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散り散りのメンバー・6

お待たせしました。


3/2 タイトルのナンバリング入れ忘れてました。

「…………さて、何か言い訳はあるか?」


 襲い掛かってきたモンスターを全て倒して戦闘が終わり、その熱が冷めない内にオレはこの戦いでとっても足を引っ張った(・・・・・・・)人物へと訊ねる。

 訊ねられた人物は、何でいきなりそんなことを言うのかという表情をし……更に、オレのことが気に喰わないらしくますます顔を歪ませた。

 そんな彼女(・・)を他のメンバーたちも非難するようにジッと見ていると……それに耐え切れなくなった彼女は声を荒げながら、オレに突っかかってきた。


「言い訳って何ですのよっ!? ワタクシはモンスターと戦っていただけですわよっ!!」

「ああ、アンタは戦っていたんだろうな……。けど、周りの阻害をしないような戦いかたをして欲しかったな!」


 怒鳴るようにオレは足を引っ張った人物、似非魔法少女ことアニマステラさんを睨む。

 そして、そんなオレは……オレたちは泥まみれとなってグチャグチャになっていた。……というか、パンツにも泥が染みこんでいてヌルヌルと泥が擦れて凄く嫌な感じがした。

 とりあえず、何があったかというとだ……。オレたちはアニマステラさんがやらかした結果、囲まれた形での戦いとなっていた。

 それでも自慢じゃないがオレの活躍でモンスターは一網打尽となっていたのだが……、最後の最後でこの人はやってくれたのだ。


「これで終わりだっ!」

「ああもう、鬱陶しいですわ! 泥の波よ、全てを押し飛ばしなさい! ――『マッドウェーブ』!」

「は?」


 オレを取り囲んでいた最後のモンスターを倒すために駆け出したと同時に機嫌が悪そうな感じの声が聞こえ、嫌な予感がし……声がした方向を向いた。

 ……そこでは、どうしてそうなったといわんばかりのモンスターに囲まれたアニマステラさんが杖を掲げていた。そして、彼女の地面が緩やかに波打つのが見えた。

 瞬間、ドバッと彼女を中心に泥の波が押し寄せてきた。

 その泥の波はモンスター……だけではなく、オレたちをも巻き込んでいった。

 そして運良く泥波の衝撃から一番最初に立ち直ることが出来たオレがモンスターを倒して行かなかったら全滅の危機もあり得たかも知れない状況だったりもした。

 だから、これは怒らないわけにはいかない。

 そしてアニマステラ(似非魔法少女)も怒られているのだから、反省ぐらいはして欲しい。……のだが、若干嫌な予感を感じ、オレは尋ねることにした。


「…………なあ、似非魔法少女? アンタはオレたちが何で怒っているのか分かっているのか?」

「はあ? 知るわけないじゃないですのっ! 何で、ワタクシが魔法スキルを使って貴女がたが怒りますのよっ!?」


 まるで自分が正しい、そんな印象を醸しながらオレを睨みつける似非魔法少女から視線を外し、サンフラワーさんと樹之命さんのほうを見る。

 彼女たちもあまりの自己中っぷりのに驚いているのか絶句していた。

 そんな彼女たちへとオレは助け舟を頼むことにする。


「……だめだこいつ、だれかなんとかしてくれ」

「ごめん、何とも出来ません……」

「悪い、これは……死んでも治らないタイプだわ」


 あえなく助け舟は撃沈されたようだった。

 だが、助け舟は予想もしないところからやって来た。


「お前、我らを殺すつもりなのか?」

「イ、イーゼ?」

「……は? 何ですの? ワタクシが貴女がたを殺すとでも言いますの?!」

「そうなのだ。お前のせいで、我らは殺されそうになったのだ」


 苛立っているのかイーゼは、淡々とした口調でアニマステラさんへとそう告げていく。

 対するアニマステラさんのほうは、聞き違いかとでも言うようにイーゼを見るのだが何処となく苛立っているように見える。

 というか、イーゼがずばずば物言いすぎぃ!


「それにさっきの泥沼は何なのだ? あんな物を使ったら、エルサが前に出られないのだ。それに、モンスターに囲まれたのだ。お前は周りの都合を考えずに行ったと言うことに気づいているのか?」

「なっ!? ワ、ワタクシに意見するとでも言いますのっ!?」

「するのだ。お前が余計なことをしたから、早く着くはずだった戦いも長引いてしまったのだ」

「~~~~~~っ!!」


 イーゼの言葉に、アニマステラさんの顔が真っ赤に染まっていくのが見えたが、オレはイーゼが正論なので口を挟むつもりはない。

 他の2人も同じ意見なのか、口を挟まないようだ。

 そう思っていると、向こうが我慢の限界に達したらしく……キンキンの金切り声を上げ始めた。


「そう、そうですのね……! ワタクシの魔法を恐れて、貴女たちはワタクシに嫉妬しているのですわねっ!」

「そんなわけがないのだ。泥臭くって早く水で流したいのに、お前をおだてるつもりなんて我にはないのだ」

「お、おだっ!? ~~~~っ!! ふ、ふん……! 貴方がたと一緒に行こうと思っていたワタクシが馬鹿でしたわ! ワタクシ、今からひとりで向かうことにしますので、追いかけて来ないでくださいね!」


 あ、これ、追いかけて来いよってフリだよな?

 そう思っていると、プリプリと怒りながらアニマステラさんがこの場を後にし、ズンズンとオレたちが向かう別の方向へと歩いていった。


「……追いかけるか?」

「居たら居たで邪魔になるから、放っておこう」

「と、とりあえず……今は冷やす期間が必要と思いますからぁ……」


 要するに追いかけるつもりはないらしい。

 オレもそうだけど……。


「とりあえず……、集落に向かうか水場を見つけて泥を洗い流すかしたほうが良いよな?」

「「「賛成(なのだ)(です)」」」


 満場一致で目的が決定した瞬間だった。



 ◆


 ――――― アニマステラ(田中よし子)サイド ―――――


 ああ、腹が立つ! 腹が立ちますわっ!!

 苛立ちながら、ワタクシはドスドスと地面を踏み鳴らしながら道を歩く。

 正直、今歩いている場所が何処に向かっているかなんて分からない。けれど、少しでもあいつらから遠ざかりたかったから移動をしていますの!


「ああもう! 何で、この高貴なるワタクシ、アニマステラが悪者にされて馬鹿者呼ばわりされなければならないんですのっ!?」


 アバターに設定した声がかなりの甲高さを上げているけれど、ワタクシの怒りは収まりませんわ!

 ワタクシはワタクシが邪魔だったから魔法を唱えただけですのに! 他の人たちが迷惑? だったら、魔法を使ったのを見たのですから向こうが避ければ良いだけじゃないですのっ!

 ああもうっ、仕事で溜まったストレスを解消するためにこのエルミリサに来ているのに、ストレスが溜まる一方ってなんです!?


「苛立っておるようじゃのう、田中よし子さん」

「誰ですのっ!? というか、その名で呼ばないでくださらない! 今のワタクシは魔法少女アニマステラ! アニマステラこそ魂の名前なんですから!!」


 声がした方向を苛立ちながら見る。

 するとそこには、会社のムカつく上司そっくりなでぶっ腹をした金ぴか装備に身を包んだ男性が立っていた。

 あら、この人って……。


「貴方、ジ・ゴールドですわよね? 挨拶のときに本名を名乗って、馬鹿みたいな男と思っていたけれど……敵に寝返る本当の馬鹿だった人」

「傍から見たら馬鹿じゃろうが、生きるために仲間を裏切るなんて当たり前の行為じゃろう? 御主はどうなんだ。田中よし子よ」

「だから、ワタクシをその名前で呼ばな――ちょっと待ちなさい、貴方……なんでワタクシの偽りの名前を知っていますのよ?」

「知っておるぞ、田中よし子。年齢、34歳。地方にある金平財閥の子会社で事務職を務める。勤務態度は……」


 つらつらとジ・ゴールドが喋る中で、ワタクシは間違っていない言葉にざぁっと顔を白くさせる。

 これは、うそを言っているわけじゃ無さそうだと、ワタクシは理解する。


「分かった。わかりましたわ! 貴方はうそを言っていない、だけどこう言うことを聞きたくないのでもう黙りなさい!」

「信用してもらえて何より。他の参加者の経歴も事前に調べているから御主だけが白くなる必要はないぞ」

「この最低な錬金術師が……」


 ギリリと歯を噛み締めながらワタクシは目の前の金ぴかタヌキを睨みつける。

 けれど、そのお陰か苛立ちが少しだけ収まり、考える余裕が出てきたことには感謝しましょう。


「それで、貴方はワタクシの前に現れて、何をしようと言いますの? 寝返ったのだから、ワタクシを倒そうというおつもり?」

「そんなことはせん。しいて言うならば……勧誘じゃ」

「勧誘? 要するに、エルフを襲って邪魔をする?」


 ワタクシの問いかけに、金タヌキはニンマリと笑いながら頷く。

 その笑みは何というか不気味だった。けれど、魅力的な提案だった。

 正直、ワタクシはあいつらに復讐……いえ、ワタクシのほうが強いと言うことを思い知らせてやらなければ気がすまない。

 というよりも、馬鹿にしてきたあいつらをこの手で跪かせたい。


「手を貸したら、憎らしいあいつらを叩き潰すことが出来ますの?」

「出来るぞ。ワシの錬金術と御主の泥魔法を使えばのう……」

「そう……。だったら、ワタクシは貴方がたに協力しますわ。後のことなんて知ったことではないし、今はワタクシを邪魔扱いしたあいつらにワタクシの強さを見せたい、ただそれだけですもの」

「そうかそうか……。だったら、あいつらが向かうイースの集落を奴らの墓場としてやろうではないか」


 金タヌキと握手を交わしながら、ワタクシは笑みを浮かべる。

 頭の中に浮かぶ物。それはワタクシを馬鹿にしたクソ生意気なエルサと……無愛想すぎるイーゼ、そしてヤンキーのサンフラワーと影の薄いお付が地面に這い蹲る姿だった。


 《――告知。アニマステラさんが寝返りました。》


 《――邪魔呼ばわりした貴方がたに、ワタクシの強さを見せてあげますわ》

……うん、どうしてこうなった?

まあ、とりあえず次回は中ボス戦っぽいものが開始されます(多分)

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アルファポリスでも不定期ですが連載を始めました。良かったら読んでみてください。
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