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推しの義弟を守りたくて悪役ルートを回避したら、愛が重すぎる未来ができあがった  作者: ChaCha


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ノエラに打ち明けた「怖い」の正体

「ノエラ、今いい?」


昼休み、図書棟の隅。

本の山の向こうで、ノエラはすぐに顔を上げた。


「アメリア様。はい! 恋の相談ですね!」


「いきなり決めつけないで……でもまぁ、合ってる」


観念して言うと、

ノエラは机をばんっと両手で押さえ、前のめりになった。


「ついに来ましたか! アレックス様案件!!」


「声、声……」


周囲を見渡して、誰もいないのを確認してから、

私は椅子に腰を下ろした。


「……最近、アレクが変なの」


「変なのはだいぶ前からですけど?」


「ノエラ」


「すみません。続けてください」


ため息をひとつついてから、

胸の前で手をぎゅっと組む。


「冬休みのあたりから……

 なんだか、距離を取られてる気がして」


ノエラの表情が、ふっと真剣になる。


「馬車の中でもね、

 揺れたときに支えようとしてくれたのは分かるんだけど、

 どこかぎこちなくて……

 今日だって、目を合わせてくれないことが多くて」


言葉を並べながら、

自分でもようやく気づいた。


(ああ、私……ずっと怖かったんだ)


「嫌われたのかなって。

 ウザがられてるのかなって。

 アレクの負担になってるのかなって」


ノエラは首を横に振る。


「それは絶対ないです」


「断言早いね?」


「アレックス様、分かりやすいですもん。

 アメリア様絡みのときだけ、感情だだ漏れです」


私は、思わず笑いそうになって――

それすら、胸の奥でつかえてうまく出てこなかった。


「アレクの気持ちが分からないのが、一番怖いの。

 私にとっては……特別な人だから」


ノエラの瞳がやわらかく細められる。


「アレックス様のこと、好きなんですね?」


「…………大好きだよ」


声にしてしまえば、

もう誤魔化せない。


ノエラはちいさく頷いた。


「じゃあ、ちゃんと言ってあげてください。

 “嫌われたと思って不安になってる”って。

 “好きだ”って」


「……言えるかな」


「言えます。アメリア様なら」


そのとき、

図書棟の入口の方で小さな音がした。


誰かが扉を開ける音。

足音。

……気配。


「でね、ノエラ。

 アレクから決定的な言葉が欲しいだけなのに、

 最近は逆に距離を取られてる気がして……

 私、嫌われたのかなって――」


そこまで言ったところで、

ノエラの視線がピタリと入口に向いた。


つられて振り向く。


「……アレク?」


入口に、アレックスが立っていた。

本を返しに来たのだろう、手には数冊の本。


でも、その碧眼は明らかに

こちらを見たまま止まっていた。


(今の……聞かれた?)


胸がぎゅっと縮む。


何か言おうとして、

先にアレックスの方が口を開いた。


「…………悪かった」


低い声だった。


「え?」


「距離を取ったつもりは……ない」


そう言い残し、

アレックスは本を置くこともなく踵を返した。


扉が閉まる音が、妙に大きく響く。


私は椅子から立ち上がりかけて――

ノエラにそっと袖を掴まれた。


「今、追いかけたら……

 たぶん余計にこじれます」


「……でも」


「夜まで、少しだけ待ちましょう。

 その代わり、ちゃんと話してくださいね。

 “好きだ”って」


胸の中で何かがぐらぐら揺れる。


それでも、私は頷いた。


「……うん。

 今日の夜、ちゃんと言う」




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