙を旅できるようになっても永遠に隣の銀河まで辿り漬けないんじゃないかってね。それこそヤマトに出てきたワープ航法でも出来なきゃ無理でしょ。それと、永遠に広がり続けるのは無理だろうから、いつかは萎むのかなってね。萎んでいくとどうなるのかなとかよ」


なんか、三人の表情がいままでと違うんだけど? 旦那は単純に驚いているけど、息子は・・・なんか尊敬? いや、もっと話がしたいって顔をしている。娘は・・・あれ? 嫌そうに視線を逸らしたけど。


「母さん。退院したら、そこら辺の話をもっとじっくり話そうよ」

「私より珪のほうが面白いよ」

「珪さんとこんな話してんの」

「昔ね。今はそこまでの話はしないもの」


息子の目が輝いている。そうか、こういう話がツボだったのね。尚人には。


「あー、と、最後にもう一つ。もしかして珪さんも小説を書く人なの」


息子がそう訊いてきた。私は少し躊躇した。でも、隠すようなことではないから、話しても大丈夫と、自分に頷いた。


「書いたことはあるよ」

「えー、どんなの。戦記物とか。それともSF? まさか恋愛物なんてことないよね」

「あー、そのねえ・・・一言で言うとグロイ」

「はっ?」

「グロくて救いがない」

「えっ?」

「えーとね、私が読ませてもらったのは2作品で、片方は一応戦記物だったのよ。だけど最後がね、皆死んじゃうの。もう一つはロミジュリっぽかったけど、最後がやっぱり死んで終わってね、気が滅入った記憶しかない」


三人は絶対読みたくないと、いう顔をしたのでした。


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