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推しの義弟を守りたくて悪役ルートを回避したら、愛が重すぎる未来ができあがった  作者: ChaCha


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あと一歩の距離と、触れられそうな指先

午後の授業が終わり、

教室は緩んだ空気に包まれていた。


アメリアは教科書を胸に抱えたまま、

立ち上がるタイミングを少し迷っていた。


(アレク……

 今日ずっと距離遠かったな……

 本当に……嫌われた?

 違うよね?)


胸の奥のもやもやが、

授業中よりも重たくなっている。


その時。


「アメリア。」


背後から静かな声が落ちた。


振り返るとアレックスがいた。

表情はいつも通りなのに、

どこか緊張しているようにも見える。


アメリアも思わず姿勢を正した。


「な、なに……?」


アレックスは迷うように視線をさまよわせ、

ちら、とアメリアの手元を見た。


「……教室、出るなら……

 一緒に行く。」


それだけ。


ただそれだけの言葉なのに、

アメリアの胸にふわっと灯りがともる。


(よかった……

 話しかけてきてくれた……!)


アメリアは思わず笑った。


「うん!行こっ」


その笑顔に、

アレックスの肩の力がほんの少し抜けた。


二人は並んで廊下へ出る。

夕方の光が廊下を黄金色に染めていた。


歩き出してすぐ、

アメリアの教科書が滑って腕の中で崩れかけた。


「わっ──」


とっさに手を伸ばしたのはアレックスだった。


アメリアの手に触れる寸前。

けれど、その瞬間でぴたりと止まる。


触れないようにして

でも確かに支える絶妙な距離。


アメリアは驚きながら笑った。


「ありがとう、アレク!」


「……別に。」


口調はいつも通りなのに、

耳が赤くなっている。


(アレク……優しい……

 さっきの距離のこと、

 もう気にしなくていいのかな……?)


アメリアがそっと隣を見上げると、

アレックスも同じタイミングで目を向けてきた。


ぱちり、と目が合う。


途端にアメリアの胸が跳ねた。


(……っ!

 なんで、こんなに……)


アレックスも息を飲んだように

わずかに目を見開く。


誰もいない夕方の廊下に

二人の心臓の音だけが並んで歩いている気がした。


(アメリア……

 泣きそうな顔、してた……

 やっぱり……俺のせいか)


そう思うほど、

アレックスはアメリアに近づきたくなる。


けれど、もう一歩が踏み出せない。


アメリアはというと、


(アレク……近い……

 でも、遠くない……

 さっきまでと違う……)


胸のざわめきが

心地よいものに変わっていくのを感じていた。


ノエラは後ろから、

そっと距離を保って歩いていた。


(……いい感じに距離縮まってますね……

 よしよし……隊長もアメリア様も……

 がんばれ……)


夕陽の光が二人の影を

静かに寄り添わせていく。


すれ違いの終わりまで、あと少し。


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