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26 息が吸えないと・・・やばいよね!

えー、呼吸困難になった話があります。


こう見ると、ほんとに病気の宝庫かしら?

のりちゃんは黙って私のことを見つめていた。私は続きを話したの。


「農家のうちってさ、家庭内作業なわけでしょ。私ね小さい頃から家に人が居ないことってあまりなかったのね。それが、祖母が亡くなって、父、母も亡くなって、子供も幼稚園に行くようになったら、本当に手持ち無沙汰になっちゃったの。それなら働きに出ようかなって思うでしょ」

「・・・えーと、人が働く理由はいろいろよね?」


のりちゃん、何故に疑問形なの?


「まあね。それでまずは家族の了解を得ようと夫に言ったのよ。そうしたら猛反対されたの。まあ、そのときは仕方ないかと思ったけどね。あんなの見せられたら、私が夫の立場でも嫌だもん」

「・・・あんまり聞きたくないけど、何があったの」

「私も人に言いたくなかったけど、のりちゃんは看護師さんだしいいかなと思って。その話をする少し前に、呼吸が出来なくて死ぬかと思ったことがあったんだ」


私の言葉に血の気が引いていくのりちゃん。


「な・・・何よ、それ。呼吸が出来ないって」


私は苦笑いを浮かべた。


「その時も咳のせいなのよ。激しくむせこんでさ~、咳込みすぎたのか空気を吸えなくなったのね」

「それでどうしたの」

「う~ん、その時ねえ~、とにかく空気を吸えなければ死ぬな~と思ったのね」

「何を呑気に」

「いや、呑気にじゃないから。よくさあ~、時代劇とかで死の間際にヒーヒー言っている場面があったでしょう。あれみたいに、喉からヒーって言う音が出てね、息は吐けるけど吸うことが出来なくて、ほんと、どうしようかとね。どれくらい息が吸えなかったか分からないけど、もうどうしようもないから、息を吐けるだけ吐き出して、その反動で息を吸おうとおもったのね」

「それで?」

「うん。なんとか、吸うことが出来たよ」


のりちゃんがハア~と息を吐き出した。


「よかった~」

「いや、のりちゃん。そこで呼吸が出来ないと、私ここにいないから」

「そうだけど、ね。・・・ところで原因は?」

「え~、咳込み過ぎたからでしょ」

「医者にかかってないの」

「かかってないというより、話してないだけ」

「なんで?」

「なんでって、じゃあさ、どう言えばよかったの。咳込み過ぎて息が出来ませんでした。何とか呼吸が出来るようになりました~。とでも」

「でも・・・」

「そうね、その時にいえば扁桃腺を取りましょうって話になったかもね。っと、ごめん。この話は忘れて。そういうわけで、働きに出るわけにいかなくなったのよ」

「忘れてって・・・」


のりちゃんは困惑した表情を浮かべたの。


「話しておいてなんだけど、それこそ今更な話だし。それにそうなったのは、その時1回だけだから」

「何度もあったら困るわよ」

「そうだね~。でね、働きに出れないなら何をしようかなって思って、幼稚園の役員をすることにしたのね」

「・・・ねえ、その役員って、クラスの役員じゃなくて、その上なの?」

「うん。本部役員。うちの幼稚園は執行部って言い方してたよ」


のりちゃんがもっと困惑した顔をした。


「えーと、舞ちゃん。それのどこが愚痴なの?本当は役員をやりたくなかったとか?」

「ん~?愚痴になってないかな?・・・えーと、えーと・・・とりあえず話を聞いてください。かな?それから、役員は誘われたの。やらないかって。それで、自分からやるって決めたよ」

「本当に?」

「うん。それで、実際やってみたら面白くてね。一緒にやった人たちとも仲良くなったし。2年幼稚園をやった後、また誘われて小学校の役員も受けちゃったの」

「・・・舞ちゃんって、頼まれると断れない人だっけ?」

「違うってば。面白そうだと思ったの。実際楽しかったしね。他の学校と交流できる役をやったから、知り合いはかなり増えて、高校の役員をやって、その人たちと再会したりしたもん」


そう言ったらのりちゃんがマジマジと私の顔を見てきたわ。・・・変な事言ってないよね?


「ねえ、舞ちゃん。いったい何年役員をやったの?」

「えーと、幼稚園で2年、小学校で5年、高校で2年だけど」

「それって全部本部役員なの」

「うん、そう。・・・あ~、普通の役員を入れればもう2年プラスだねえ~」

「全部で11年って・・・なんでそんなにやっているのよ」

「単純に面白かったから。それに市のPTAの母親委員の副委員長をやって、うちの小学校の変なところが判ったから変えたかったのもあったね~」


のりちゃんが口を開いたけど、何も言えずに口を閉じたの。私はまた、苦笑いを浮かべた。


「まあ、おかげでうちの学校じゃ私は有名人と化してたみたいね。私が知らなくても、相手は知っているって状態だったもの」

「そう、なるでしょうね。・・・ああ、だからなのね。さっき野村先生がママ友のネットワークが怖いって話していたのは」


あ~、尚人の脅しが効いたか~。・・・やばいかな~。尚人に話すなって言いそびれたけど・・・。

あの子、友達に孝一のことメールしてないよね?それをママ友に見せるように仕向けたりしてないよね?

・・・家に電話・・・いや、藪蛇になりそうだから・・・。え~、どうしよう。


「どうかしたの舞ちゃん?」

「息子が、尚人が余計な事しそうなことに気がついたけど、下手な事をしたら孝・・・野村先生が可哀そうなことになりそうで」

「舞ちゃんは何もしなくていいんじゃないの?」

「そう、っかな~」

「そうよ。野村先生も後悔するようなこと言っていたから」

「・・・そっか。反省しているんだ」


それなら、やっぱり尚人が余計なことをしない様に、釘をさしておきますか!


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