58 ・・・なんの話やねん・・・
何をしているかなんて・・・聞かれてもね。
その変化に気がついたキャンの旦那に感謝の言葉を言われたけど、私はそこで小言を言っておいた。子供のことをよく見なさいと。あなたも余裕がないのはわかっているけど、実の叔父なんだから、あなたがフォローしないでどうするのってね。親を亡くし祖父母は身体を悪くして、それであなたの所に来たんでしょ。不安を抱えているのは分かったでしょうって。
きついかなと思ったけど、言わずにはいられなかった。親友には幸せになって欲しいもの。旦那にはしっかりして欲しかったんだ。
そんなことを思っていたら、稀莎ちゃんが手を私の方に出してきた。何だろうと思いながら手を出したら、私の手のひらの上に「はい」と折り鶴が置かれたの。続けて巧巳君と悠馬君も折り鶴を乗せてきた。
「あのね、きさがおみまいに何かもっていきたいっていったら、これをね、おかあさんがおしえてくれたの」
ニコニコ笑顔で言う稀莎ちゃんがかわいくて、涙が出そうになった。これを狙ってやったっていうのなら、キャンのことは許せないと思った。
そうしたらタイミングよくカーテンが揺れた。
「舞、ごめん。子供たちだけ先にエレベーターに乗っちゃったの」
といいながらキャンが顔を見せてきた。その表情にはやましさも、してやったりというものもない。勿論キャンの旦那も一緒の表情だ。
私はベッドからでてスリッパを履いた。ついでに小銭入れをだした。
「舞、どこに行くの」
「ここだと狭いから1階にコーヒーでも飲みにいかない?」
「部屋にいなくていいの」
「別にいいでしょ。それにほとんどお見舞いは来ているもの」
「でも・・・」
「いいから。行こう」
そういったら稀莎ちゃんが手を繋いできた。私も軽く握り返して歩き出す。それを見ていたキャンが手を出した。
「ちょっと待った」
私の肩を掴んで止める。何だろうと思い振り向いたら、稀莎ちゃんの手を離れさして旦那さんと手を繋がせていた。
「ごめん、先に下に行っていて」
そう言ってキャンは私をベッドのほうに戻して、カーテンを閉めた。そして微かに頬を赤くして言った。
「舞・・・なんでブラジャーをしてないのよ」
「・・・あっ、忘れてた。というか、着替えの中にブラが入ってなかったのよ。今日は診察はないし、来るのはうちの家族とキャンくらいだと思っていたから、してなくてもいいかなってね」
「・・・てね、じゃないでしょ! もう~。ねえ、じゃあ変えはないのね」
「えーと・・・あるよ」
そう答えたらキャンが肩を落とした。
「頼むからつけてください」
そう言って窓のほうを向いたのよ。私はブラを取り出すとパジャマの上を脱いでつけた。
「ちょっと、何で脱いでいるわけ」
焦ったようなキャンの声が聞こえた。背中を向けているからいいかなと思ったのに、私の方を見たらしい。
「いいじゃん。女同士だし。私、上着を着たままつけれるほど器用じゃないし」
そう言ってパジャマの上を着けた。ボタンを留めながらキャンのほうを向いたら、私の方をみていた。・・・って、おい。どこ見てる!
「なんで」
「ん? なんかいった?」
キャンがボソリと言ったの。よく聞こえなくて私は訊いた。
「なんで、体重落ちたって言ってたのに胸が痩せてないわけ? ずるいわよ。・・・というか、少し胸の形が良くなってない?」
何のことだ? 胸は痩せたんだけど。
「どこがよ。カップがガバガバになってないでしょ。私なんてやっとBなのに。Fだなんてずるいわよ」
「いや、違うから。今はEになったから」
「Eでも私の敵よ。・・・言いなさいよ。前はもう少し垂れていたわよね。それがなんでバストアップしているわけ」
「ちょっと、キャン。声が大きいから! 別に特別な事はしてないよ。テレビでマチャミが言っていたことを実践してみただけだって」
「マチャミってタレントの?」
「そうなの。去年の・・・10月以降のトーク番組だったと思うんだけどさ、その時に言っていたのよ。マチャミの年齢どころか、80代のお姉様でもバストアップできるって」
「・・・なんでそんな美味しいことを教えてくれないのよ」
「いや、まずは試してみてからでしょう」
「それで、どうやるのよ」
「えーと乳房の下に手を当てて、上下に動かすだけ。それを一日100回くらいするんだって」
私が胸の下に手を当ててその動作をしたらキャンも同じように手を当ててしていた。
「こう、なのね」
「うん。でもそうか~。気のせいじゃなかったんだ~」
「何がよ」
「いや、だから~。私さ、祖母の萎びた胸を見ていたから、諦めていたんだよね。年を取ったら垂れることを。現にブラをしていないと、かなり下がっているし。ダメ元でやり始めて2ヶ月経つけど、いまいち実感わかなくてさ~。でも最近鎖骨の下あたりに筋肉が付いて来たのか、触ると少し弾力を感じるようになってきたのよ。でも気のせいのような気もしていたしね」
「どれ」
そう言ってキャンは私の胸の上を触ってきた。
「十分あるじゃない」
「あ~、違う。これはブラをしているから。つけてない状態でなんだよ」
そう言って私は後ろに手を回してブラのホックを外した。そうしたらキャンが触ってきた。
「ん~? 確かにちょっと肉がついたような?」
キャンは自分の胸を触りながら比べている。比較が終わったのか手を離した。そして私に言った。
「ホックを止めてあげるから後ろを向いて」
私は素直にキャンに背中を向けて少し前屈みになった。キャンはパジャマをめくってブラの端を掴むとホックを止めてくれた。
「おい・・・何をしているんだよ」
キャンの旦那の声が聞こえてきた。・・・まだ下に行ってなかったんかい。
そうしたら顔を赤くしたキャンが叫んだ。
「なんで下に行ってないのよー!」
・・・うん。これはどちらも悪くないよね




