36 名前の呼び捨ての真実
うふふっ。
今話からしばらく私の大好きなものの、話が入ります。
さあ、どこまでついて来れるかな~。
夕食・・・少しは食欲が出たのか、3分の2を食べた。片付けようと立ち上がったら看護師さんがきて、私が残していることで溜め息を吐いていた。片付けてくれようとするから、自分ですると言ったけど、点滴をしているから持つのが大変でしょと言われてしまった。看護師さんに片付けてもらい、ついでにまたトイレの付き添いをお願いした。
支えなくても歩ける様子に何となくホッとした様子が伝わってきた。
部屋に戻りベッドに座った。本を取り出して読みだした。リ・・・の9巻。これも斜め読みで読み進める。集中していたら誰かの気配がした。見るとのりちゃんが来たところだった。
私はしおりを挟むと本を閉じた。
「舞ちゃんは本当に本が好きなのね」
「まあね」
「どういう本を読んでいるの?」
「これはファンタジーよ」
「ファンタジーが好きなの?」
「好きには好きだけど・・・私は雑食だから」
「雑食?他にも読むの」
「う~ん。今はファンタジー系が多いけど、他はミステリーかな」
「ミステリー?推理するのが好きとか?」
「それもあるけど、トリックを予測するのが楽しいの」
のりちゃんは私が膝の上に置いた本をじっと見つめてきた。
「そのイラスト、綺麗よね。漫画っぽいというか。舞ちゃんは相変わらず漫画も読んでいるの?」
「うん。昔ほどいろいろな物には手を出さなくなった。作者で選んでいるところもあるかな」
「作者で?」
「それと・・・意図したわけじゃないんだけど、白泉社の作品が多いよ」
「あっ、じゃあ、成田先生やひかわ先生の作品を今も読んでいるとか」
「うん。お二方とも全巻持っているよ」
「すご~い。私はもうあまり読まなくなったのよ」
しばらくのりちゃんと漫画談義をした。私達が中学高校の頃に読んでいた作家さんが、少女向け作品から女性向け作品に転向した話をしていたら、不意に会話に入り込んできた奴がいた。
「俺も清水先生の・・は読んだけど、ところどころグロイよな」
「珪。今日も来たの」
「当たり前だろ。昨日のあれで、今日来ないで済ませられるか」
姿を現した珪にのりちゃんが目を見開いて凝視している。
「まさか・・・珪くん?」
「えっ?・・・のり?お前、のりか!」
珪も驚いて固まっている。私はそっと笑った。多分人の悪い笑いをしていることだろう。
「ねえ、舞ちゃん。なんで珪くんがここにいるの。中学の時そんなに仲が良かったっけ?」
「う~ん?仲はそれほど良くはなかったよ。というより会話をほとんどしたことなかったもの」
「じゃあ、なんで」
「いろいろあって、兄の舎弟になったの」
「誰が舎弟だ。違うぞ、のり。高校の時に妹が読みたがっていた本を、舞が持っていたんで借りるようになっただけだからな」
珪がのりちゃんに説明するように言うのを聞いて、懐かしさが込み上げてきた。この名前の二文字呼び。小6の時にうちの学年で流行ったのだ。それがいまだに何かの拍子に出てくるの。中学の友人達はそんなことを知らないから、高校の時に急に二文字呼びの呼び捨てで互いの名前を言いあうように珪と私がなったら、いろいろと勘ぐられたのは懐かしい思い出だわね。
それにこの2人は家が近所だったの。のりちゃんと遊んだ3回目。その時珪もいたんだよね。それで、アニメの話で盛り上がって・・・。
思い出したことにニマニマしていたら、のりちゃんと珪が怪訝な顔をしてきた。
「舞ちゃん、変なこと考えてないよね」
「もちろん考えてないよ。のりちゃん家で遊んだ3回目にアニメの話をしたよね~」
「ええ。舞ちゃんがロボットアニメに詳しくて弟たちが喜んだあれでしょ」
「ああ、そうだったな。見た目とのギャップに驚いたのを覚えているよ」
私はクフフッと笑った。
「そりゃあね。兄がいれば一緒に見るでしょう」
「だけど、マジンガーZにグレートマジンガー、勇者ライディーンとかスラスラ出てくるんだものな~。どれだけアニメ見ていたんだよ」
「えー、だってさ、兄は勇者ライディーンの超合金ロボを買ってもらっていたのよ。目の前にアニメの中で見たものがあったらうらやましいじゃん」
「それは・・・どうなのかな?」
「俺も。女の子がそういうものを喜ぶなんて聞いたことがなかったぞ」
「別に買って欲しいとは思わなかったよ。ちゃんとリカちゃん人形をもっていたし」
そうなの。うらやましかっただけで欲しかったわけではないの。
「まあねえ、兄はグレートマジンガーの玩具を持っている友達が羨ましかったらしいしね」
「あの頃いろいろなロボットアニメがあったよな」
「そうね。他に覚えているのは、UFOロボグレンダイザー、闘将ダイモス、ダイターン3、ザンボット3、ゲッターロボ、コンバトラーV、ボルテスファイブ。路線が違うけどタイムボカーンシリーズとか、化学忍者隊ガッチャマンでしょ。他に」
「おいおい、どれだけ見てたんだよ」
「そうよ、舞ちゃん。男の子向けだけじゃなくて、女の子向けのアニメは見てなかったの」
「もちろん見ていたわよ。秘密のアッコちゃんに魔法使いサリーでしょ。そこから魔女っ子ものや魔法ものがいくつも作られたもの。魔女っ子メグちゃんに、魔法のマコちゃん、えーと、ミンキーモモとか、魔法使いチックルとか」
ふっふっふっ。私にアニメを語らせちゃあ、いけないぜ!




