冬朝の食卓と、気づかない始まり
翌朝。
カーテンの隙間から差し込む冬の光は柔らかく、
寮とは違う静けさが胸をゆるめてくれる。
(あぁ……やっぱりお家の朝って、落ち着く。)
身支度を整えて階下に降りると、
暖炉の火がほのかに薪を弾く音を立てていた。
ダイニングの扉を開けると、
父カインと母マリアがすでに席についている。
「おはよう、アメリア。」
「よく眠れたかしら?」
母の柔らかな声に、
アメリアは自然と笑顔になる。
「うん、ぐっすり眠れたよ。
やっぱり自分のベッドが一番だね。」
すると、父が楽しそうに頷いた。
「そうだろうとも。
アレックスもすぐ来るだろう。
その間に温かいスープでも飲んでいきなさい。」
執事ロイドが銀のポットを傾けると、
香草の良い香りがふわりと広がる。
冬野菜のクリームスープは、
帰省するたびに出てくる“家の味”だ。
ひと口飲んだだけで、
身体がほぐれていく。
「うん、美味しい……!」
アメリアがほっと息をこぼしたところで、
扉が開いた。
「おはようございます。」
アレックスが静かに現れる。
銀髪が朝日に透け、
昨日より大人びて見える気がした。
(アレク……朝からイケメン……)
言葉にはしないが、
朝から眩しい。
アレックスが席につくと、
母がにこやかに言う。
「二人とも、今日はゆっくり過ごしましょうね。
お庭も綺麗に雪が積もっているわよ。」
「うん!アレクと散歩するって約束したんだ。」
素直に言うと、
アレックスはスプーンを止めて一瞬だけ固まった。
(あ……可愛い……)
その微妙な反応が妙に嬉しい。
そのあいだ、
執事ロイドと数名の侍女たちが
そっとダイニングの外へ控えていた。
「お嬢様がご帰宅されると、やはり家が明るくなりますね。」
「アレックス様も表情が柔らかくなりました。」
小さなささやき声が聞こえて、
胸がくすぐったくなる。
(ふふ……みんな優しいなぁ。)
温かい朝食、家族の笑顔、
アレックスの穏やかな横顔。
(今日はアレクと庭に行って、
一緒に紅茶も飲みたいし……
おしゃべりもいっぱいしたいな。)
平和で、やわらかくて、幸せを感じた




