賑やかな教室で、ひとり不安になる
「アメリア様、おかえりなさい!」
「冬休みは楽しかったですか?」
教室に入ると、
いつものクラスメイトたちが笑顔で迎えてくれた。
「ただいま。みんなも元気そうでよかった」
自然に笑える。
学園のこの空気は、やっぱり好きだ。
クラスメイトの男子が少し緊張した様子で近づいてきた。
「あの、アメリア様……冬休み中も、ちゃんと休めましたか?」
「うん。のんびりできたよ。ありがとう、ステイル」
にこっと笑いかけると、
赤くなって視線をそらす。
(……あれ?照れてる?)
前からうすうす感じていたけれど、
この人はたぶん、私に好意を持っている。
そこでふと、
教室の入口の方に視線を向けた。
アレックスが立っていた。
目が合った――と思った瞬間、
彼はすっと視線を逸らし、
何も言わずに自分の席へと向かう。
「アレク?」
呼びかけても、返事はない。
(あれ……?)
胸の奥に、小さなひび割れが走る感覚がした。
会話を切り上げて、
私はアレックスの隣の席へと歩いた。
「アレク、おかえり」
「…………ああ」
短い返事。
その横顔は、どこか疲れているようにも見える。
「具合、悪い? 冬の空気、冷たいし……」
「違う」
即答だった。
「なら、どうしたの?」
問い詰めるような意図はなかった。
ただ心配で聞いただけ。
でもアレックスは、一拍置いてから小さく呟いた。
「アメリアは……誰にでも優しいから」
「え?」
何が言いたいのか分からなくて、私は瞬きをした。
彼はそれ以上何も言わず、
ただ教科書を取り出す。
(……やっぱり、変だ)
いつもなら、
“アメリアが元気ならそれでいい”って
笑ってくれるはずなのに。
心の奥の不安が、
すこしずつ濃くなっていくのを感じながら、
私はその日一日を過ごした。




