表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しの義弟を守りたくて悪役ルートを回避したら、愛が重すぎる未来ができあがった  作者: ChaCha


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/89

胸に残った“嫌だ”が静かに広がる

寮に戻ったあとも、

アレックスの声が耳から離れなかった。


──「嫌だ。」


そのたったひと言が、

どうしてこんなに胸に残るんだろう。


ベッドに腰を下ろし、

制服のリボンをほどきながら深呼吸してみる。


(落ち着こう……落ち着きたいのに……)


胸の中心だけ、ぽうっと熱い。


アメリアは机の上に置いたノートを開いてみたが、

文字がまるで模様に見えてしまう。


(……勉強会の誘いに、アレクは……

 “負担をかけたくない”って言ってた。

 それはたぶん本当。

 でも……それだけじゃない顔だったよね……)


あの時のアレックスの表情。

静かで、でもどこか強い。


怒っていたわけではない。

ただ──

自分を誰かに渡したくないような、

そんな色が一瞬混じっていた。


(アレク……どう思ってたんだろう)


胸がまた跳ねる。


アメリアはベッドに倒れ込んで、

枕をぎゅっと抱いた。


(勉強会くらい……好きにしたらいいって言われると思ってたのに……

 “嫌だ”って……なんで?)


自分の心がざわめく理由も分からない。


アレックスに反対されて悲しいわけでも、

腹が立つわけでもない。


むしろ──

嬉しかった。


(だめだめ、そんなふうに思うの変だよ……!)


顔が熱くなる。


アレックスの声の響きが、

甘い魔法みたいに何度も胸を叩いてくる。


──今日も、隣にいろ。


(……そんなの……)


ずるい。


だってそんなふうに言われたら、

胸が勝手に高鳴る。


アメリアは枕に頬を埋め、

小さな声で名前をこぼした。


「……アレク……」


その響きが静かな部屋に溶けていく。


でも、その名前を呼ぶだけで

胸がじんわり温かくなる。


(アレク……私……)



アレックスのひと言だけで、

アメリアの世界は大きく揺れてしまう。


そしてその揺れは

静かな夜の中でゆっくり大きくなっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ