表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しの義弟を守りたくて悪役ルートを回避したら、愛が重すぎる未来ができあがった  作者: ChaCha


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/89

眠れない夜に触れたぬくもり

その日の午後。

アメリアは廊下で侍女のレナから、アレックスが屋敷に馴染めているか心配されていた。


「アレックス様、まだ夜は少し眠れないご様子でした。」


「……眠れない?」


「ええ。音に敏感なのか、何度か目を覚ましていらっしゃるようでしたわ。」


アメリアは胸がきゅっとした。


(そりゃそうだよね……急に環境が変わったんだもん……)


アメリアは自分の部屋に戻り、

窓の外に広がる庭を見下ろした。


午後の光が雪を照らし、

その奥で白薔薇の低い影がほんの少し揺れた。


(私にできること、何かないかな……)


そう考えていると、ノックの音。


扉を開けるとアレックスが立っていた。

手を胸の前でぎゅっと握りしめている。


「……アメリア、ここにいてもいい?」


アメリアは顔をほころばせた。


「もちろん!」


二人は床に座り、絨毯の上に積み木を広げる。

暖炉の火が赤く揺れ、ふたりの影を壁に映した。


しばらく遊んでいると、アレックスがぽつりと言う。


「……ここだと、落ち着く。」


「どうして?」


「アメリアがいるから……かな。」


胸の奥で温かいものがふわっと膨らんだ。


「アレックス、眠れなかったんでしょ?」


アレックスは驚いたように少し目を丸くした。


「……ど、どうして……?」


「顔がちょっと眠そうだったから。」


アメリアはそう誤魔化した。

本当は侍女から聞いたなんて言えない。


アレックスは俯きながらつぶやく。


「……知らない部屋だと、ちょっと怖い。」


「うん。私もそうだよ。

 でも、慣れたらすぐ平気になるよ。

 その間は、私が隣にいるから。」


「……ほんとに?」


「うん!」


アレックスは胸の前で握っていた手を、少しゆるめた。

その指が、積み木の角をそっと触れる。


「……ありがとう。」


たった一言が、

言葉以上にまっすぐで、温かかった。


外では風が吹き、

白薔薇の影が小さく震えた。

あくまでさり気なく、

ふたりの距離が縮まるのに寄り添うように。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ