表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/95

34 息子の言葉が・・・心に痛いです

思い出すと胸が痛いです。

そんなつもりはなかったのに・・・。

「な~にが大丈夫じゃい!キャン以外に誰に送ったか言わんかい!」

「母さん、それっていつもは口に出さずに心の中で言ってる言葉使いだろ」


息子に冷静にツッコミをされました。


「心配しなくてもメールはキャンさんにしか送ってないからね」


今一信用できなくて、キャンと顔を見合わせた。


「酷いなあ~、自分の息子だろ。そこは信用しようよ」


爽やかに笑って言った息子の表情が瞬時に真顔に戻った。


「それに俺、今、反省中だから、他の事はどうでもいい」


息子の珍しい言い方と、本当に落ち込んでいる様子に首を捻る。


「ねえ、何かあったの、尚人」


尚人は私をチラリと見た後、口を引き結んだ。・・・けど、ハア~と息を吐き出してから自嘲めいた笑いを浮かべて言った。


「夏葉に泣かれた」

「はっ?夏葉が?あの子が泣いたの?なんで?」


思いがけない言葉に動揺が激しい。思わず息子の手をギュッと掴まえた。息子はされるがままでいた。


「落ち着けよ、母さん。一応大丈夫だから。たださ、俺も父さんも母さんも、夏葉が大人びた子だと思っていたから忘れていたけど、夏葉は中2の14歳なの。まだ、十分子供なんだよ」


息子が何を言いたいのか解らない。娘が中2で14歳なのは当たり前の事実だもの。

尚人は私の顔を見て、少しだけ息を吐いて、仕方がないというような笑い方をした。


「母さんはさ、当たり前過ぎるから忘れているけど、家に帰った時に誰もいないのって、夏葉にとって初めてのことなんだよ」


家に帰って誰もいない?・・・それって今までもあったよね。たまにだけど。


「ねえ、母さん。勿論今までだって、母さんがいないことはあったよ。でもさ、その時って必ず帰ってくるって分かっていただろ。昨日みたいに帰ってこない(・・・・・・)ってわかっているのは初めてだったんだよ」


・・・あっ!


「それなのに、昨日父さんは遅くなるのが分かっていたのに、俺が中々帰ってこないから、夏葉が不安になったらしくてさ。家に帰った時には普通だったんだけど、キラの散歩に行ってくれてたり、風呂の準備や洗濯までやってくれてて、お礼を言ったら泣き出したんだよ」


息子の言葉に状況が目に浮かぶ。部活が終わって帰ってきて、尚人がまだ帰っていないからキラの散歩に行ってくれた。それからお風呂を洗い、洗濯機を回して止まったら干してくれて・・・。今まで私任せだったから、どれだけ大変だったのだろう。宿題だってあるだろうし・・・。


「あのさ、母さんのせいじゃないからさ。昨日帰るのが遅くなった俺が悪いんだし」

「でも、私がちゃんと話を聞いてなかったから」

「それは結果論だろ。本来なら孝一先生が、もう少し母さんのことを気にかけるべきことだったと、俺は思うな。それに俺が病院を出たところで、家に電話すれば済んだことだ。それを怠った俺が悪い」


きっぱりと言い切った息子に頼もしさを感じる。うん。成長してるんだね。


「だからさ、今日はもう帰るよ。洗濯ものってある?」


取り換えたタオルを入れた袋を渡す。あと、息子はカバンの中から替えのタオルを取り出してしまってくれた。


「あっ、そうだ、母さん。顔色が悪い気がするけど、何かあったの?」

「昨夜あんまり眠れなかった」

「母さんも、変なところの線が弱いからな。あまり気にせずにゆっくり休めよ。入院が長引いたら、夏葉が泣くからな」

「うん。気をつける」

「じゃあ」


そう言って右手を揚げると尚人は帰って行ったのでした。

尚人の姿が見えなくなるとキャンが立ち上がって、タオルを一枚だし広げて私の頭に掛けてきた。


「舞子にしては偉かったじゃない。よく堪えたよ」


私はタオルを引っ張ると顔に当てた。涙があとからあとから溢れてくる。自分の浅はかさに嫌気がしてくる。あと、自分勝手さにも。今までのツケがこんな形で返ってくるなんて。


「ま・い・こ。今更でしょ。なる様にしかならないでしょ」

「わかってる。でも、娘に寂しい思いをさせるつもりはなかったもの」

「それなんだけど・・・それもどうしようもない事じゃないの」


キャンの言葉に涙はまだ止まらなかったけど、タオルから顔を上げた。


「何がどうしようもなかったのよ」

「舞子。八つ当たりはしないでよ。あのねえ、舞子は仕事をしていないから家にいるわけでしょ。そうしたら子供にとっては、舞子が家にいるのが当たり前になっちゃうでしょ。それぞれの家に事情があるんだから、どうしようもないことでしょ」


わかってる。わかっているけど・・・。


「それにね、舞子。舞子も中学の時に言っていたじゃない。農家の家だから、帰れば誰かがいるのが当たり前で、それが家での仕事がない日は、誰もいない家に帰るのは寂しいって。私はしょっちゅう誰もいない家に帰っていたから、うらやましかったのよ」


・・・私と同じ・・・か。


「でも、尚人君の言葉に私も反省だわ」


キャンの言葉が意外で顔を見たら、苦笑が帰ってきた。


「ほらぁ~、私も子供に寂しい思いをさせているかなって思ってね」


ああ、そうだね。キャンもいろいろあったものね。本当ならうちの子と同じ年くらいの子供がいてもおかしくないのに。


ある事故で子供を持つことは出来ないだろうと言われて、母親になることを諦めて。折角決まっていた結婚も諦めて・・・。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ