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推しの義弟を守りたくて悪役ルートを回避したら、愛が重すぎる未来ができあがった  作者: ChaCha


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52/89

朝の廊下に差す光と、静かに寄り添う気配

翌朝の寮は、

昨日の騒ぎが嘘のように静かだった。


アメリアは身支度を整えながら、

胸の奥に残る昨日の温度を思い返す。


(……アレク……

 今日も…普段通りで…会えるよね)


自分で自分に問いかけた言葉に、頬が少し熱くなる。


廊下に出ると、

朝の光が淡く差し込み、

影が長く伸びて揺れていた。


そして──


「……アメリア、おはよう。」


いつもの位置に、アレックスがいた。


銀髪が光に触れ、

静かにきらめいている。


アメリアの胸がふわっと温かくなる。


「おはよう、アレク。」


今日は目をそらさないように、

まっすぐ言ってみた。


アレックスは一瞬だけ目を丸くして、

ほんの小さく息を吸った。


「……よかった。

 今日は……いつも通りだな。」


(いつも通り──

 そう思ってくれてるんだ……)


アメリアは胸がほどけるような気がした。


歩き出すと、

アレックスはいつもより半歩だけ近い。


気づいていないふりをして、

アメリアも少しだけ歩幅を合わせる。


階段へ向かう途中、

アメリアの靴紐がゆるんでいるのに気づいたアレックスが言った。


「アメリア、紐が……」


「あ、ほんとだ……ごめん、ちょっと──」


しゃがもうとした瞬間、

アレックスがそっと腕を伸ばして止めた。


「……俺がやる。」


アメリアは驚いて瞬きをする。


「え……いいよ、自分でできるよ?」


「……いい。

 こういうのは……俺がやりたい。」


それ以外の理由は言わない。

けれど、手の動きは丁寧で、

結び目はきゅっと綺麗に締められた。


アメリアの胸がまた跳ねる。


(アレク……

 なんで……こんなに優しいんだろう……)


立ち上がったアレックスは、

気まずそうに視線を外した。


「……昨日、危ないことが続いたから。

 少し……気をつけてほしいだけだ。」


アメリアは思わず微笑んだ。


「うん。ありがとう、アレク。」


その笑顔に、

アレックスの肩が少しだけ緩むのが分かった。


アメリアは隣を歩くアレックスの横顔を

静かに見つめた。


昨日までの寂しさが嘘のように、

胸がじんわり温かい。


(アレク……

 私、やっぱり……)


言葉にならない想いが

胸の奥で静かに灯り続けた。


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