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閑話:邪神たちは踊る~集結編~

お待たせしました。

 通称『垢BAN監獄』こと『エルミリサ違反者アバター専用牢獄』がプレイヤーたちには背景として見える岩山の上へと、小さな翼をパタパタとさせながら、ひとりの悪魔が降り立ちます。

 その姿は、悪戯小悪魔という表現が似合う、小柄で出るところはまったく出ていない……ロリ体け――いえ、ひんそ――げふんげふん、いわゆる活発と呼ばれる表現が似合いそうな少女の姿をしていました。


「エルミリサ界のアイドル、小悪魔ガロンちゃんとうちゃ~~っく♪ って、もしかしなくても、ボクが一番?」


 そんな頭の悪そうな自称アイドル(笑)は尻尾の色と同じ赤錆色の短めな髪を揺らしながらビシッとポーズを決めます。ちなみに小悪魔ガロンの服装は昔のオタクたちが好きそうなスク水っぽいレオタード+燕尾服ですね。

 ……この世界に送られた猫耳少女が楽しそうに着ていたアレです。忘れたい過去となってると思いますがログは残っていますので。

 っと、そんな小悪魔ガロンの声に反応するように、周囲に響くような高らかな笑い声が聞こえます。


『フハハハハハハハハハハハハッ!! 貴様が一番だと? 笑わせるわっ! ワガハイは徹夜組として昨日の夜から待っておったぞ!!』


 そう言いながら、小悪魔ガロンのすぐ近くの地面に空間の歪みが発生し……その中から何というか平成に入ったばかりに流行したようなパンクなファッションに身を包んだ以下にも聖書とかに出てきている悪魔ですといった風貌の人物が姿を現しました。

 パンクな服の所々がピカピカ光っているのはLED電球でしょうか?

 その人物を小悪魔ガロンがチラリと見ると、わざとらしく……いえ、あざとらしく笑みを浮かべると手を上げた。


「あ、サタンさま、おっはようございま~~すっ♪」

「うむ、おはよう。幼女よ、今日も良いイカ腹だな」

「え~? 何言ってるのかボクわかんないな~?」


 ……小悪魔ガロンは笑顔を崩さずサタン……、ぶっちゃけると地球で有名なあのサタンへと返事を返します。

 ちなみに白髭の赤い衣装に身を包んだ人物のことではありませんよ? 地獄で有名なアレですからね。

 そして、この世界に遊びにきて地球と関係がないから最悪なことを口走ってるんでしょうね。

 とか思っていると、ケタケタと笑う声がまたも何処かから聞こえてきました。


「この声……、ロキさま? 何処ですか~? ――ぎゃーーっ!?」


 キョロキョロとしながら笑い声の主を探す小悪魔ガロンですが、声の主は彼女をからかっているとでも言うように突如彼女の足元からニョキっと飛び出してきました。

 その際、燕尾服の裾が捲り上げられ可愛らしい赤錆色の尻尾とピッチリスーツ越しの小振りでキュートなお尻が晒されました。

 ……だけどそのときの悲鳴はどうかと思いますよ?


「アハハハハハハハ! ギャー! だって、ギャー! 女の子なんだから、もっと「キャー!!」って言ってくれないとさー!!」

「ロ、ロキさま~……? あなたは何をしちゃってるのかなぁ? アイドルのお尻は安くないんだよ~? あと、サタンさま! 撮影代払ってください!!」

「うぬっ!? な、なんのことだ? ワガハイはただ至高の芸術を極めようとしているだけである!」

「こ、この方々は~……」


 ……どうにも扱い切れなさそうな神さまたちみたいですね。ただし、邪神とかそんな感じのレベルの人たちですが。

 そう思っていると、上空から金製の棺が落下してくるのが見えます。

 おーい、気づいて気づいてー? ……あ、気づかないみたい。

 そう思ってたら、サタンたちを追いかけていた小悪魔ガロンの目の前に金製の棺は落下してきました。

 あと少し近かったらハンバーグ用の肉になってましたね? ……あ、腰抜かしてます。


「あ、あわわわわわわわ…………」

「むむっ! 聖水、聖水の気配がするのである!!」

「え、小悪魔ちゃん……まさか…………」

「ちっ、ちがっ! ボ、ボクは漏らしてなんかいないよぉ!!」


 興奮しながら顔を赤らめて鼻息を荒くするサタンと、小悪魔ガロンから距離を取り始めるロキ。

 そんな2人へと小悪魔ガロンは反論していますが……こちらは詳細がわかっていますが、彼女への脅しのために周りには知らせません。……ええ、脅し用のネタが増えて嬉しいですよ。

 とか思っていると落ちてきた金製の棺の蓋が開き、小悪魔ガロンが潰れました。

 アレは普通に重いですね。


「ふぎゃーーーーっ!!」


 何ともまぁ酷い呻き声ですね。そう思っていると、棺の中からミイラが1体顔を覗かせてきましたが……胴体は普通の人間なのに、頭から先は蛇のように伸びているという奇怪な存在です。

 名前は……アペペだったかアシベだったかそんな名前でしたよね?


「フシュルルルル……、待たせたか?」

「ようこそ、エジプトの悪ことアピプペ(発音が聞き取れない)よ!」

「やっほー! 大丈夫大丈夫、まだ時間内だからさー! あと、漏らした小悪魔が潰れちゃってるよ?」

「だ、だからボクは漏らしてないってばぁ!!」


 ……とりあえず、聞き取れなかったので一番有名な名前であるアポピスにしておきましょうか。

 そのアポピスが軽く挨拶をすると、サタンとロキが返事を返します。

 あと、お漏らし小悪魔ガロンも自らの行動を否定したいのか、金製の重い棺の蓋を刎ね飛ばして立ち上がります。


「むむっ! 何だかボクの悪口が言われた予感……!!」

「気のせいではないか?」

「もしくは、運営側の監視とか? ま、監視だとしても何にも出来ないだろうしねー! アハハッ!!」


 ケタケタとロキは笑いますが、事実わたくしは力は非力ですし……時間かけて自分が異世界に戻るのも嫌ですよ。

 これを見届けて交代したら、合コンなんですから合コン!

 派遣社員になってるわたくしの安らぎを手に入れるために頑張りたいんですよ……! っと、失礼しました。

 わたくしが変にトリップしかけていると、アポピスが入っていた棺の影がぐにょりと動き始めます。


「フシュルル……、相乗りしていたのか?」

「……わるい? ねむいから、こっそりいどうするときに忍び込ませてもらったわ……あふ」


 アポピスが声をかけると、棺の中の影は人の形をとり……最終的には夜闇を溶かしたような真っ黒色の足まで伸ばした長い髪とに漆黒の瞳を眠たげに閉ざしつつ気だるげな顔つきで、スタイルが抜群という……所謂ダウナー系美女が紫色のスケスケネグリジェと紫色のセクシーな下着を身に纏った姿で現れました。

 ちなみにその姿を見たとき、サタンは迷わず写真を撮り始め、ロキは口笛を吹いていました。

 小悪魔ガロン? ああ、彼女なら「負けた……!」と言って悔しそうにしながら膝を抱えています。

 負けた以前に惨敗だとわたくしは思いますよ? まあ、需要ある人にはあるんじゃないですか? お漏らしロリってジャンルは。


「ああ、まだじかんじゃないのね? じゃあ、ねむるわ……おやすみ」

「いやいや、寝るでない、チェルノボーグよ。もうすぐ時間なのだから」

「……そうなの? だったら、きりのいいところまでは影に動いてもらうわ……」


 そう言うと、ダウナー美女ことチェルノボーグは弾力性のある影をクッションにして自身のおっぱい枕をぐにょりと潰して寝転がりながら、闇から切り離した影を自分の周囲に展開しました。

 ……いいですよね、グータラ生活。わたくしも出来ればやりたいですよ? ……本当、まともな休みが欲しいです。

 っと、主神様から返事が来ましたね……。――って、しばらく様子見ですかっ!? しかも、彼らが何をするかはわからないけれど、終わるまで交代するなっ!?

 ちょ! 合コン! わたくし合コン行きたいんですけどーー!! 開始時間までもうすぐなんですけどーーっ!!

 折角イケメン神揃いの合コンをセッティングしてもらったというのにお預けってなんですか!?

 申請! 交代要請の申請をーーっ!! って、またも主神様から?

 …………おわった。合コン欠席の連絡を入れておいたってなんですか…………おわった。

 うぅ、癒しが……イケメンオーラを見てきゅんきゅんする癒しがぁ……。というかこの職場、オモイカネさんやスクナビコナさんといったお爺ちゃんに囲まれてるから、癒しが欲しいんですよぉ……。

 ……はぁ、今度本当に有給申請しましょう。ってことで、監視再開です。

 そう思っていると、彼らを呼び出したであろう大物がようやく姿を現すようです。

 彼らが居る空間が震え始め、空間に亀裂が走り……最終的にガラスのように空間が砕け散ると、その中からひとりの女性が姿を現しました。

 現れた女性を見ながらサタンは愉快そうに笑い、ロキは楽しそうに手を叩き、チェルノボーグは欠伸をし、アポピスはチロチロと細長い舌を出し入れしつつ女性を観察していた。

 小悪魔ガロン? 彼女は目の前の女性に一辺倒なので、頭を地面に擦るようにしながら平伏していますよ。

 そんな彼らへと、これから起こす騒動の主催者である女性は優雅に頭を下げました。


「ふふっ、お待たせいたしました皆様。調子はいかがですか?」

「主催者の登場であるな! 時間はピッタリなので問題は無いのである」

「邪神様、ようこそおいでくださいましたぁぁ~~!!」

「やっほー、シャマラー。誘ってくれてありがとねー」

「zzzZZZZ…………あら? もうきたの?」

「シュルルル……、こちらの準備は完了しているが……大丈夫か?」


 そんな女性……いえ、この世界で主神様と対を成す邪神であるシャマラ(SML)へと集まった邪神たちは返事を返します。

 というか、予想通り邪神シャマラが関わっていますか……主神様に連絡しておきましょう。


「さて、皆様の調子も良いみたいですし……、今日集まってもらった催しを開始しましょうか」

「うむ賛成である。とっととやるのに限るのである!」

「フシュルルル……、血が滾るな」

「あははー、外に混沌を撒き散らすってワクワクするよね!」

「だるいわ……zzzZZZZ」

「はい、邪神様! ボク精一杯頑張るよっ!!」


 そんな感じに彼らは皆やる気を見せています。

 ちなみに彼らは皆、ジッと牢獄に視線を向けていますね……あっ。

 もう彼らが何をするのか察しました。察してしまいましたよ……。

 そう思っていると、彼らはスタスタと牢獄に向けて移動を開始します。……1名は影のクッションを浮かせて浮遊しながら移動していますがね。

 ……どうやら彼らは……、牢獄を襲撃するようですね。


 え、ところでわたくしは誰だって?

 ああ、申し遅れました。わたくしは、エルミリサから地球へと送られて活動をしている神の一柱でライブラと申します。

 主に行っている作業は、エルミリサ内のプレイヤーたちのステータス更新を行っています。

 まあ、ステータスアップとか、称号付与とか、スキル獲得やレベルアップを行う……UIことユーザーインターフェイスですね。

 名前を覚えておいて欲しいと思いますが……すぐに忘れると思いますので、UIさんとでも覚えてくれていてもいいですからね。


 え? わたくしの話はどうでも良い? とりあえず、襲撃編に移るから話を区切る?

 そ、そんな! わたくしにも話ぐらいさせてくださいよ! 色んなことがあって大変なんだって知らせたいんですよっ!!

 待ってくださいってば! だから、わたくしのはなしを――――プツッ

次回、襲撃編。

まあ、普通にバトル書きますよ?


なお邪神たちはイメージと違っていたりするかも知れませんが、ご了承ください。

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