☆寄り道編☆ 右向け左! [Side by Kanda.]
こんな真夜中にスミマセン。
思い立ってばーって書きなぐりました。
不器用な彼女の付属編ということで。
たぶん、すごくおかしいかとおもうんですけど、
要点からいいますと、目撃シーンが書きたかっただけなんです!(ぶはっ
キラキラと窓がまぶしいのは、木の枝のとけた雪が太陽の光で反射してプリズムのように輝いているからだ。
冬が終わる。
ひとつ上の学年、3年生が卒業したら今度は私たちが3年になる。
あと1ヶ月で。
だからって何かが変わるんだろうか?
私の生活に何か変化があるんだろうか?
つまらない毎日。
くだらない毎日。
本当、何が楽しくてこんなとこにいるんだろう。
女の子同士のたのしいおしゃべり?
そんなのあれが好き、これが好きって散々に話したあとで、何かあればあれが嫌い、これが嫌いってとめどない。
本当にイラつくのよね。
ひとりのほうがマシ。
必要なら男の子と話してたほうがマシ。
いつまでこんな毎日を繰り返したら終わりがくるの?
自分の席で頬杖をついたまま、放課後の景色を眺める。
「さっわださ〜ん。もう帰っちゃうの〜? 部活は? 部活は?」
いかにも低脳な感じの声が廊下から聞こえてくると私は何気なく開いた教室の入り口から廊下へ目をやる。
この声は隣のクラスの委員長。
緑川翠だ。
変な名前のせいでおぼえちゃったな。
緑川君か・・・・・・。
「なにが欲しいの?」
初めて話した時の最初の言葉がそれだった。
数人の男子といつものように放課後、集まっていた。
そこへあらわれた緑川君は私の顔を見るなりそう言った。
何かを求めた記憶はないし、あれはどういう意味だったんだろう・・・・・・。
その後、何度か廊下をすれ違う時に話かけられたけど、ふざけた彼はおしゃべりな女子よりも私をイラつかせた。
でも、一度だけ。
図書室で見かけた彼はいつもの彼とは違ってみえたな・・・・・・。
あれは、私と同じ。
同じ匂いがした。
「なにが欲しいの?」
思わずきいてみたくなった。
声に出して言ったわけじゃない。
でも、きっとそういう事だったんだ・・・・・・。
私もそういう顔をしてたんだ。
何かが不満で、どうにもできない苛立ちを隠しているようで見る人が見ればわかってしまう。
同じ種類の人間が見ればわかるってことか・・・・・。
図書室の本棚の隙間からうるさいクラスメイトたちから隠れるようにひとり。
いつもは賑やかな彼がただ黙々と分厚い本を読みふける姿は意外で新鮮に見えた。
本当は違うんだね。
本当の緑川君はどれ?
女の子のうしろばかり追いかけているふざけた方?
それとも、くだらない毎日から抜け出したいってひとりになる方?
ちょっとした興味もあって、あれから彼の姿を見るたびに何故だかほっとした。
きっと緑川君も思ってるはず。
こんなくだらない毎日から抜け出したいって。
そうでしょ?
少し前の記憶に強く気持ちをひっぱられながら私は廊下にいる彼の姿を待っていた。
それにしてもちょっと変だな。
なんで私、声だけでわかったんだろう?
・・・・・・わかるもの、かな。
女子を追いかける姿なんて毎日だし。
あんなバカみたいな事するのは彼くらいだ。
「もーっ! ついてこないでよ!」
迷惑そうな声をだす女子。
黒く長い髪をひとつにして小さな身体を半分ひねって何かを追い払う仕草をしていた。
「澤田さんのケチー、教えてよ〜。今日は部活? それとも帰るの?」
入り口の端に少しだけ緑川君の身体が見える。
「今日は部活! だからもうついてこないで!」
ああ、隣のクラスの澤田さんか。
緑川君とは同じクラスだよね。
確か美術部だっけ。
なーんか、いつもうるさそうな4人グループでいたような。
あ〜あ、あんなに必死だし。
これだから、男の子に慣れてないうるさい女子は嫌いだな。
澤田彩は早口で何かを言うと廊下を走って消えた。
残された緑川君はまるで子犬のように小さくなっている。
「ご愁傷さま〜。ふられちゃったね〜」
私は頬杖をついたまま笑顔で彼に届くように言った。
「あ、神田さんか〜、見てたの? いやだな〜」
照れた顔で教室の中へ入ってくる。
「見てたんじゃなくて、見えたの」
「じゃ、これ噂になるかな? わくわくするな〜」
この男は・・・・・・。
「噂になる相手が違うんじゃないの? 澤田さんじゃダメじゃない」
私は知っている。
私と同じクラスの野村友花と先月から、つきあいはじめた事。
女子トイレは噂話やないしょ話の宝庫。
偶然、個室に入っているときに野村さんのグループ、いわゆる女子テニス部グループが話しているのを聞いていた。
「ふーん。だめか〜」
面白くなさそうに頭をかいて笑う。
「野村さんがいるでしょ」
「え〜・・・・・・、それってみんな知ってるのかな」
「え? そうだな〜、もう知ってるんじゃないのかな〜」
私は噂を流したのがずいぶん前であることを記憶をさかのぼって確認する。
「ふ〜ん・・・・・・みんな知ってるのか〜」
緑川君は振り返って廊下を見るとごまかすように微笑んだ。
「何が聞きたいのか知らないけど、そんな噂流したら、澤田さんが辛いだけでしょ。それともなに? もう野村さんに愛想をつかされて何か爆弾がほしいの?」
「や、やだな〜」
と緑川君は困ったように笑う。
私は少しだけ違和感を感じてつられて笑った。
「じゃあ、他人を巻き込むのはやめたほうがいいわ」
私みたいになっちゃうから。
思って苦笑する。
我ながら厳しい。
「だね。あ、部活の時間だ。じゃあ、またね神田さん」
「何しにきたんだか・・・・・・いってらっしゃい」
手を振りながら緑川君の背中をみつめた。
いってらっしゃい。
いいな、これ。
なんだろう、すごくいい。
私は頬杖をついたまま廊下を眺めた。
野村さんと緑川君か。
なんかイマイチなペアなんだよね。
まあ、どうでもいいか。
フッと笑うとため息がひとつ一緒にでた。
部活に行く人、帰る人、集まる人。
放課後の教室の騒がしさに眉間に皺をつくる。
はぁ〜っ、早くみんな帰らないかな〜。
あ〜、私も部活後の集まりなんか断ればよかったな。
少しだけ仲良しの男子グループの集まりに参加すると答えてしまったのを後悔した。
どうせ、彼らの狙いはクラスの女子の好きな人の噂だ。
面倒だな〜。
机に顔を突っ伏す。
「神田さーん! 神田さんいる?」
教室のどこかから呼ぶ声が聞こえる、だけど私は顔を上げなかった。
「いたっ神田さん、ねえねえ、帰るまえに日直の仕事していってくれる?」
頭の上から声が聞こえてきて顔を上げると、目の前に不機嫌な顔をしたクラスメイトが立っていた。
野村友香、緑川君の噂の彼女だ。
派手な顔に派手な髪型。
なにが楽しくて風紀委員ににらまれるような格好をしているのか私には理解できないが、たしかに男子ウケはいい。
私の情報からいけば、彼女は去年の夏に2回、告白されている。
でもそのどれも断っていた。
つまり、緑川が好きだったからという事なんだろうけど。
私は上目づかいに野村さんを見上げながら不機嫌に答えた。
「日誌なら書いたけど? あとは先生に届けるだけでしょ?」
「だから、それをやってって言ってるの」
「なんで?」
「なんでって、私ちょっと用が・・・・・・」
曖昧な言い方に私の目が光った。
何かある。
面白い事があるかもしれない、って。
「ふーん・・・・・・用ねえ」
「ねっ、お願いね」
頬を少しだけ赤くして嬉しそうに私の机に日誌を置くとぴょんぴょんとカエルのようにはねて教室からでていった。
「ふーん・・・・・・お願いねえ」
ニヤッと笑うと私はスッと立ち上がって後を追うように教室を出た。
放課後といっても部活をやっている生徒はまだ残っている時間で校舎は賑やかだった。
かなりの距離をおいて野村友花の背中を静かに追いかける。
気分は探偵だ。
絶対になにかある。
緑川君の反応といい野村さんの用事。
もしかして、本当に危機なのかな。
身体がウズウズとしてくるのは新しい刺激が待っているんじゃないかっていう期待。
スピード破局なんてことになったらそれはそれで面白いじゃない。
何故か大きな期待に喜んでいる自分がいた。
教務室とは別棟の校舎。
特別校舎の方へキョロキョロとあたりを見回しながら進む野村さんは尾行されてるなんて疑いもしない。
特別校舎の奥の階段までくると、彼女は一度廊下を振り返ってから階段の裏側へ。
あそこって・・・・・・物置になってるんじゃ・・・・・・。
私は警戒しながら階段の近くの壁へぴったりと張りついた。
「話って何?」
聞こえてきたのが緑川君の声だったから私の胸は高鳴った。
やっぱり!
「何よ、そんな言い方しなくてもいいじゃん。怒らないでよ」
「怒ってなんかいないよ」
緑川君の声はあきらかに不機嫌だ。
「どうして―――なの? ―――なんだ、よね」
野村さんの声が小さすぎてここからじゃよく聞こえない。
何よ、何?
本当に破局の危機だったわけ?
やだ、すっごいニュースだ。
ドキドキする胸を押さえながら聞き耳をたてる。
ボソボソと小声で二人が話しているのはわかるが内容までは聞き取れなかった。
んもーっ、じれったいな〜。
別れ話なんでしょ?
原因は何よ、何なのよ!
あーん、知りたい〜っ。
―――ガタッ!
大きな音が階段に響いた。
思わず私が音をだしたのかと足元を見る。
が、回りに音が出るようなものはなかった。
だとすると・・・・・・。
私は壁にはりついたまま、少しだけ顔を出す。
「っ!!!!」
一瞬、何が起こっているのか理解できなかった。
胸と頭と目が一瞬にして突かれたような痛みがはしる。
う、うそでしょ・・・・・・。
ここ、どこだと思ってるのよ・・・・・・。
信じられない、信じられない!
私の目にうつる二人は重なりあっている。
ここからだと野村さんの腕が緑川君の肩、首にまとわりつくように汚く見える。
何なの・・・・・・。
気持ち悪い。
両手を握り締めて動揺する自分を落ち着かせていく。
そして、ゆっくり一歩、一歩とうしろに下がる。
破局の危機なんかじゃなかったんだ。
私が見たのはただのバカップルの節度のない密会現場。
まさか校内でキスをするなんて・・・・・・。
そりゃあ、大ニュースだよ。
でも、これは言えないじゃない。
言えっこないでしょ!
かなりの距離をバックしたあと、くるっと身体を返して走りだした。
信じられない。
目に焼きつくように二人の重なる光景がフラッシュバックする。
そのたびに頭を振って追い払う。
見なかったことにしよう。
でないと、私・・・・・・。
―――ドンッ。
前も見ないで走っていたから、誰かにぶつかって跳ね飛ばされる。
バラバラバラッ。
何かがこぼれる音と一緒に私は無我夢中であやまった。
「ごっごめん、なさいっ!」
「こっちこそ・・・・・・あ、れ? 神田さん?」
足元に散らばる絵の具を拾いながら大きな瞳が見ていた。
「さ、澤田さん」
「大丈夫? なんか顔が・・・・・・」
絵の具道具を拾い終わって澤田彩は私に手を伸ばす。
「だ、大丈夫! ごめんね」
短くそう言うと私はまた逃げるように走り出した。
廊下を曲がるときにチラッと澤田さんがあの階段にむかって歩いていくのが見えた。
あっちは・・・・・・。
教えなくちゃ、と一瞬は思った。
でもすぐにバカらしくなって立ち止まる。
知らない。
もし、澤田さんが誰かに言ったとしてもそれは私じゃないんだから。
野村さんが悪い。
緑川君が悪い。
見てしまった澤田さんが悪いんだよ。
私じゃない。
心の中で何度もそうつぶやく。
教室までゆっくりと呼吸を整えるように、いつもの私を取り戻すように歩いた。
つまらない毎日。
くだらない毎日。
卒業まであと1年。
上手くやってみせるわ。
だからひとりがいい。
同じ気持ちの人なんていない。
私はひとりだから。
でも、それでいいの。
「何が欲しいの?」
緑川君の最初の言葉。
私が欲しいのは。
そう、私が欲しいもの。それは・・・・・・。
このくだらない毎日からの脱出。
自由。
バカらしいお友達ごっこも汚い恋人ごっこもたくさん。
私は私。
この胸が痛いのは錯覚だし。
ただ、ほんの少しだけ興味があっただけ。
くだらない毎日はもうたくさんよ。
彼は同じなんかじゃない。
私と同じなんかじゃなかった。
「それじゃあ、次は何をターゲットにしようかな〜」
冷えた廊下を歩きながらニヤリと笑った。
※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。
(あとがきパスな方用に見えないようにしています。
■あとがきという名の懺悔■
すごい思いつきで、あらすじも何もなく書きなぐりました。
どうしても今日書きたくて・・・・・・。
忘れちゃいそうだったので。
日付かわっちゃいましたけど、Upさせていただきました。
気づいてもらえたかな〜とこんな夜更かしも危険だし、ちょっと私こそ節度が必要ですよね。
さて次回♪ ☆55☆ いいわけ
もちろん今度はあの人のドロリ。
もういい加減にしてほしいというそこのあなた! 同感です!
でもきっと乗り越えた先には!! という光を目指して。
乗り越えるんだろうか・・・・・・。
こんな未熟な子たちに乗り越えられるんだろうか・・・・・・。




