現実逃避で現実逃避
「あ、そうだ。ポーション作ったので、使ってください」
インベントリから、ポーションを出して渡す。
出発してから、渡すものではないけど。忘れてた。戦闘になる前で良かった。
ポーションだけでなく、ヒスイ作のMPポーションも渡す。
「ありがとう、ポーション不足なのにいいの?」
「大丈夫です。自分でたくさん作りましたので」
「一緒に素材を集めて作ってもらったんだ!」
自慢げなハナミズキ。かわいい。
でも、作ったのは私だからね。威張ることじゃないんだよ?
「・・・おい、なんだよこれ」
「回復量少なかったですか?」
「違う。高品質で、かなり回復する。というか突っ込みたいのは、そこじゃねえ」
「じゃあ、なんですか?」
「MPポーションなんて初めて見たんだが?」
「・・・僕が見なかったことにしたやつー」
「ヒスイ―――私の従魔が作ってくれたんです」
ヒスイはすごいからね。
もしかしたら、まだプレイヤーの作れないものも作れるのかもしれない。
ちょっと気になる。
「従魔が!?ウソだろ」
「ウソじゃないですー。本当ですー」
「お前が作ったんだろ」
「ちーがーいーまーす。レベルが足りないので、そもそも作れません」
子どもみたいな会話をしながらも、警戒しながら進む。
にしても森の中って、光が差し込まないから結構暗いよね。
気がうっそうとして、不気味。昔のヨーロッパの人が、森を恐れていたっていう話を聞いたことがあるけど、今ならその気持ちが分かる。怖い。
「じゃあ、まじでこのスライムが作ったのかよ」
「そうですよ」
「!!」(そうそう!)
ガンテツさんが信じられないような目で、ヒスイを見てますが事実です。
ヴァイスさんはこの言い争いの間、ヒスイで遊んでいた。
その、びよーんて伸ばすのはやめてあげてください。痛覚がないとしても、見てるこっちがはらはらします。なんか千切れちゃいそう。二つに分かれたらどうしてくれるのか。
まあ、ヒスイは楽しそうなので見守るが。良かったね。
「それにしても、全然魔獣が出てこないね」
「ああ、覚悟してきたのに拍子抜けだな」
「街の方にもういるのか」
「それとも、聖霊のもとに集結しているのか」
どっちかな。
どっちもありそうなんだよね。
「どっちだと思う?」
「俺は、街のほうにいると思う」
「僕は、聖霊の所かな。なんか、魔獣に指揮してそうじゃない?」
「僕も街かなぁ。・・・お姉ちゃんは、どう思う?」
「私?・・・ん~、両方?」
「「「え?」」」
「少なくとも、聖霊様の所にはいると思うんだよね」
「その根拠は?」
「前方をご覧ください」
目の前に広がる光景は、一面の魔獣、魔獣、魔獣、魔獣・・・。
「げえ」
「見ないふりしてたのに・・・」
「わあ、すごい」
全員、遠い目をしてますが現実に戻ってきて。
というか、現実逃避の世界で現実逃避をしないでください。とんでもない状況なのは分かるからさぁ。
『『『グルァァアアアア』』』
さあ、やろうか。
読んでいただきありがとうございます。
これからものんびり更新で頑張りますので、温かく見守ってください。よろしくお願いします。
いよいよラストぉ




