沈んだ横顔に、胸がざわつく
アレックス視点
休み時間。
教室に広がるざわめきの中で、
アレックスは自分のノートを閉じた。
(……さっきのアメリア……
なんか元気なかった……)
授業中、
アメリアが話しかけてくれたのに
素っ気なく返してしまった。
「……あとで教える。」
今思い返しても、
めちゃくちゃ冷たい言い方だった。
(なにやってんだ俺……
本当に何やってんだ……)
湖で抱きしめたときの感触が
胸から離れなくて、
どう接したらいいか分からないだけなのに……
アメリアに伝わるはずがない。
視線を向けると、
アメリアは机に頬杖をつき、
どこか寂しそうに窓を見ていた。
その様子に、
アレックスの胸がぎゅっと締め付けられる。
(……アメリア……
そんな顔……するな……)
アメリアが沈んでいる理由は
自分の態度のせいかもしれない。
そう思った瞬間、
胸がざわざわと落ち着かなくなる。
行かなきゃ。
話しかけたい。
笑わせたい。
でも。
ぴたりと動けなくなった。
(……でも……
もし、俺が近づいたら……
アメリア、嫌じゃないか……?)
昨日の自分の行動を思い出す。
抱きしめた腕。
覆い隠したローブ。
風魔法で必死に乾かした手。
(俺……
アメリアに変に思われてないよな……?)
不安が喉に詰まった。
その間にも、
アメリアは窓の外を見たまま
微かにため息をつく。
(……やめてくれ……
そんな顔……見たくない……)
胸の奥で“ざわつく気持ち”が
じわじわと熱を増していく。
でも、言葉にできない。
理由も自分で分かっていない。
(アメリア……頼むから……
俺を嫌いにならないでくれ……)
握り締めた指が白くなる。
その姿を、
ノエラは斜め後ろからこっそり観察していた。
(……なるほど……
アメリア様:しょんぼり
アレックス様:しょんぼり
──すれ違い地獄ですね。)
もはや任務どころか恋愛観察になっている。
アレックスは深呼吸をし、
決意を固めた。
(……今日、ちゃんと話す。
このまま距離が空くのはイヤだ。)
アメリアのところへ
また半歩近づく。
だがその瞬間、
授業開始の鐘が鳴った。
アメリアが小さく驚いて振り返り、
アレックスと目が合う。
その目は、
ほんの少し寂しそうで、
でもどこか嬉しそうでもあった。
アレックスの胸がまた跳ねる。
(……アメリア……!
絶対に……俺から離れさせない……)
そんな言葉が
心の奥で小さく芽を出した。




