表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しの義弟を守りたくて悪役ルートを回避したら、愛が重すぎる未来ができあがった  作者: ChaCha


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/89

夜の中庭で、やっと言えた「好き」

夜の鐘が鳴り終わる頃、

私はひとり中庭へ向かっていた。


ノエラに

「今日です、今日しかないです!」

とものすごい勢いで背中を押されたせいでもあるけれど――


(私も、もう逃げたくないから)


魔術灯の光が、石畳を淡く照らしている。

吐く息は白く、指先は少し冷たい。


白薔薇の植え込みの近く。

アレックスはそこにいた。


銀髪が夜の光を受け、

微かに光っている。


「アレク!」


呼びかけると、

彼はゆっくりこちらを振り向いた。


「……アメリア」


いつも通りの低い声。

でも、その奥に何か固いものが混じっている気がした。


「さっきは、ごめんね。

 図書棟で変なところ聞かせちゃって」


「……変じゃなかった」


アレックスは短く言う。


「俺のせいだ。

 アメリアを不安にさせていた」


胸がぎゅっとなる。


「アレクのせいじゃないよ。

 私が勝手に不安になってただけ」


そう言いながら、

私はアレックスの前まで歩み寄った。


「でも、ちゃんと言いたくて。

 ノエラにも“誤解させたままはダメです”って怒られたしね」


少しだけ冗談めかしてみせると、

アレックスの口元がかすかに揺れた。


「ノエラ……余計なことを」


「余計じゃないよ」


私は、胸の前で手を握りしめた。


(言うんだ。ちゃんと言う)


「アレク」


名前を呼ぶと、

碧の瞳がまっすぐこちらを捉える。


心臓が痛いくらいに鳴っていた。


「私ね、アレクに距離を取られてる気がして……

 嫌われたのかなって、本当に怖かった」


アレックスの目が揺れた。


「嫌ってなんか――」


「分かってる。今は。

 でも、分からないままだと怖くて、

 どうしていいか分からなくて」


だから、決めた。


「だから、先に言うね」


うまく笑えている自信はなかった。


それでも、

私は言葉を口にした。


「アレクのことが、好きだよ」


静かな夜に、

自分の声がすこし大きく響く。


友達としてでも、義弟としてでもなく。

一人の男の子として。

一緒に未来を歩きたいと思える人として。


「ずっと一緒にいたいって思ってる。

 アレクが私を大事にしてくれたみたいに、

 私もアレクを大事にしたい」


アレックスは、しばらく何も言わなかった。


驚いているのか、

拒絶されるのか、

何も分からないまま、

私は息を止める。


やがて――

彼は、ひどくかすれた声で言った。


「……どうして、今なんだ」


「え?」


思わず聞き返す。


アレックスの表情は、

悲鳴を飲み込んだ人のようだった。


「もっと早く言ってくれていたら、

 俺はきっと、

 “守る”ことだけ考えていられたのに」


「アレク……?」


「今さらそんなことを言われたら、

 もう戻れないだろ」


何に対しての“戻れない”なのか、

そのときの私には、まだ分からなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ